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19 こんな所にいてられるか、私は狩りに出かけるぞ

「やっすみーやっすみー」

『今日は上機嫌ね』

「だって今日は休みだもん」

 

 そう、今日は学府が休みなのだ。

 さらに次の日も休みなのだ。

 2日も休みなのだ。

 嬉しくないはずがない。

 最近、教室にまでやってくるあのウザキモい男と顔を会わせなくて済むのだから。

 ぶっちゃけ、会わないというだけで嬉しくなる。

 だってウザいしキモいもん。


「現金残り少なくなってきたし、今日は狩りに行こっか。この辺りで強い魔物っていたっけ?」


 るんるん気分で準備をする。


「最近運動不足だからね。今日はいっぱい戦おっと」


 運動というにはかなり物騒とは思うけど、私とって最近本当に運動不足なんだよね。

 最近、剣を振れていないし。


 学府には選択制だが剣の授業がある。

 他の流派の剣を習うのもいいかなと思ったけど、授業を見学して正直落胆した。

 なんかレベルが低いんだよね。


 この学府は基本的に有能な者しか入れない。

 よって剣を習う者も才能がある者が多い。

 将来は騎士とかそういうの。

 

 でも、それでは足りないんだよね。

 私のレベルからかけ離れてしまっていた。

 残念ながら私が望むような相手はいなかった。

 先生を含めて。

 たまーに強そうな人見かけないでもないけど、うーんって感じ。


「師匠も様々な人と戦えって言っていたけど、アレじゃあただの弱い者イジメになっちゃうもんね」

『そうね。まあ、魔物相手でもいい授業になるわ』

「だね。よし、準備完了」


 さっそく出かけようと立ち上がると、ノックの音が聞こえた。


「スピカさん」


 寮母さんの声だ。


「その、レイフォールドさんがスピカさんを迎えに来ているのですが」

 

 はい?

