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20 呼び出し

 呼び出された。


 放課後、指定の場所に来るように言われた。

 相手は誰だかわかっている。

 ミラだ。

 ついにミラは私を人気のない所に呼び出したのだ。

 

 これってあれだよね。 

 いわゆる呼び出しだよね。

 

『なんであんたはちょっと楽しそうなのよ』

「なんか面白くない?」


 呼び出しを生でくらうとは思わなかったしね。

 話に聞いたことあるからちょっと楽しみ。


「えーと、ここかな?」


 うきうきしながら指定された人気のない校舎裏に向かうとそこにはミラとその取り巻き達にがいた。


「来ましたわね」


 腕を組んでデンと構えていたミラが私の方に一歩踏み出す。


「いいこと!! あなたよりもわたくしの方がレオナルド様に相応しいのよ!! 身の程をわきまえなさい!!」


 ミラはいつも通りに私を威嚇する。


「……」

「……」


 しかし、会話は続かない。

 ナニコレ?


「何か言ったらどうですの!?」

「いや、だって。後ろの方達も私に何か言うのかなって思って」

「どうして彼女達が貴女に言うの? これは、わたくしと貴女の一対一の女としての勝負ですわよ!!」


 意味がわからない。

 いつ、勝負を始めたのだろうか?

 仮にレオナルドの取り合いという意味なら、今すぐに敗北したいものだ。

 ていうか取り合う気などさらさらない。

 どうぞ勝手に持って行ってください。

 そもそもそちらのものだし。


 なのに、彼女にはレオナルドの事をどうとも思っていないとそれとなく何度も言っているんだけど聞き入れてもらえないんだよね。

 私にとって毎回都合の悪いように解釈するし。

 そして、もう一つ。


「えと、だったらどうして彼女達はここに?」

「え? それは……その……こんな所に一人でいるのは怖いから」


 と、少し顔を赤めながら消え入りそうな声でそういった。


『なにこの子かわいい!』


 うん、メーティスの気持ちはわかる

 後ろの取り巻き達の何人かはミラを慈愛の目で見ているしね。


 こうして私に度々突っかかったり今回みたいに呼び出したりしているけど、実はこの学府での彼女の評価ってかなり高いんだよね。

 教室が離れているから、こういう時以外に私と関わりがあんまりないけど、学問も非常に優秀らしいし、少しきつめの目をしているけど、まごう事なき美少女だし。

 たぶん、善良で甘ちゃんな箱入り娘なんだろうね。

 そして今人気の理由がわかった気がする。

 それに、取り巻きを連れているにもかかわらず、本当に一対一で話が出来ているし。

 彼女のカリスマ性はすごいね。


「と、とにかく!! 身の程をわきまえるのです!! 次はこの程度ではすみませんわよ」


 そう言ってミラは取り巻き達に引き連れて去っていった。

 本当に何しに来たのだろうというレベルでミラは何もせずに帰っていった。

 本人は威圧したつもりなんだろうけど。


「なんだったんだろうね」

『さあ?』


 今まで面倒な子だと思っていたけど、今思えばそんなに嫌いじゃなかったな。

 うーん、ふつうに友達になりたいな。



 ー▽ー


 そして、その翌日。

 教室は朝から騒ついていた。


「あれ、どうしたの?」

「スピカちゃん……。これ……」


 女子生徒の一人が痛ましい顔をしながら私の机を指差す。

 そこには私の教科書が破り捨てられていたのだ。


「これは……、もったいないね。とりあえず先生の所に持っていくよ」


 あーあ、教科書も高いのに。

 なんでこんな事を。

 いやだいたいわかるけど。


 こんなんで私がショックを受けると思ったのかな?

 普通の子ならショックを受けるかもだけど。

 教科書は先生に事情を説明すれば支給されるし、そもそも既に内容は全て頭に入っている。

 だからこそ、教科書を持ち帰ったりせずに学府に置いていたのだよね。

 他にも借りてきた本で鞄が圧迫されていて、教科書を入れるスペースがなかったりしたからだけど。。

 どちらにせよ、半分くらい教科書を置きっぱなしであった自分が悪いしなあ。


 それよりも気になるのは犯人だ。

 私の教科書破るという事は私に害を与えようとした事。

 つまり私に悪意を持って私を害そうとしているってこと。


 どうしてくれようかな。

 まあ、今回はこの程度なのでそこまで固執するつもりはないけど、犯人が誰なのかを考察する。


『普通に考えればミラだよね?』


 教科書が破られたのは学府の授業が終わってから。

 そして、教室に誰もいなくなる時間帯かつ、学府に居残れる時間帯。

 昨日ミラが私を呼び出したのはちょうどその時間帯だ。


 つまり、自身が私を呼び出して、その間に取り巻きに命令して私の教科書を破りさせたと考えるのが自然。

 回りくどいけど一応つじつまが合うし、嫉妬に狂ったが故の行動と考える事ができる。

 

 ただまあ。


『それはないわね』

『だよね』


 メーティスは即座に否定するし私もそう思う。


 ミラの性格からいって、この様な姑息なマネをするとは思えないんだよね。

 昨日のように正々堂々といったミラには。

 仮にミラが私を本気で排除しようと思っているのなら、私を簡単に退学させる事ができるはず。

 それほどの権力を持っているのだから。


『どちらにせよ、これが続くのなら全力で叩き潰させてもらうよ』

『なんであんたはそんなに好戦的なの』

『師匠も言ってたじゃない。敵には容赦するなって』

『まあそうだけど。ほどほどにね』


 犯人は手を出した相手が間違っていた。

 私の儚げな外見を見て勘違いしたのかもしれない。


 残念ながら誰かに守られないと生きていけないような女ではないよ私は。

 

 これ以上私に手を出さないならば許してあげよう。

 そうじゃないなら容赦しないよ。



 ー▽ー



「うそ、どうしてあんなに平然としているの?」


 女はスピカが破られた教科書を見ても特にショックを受けた様子がない事に驚く。


「なんで、レオ様はあんな女に」


 女はスピカを憎む。

 自身の想い人の心を奪ったスピカを憎む。


「待っててねレオ様。邪魔者はみんな始末してあげるから。私、レオ様の為に覚悟を決めたから」


 女はレオナルドとの未来を思い、それを邪魔する者を排除しようと決意した。


「うふ、うふふふふふ」


 邪魔者が誰であれ、みんな。


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