 ナニソレキモイ。


 ダッシュで窓を開け、飛び降りる。

 そのまま裏門から走り去り、街の外門を素早く抜けて、人のいないところまで全力疾走し、人竜化して飛び去った。



 ー▽ー



「はあ〜。サイアク。ギルドによって依頼を見ようと思っていたのに」


 王都からかなり離れた森に降り立つ。


「何の前触れもなく迎えにくるとか。しかも、朝早くに。何なの意味わからない気持ち悪い」

『スピカ……』


 メーティスが憐れんでいるのが分かる。

 もし、メーティスに実体があれば心から涙を流していたと思う。

 だってアレはさすがにキモい。


「グオォォン!!」


 と、その時、私の目の前にトラの魔物が現れた。


「ははは。ちょうどいいところに来てくれたね」


 本当にナイスタイミング。


「私のストレス発散に付き合ってもらうよ」



 ー▽ー


 トラの魔物をはじめとして、私は様々な魔物と戦った。

 運良く、この辺りは魔物が豊富であり、そして強かった。

 剣技のみで戦う分には闘気を使えない私の攻撃力は高くない。

 簡単に剣が刺さらない魔物が多く、いい感じに苦戦できるのだ。


 しかも、それは修行になる上にストレス発散にもなる。

 一瞬で殺してしまうよりは、何度も斬る方が良いし。

 獲物を良好な状態で仕留める事はしなかった。 

 だってこれはストレス発散だから。

 まあ、そんな状態で仕留められないっていうのもあるけど。

 私の剣技って魔物倒すにはあまり向いていないし。


「はあ。明日はゆっくり本を読もうと思っていたけど、このまま狩りを続けようか」


 もし、寮に戻り、明日もレオナルドに来られたら嫌だし。

 このまま2日続けて狩りを続行しようと。


 夜になり、暗くなっても狩りを続ける。

 辺りに回復魔法を飛ばしまくってそれを光源として戦う。

 無駄なこと極まりないけど私の魔力が尽きる事はない。

 むしろ魔力を扱うトレーニングになる。


 また、眠る事もしなかった。

 1日くらいどうって事はないのもあるけど、睡魔も、眠らない事で生じる異常も回復する事ができるしね。

 理論上は常に戦い続ける事はできるのだ。

 あくまでも理論上だし精神的な疲れは回復できないし、いつもはちゃんと寝ている。

 でも、今はストレスの発散と今まで戦えなかった分もあるしたまにはいいかな。



 ー▽ー


「はあ、はあ、はあ、はあ。つ、疲れたぁ。でも満足」


 ドサリと後ろから寝っ転がる。

 やりきってやった。

 私は満足。


『まあ、これだけ戦えばね。いったい何体の魔物を倒したのよ』

「あはは、覚えていない」


 鬱憤を晴らすかのように、サーチ&デストロイを続けていたしね。

 ここまで戦ったのも師匠に修行の過程で魔物の巣窟に放り込まれた時以来かな。

 あの時は悲鳴を上げながら戦ったものだね。

 もう二度とやりたくないって思っていたけど、まさか自分から似たような事をしだすとは思ってもいなかった。


『そろそろ帰りましょう』

「はあ。そうだね。帰りたくないなぁ」


 明日またあのウザい奴の顔を見るかと思うと辟易する。

 しかし、帰らない訳にもいかないので仕方なく立ち上がり、人竜化して飛び去った。

 随所で大量の魔物の素材を手に入れているし、当分お金には困らないかな。


 ー▽ー


「スピカちゃん。機嫌が悪いね」


 そして、休み明け。

 友人の女子生徒が言う通り私の機嫌は悪かった。


「だって、休みが終わっちゃったんだよ。永遠に休みだったらいいにの」


 自ら学府に編入しておいて何を言っているんだと思うけど、アレの存在がなー。

 いや、一応覚悟はしていたよ。

 こういうこともあるだろうって。


 そもそもは学府に通う事自体は嫌いじゃない。

 今までできなかった同年代の友達もそれなりにできたし、授業も自分の知識の確認になる。

 それに、黒い宝玉の捜索という重要な目的があるのだ。

 でも、アレがつきまとってくると思うと途端に学府が嫌なモノになる。

 この学府に潜入する上である程度は覚悟していたけど、それでも限度はある。

 とっとと黒い宝玉を見つけて竜国にでも行きたいなー。


「聞いたよ。レイフォールド様がスピカの所に来てたんでしょ?」


 あーこの子の表情も変わったなー。

 最初はレオナルドに憧れていたなそういえば。


 自分は中堅の商家の子。

 むこうは大貴族の長男。

 身分違いの恋には憧れるものらしい。


 でも、この教室にまでやって来て私を疲弊させている様子を見ると、憧れなんて消えてしまったみたい。

 今や、私が逃げる事を応援する始末である。


「うん。偶々私は寮にいなかったから会わなかったけど」


 実際は瞬時に逃げたんだけど、対面的にはそういう事にしている。

 身分社会は面倒なのだ。


「おや、僕の話かい?」


 そして、面倒な男がやって来た。


「スピカ、どうして昨日も一昨日もいなかったのだい? せっかく迎えに行ったのに。君に会えなくて僕は本当に寂しかったよ」


 そう言ってレオナルドは私の手を取る。

 キモいわー。 

 ふつう女の子の手を勝手にとる?

 最近、手袋付けるようになったけど、念のために後で浄化の魔法かけておこう。


 それにしても、まさかこんな時間帯に来るとは思わなかった。

 レオナルドが教室までくるのは時間の長いお昼休みだったのに。

 だから、私はこうして教室で友人と話していた。

 なのに、授業まで残り時間が短いにもかかわらずレオナルドはこうしてきてしまった。

 マジキモいわー。


「ああ、スピカ。僕は不安で仕方がなかった。僕は君が寮からいなくなったと聞いて、君が雪のように儚く消えてしまったのではないかと心配したよ」


 つらつらくどくど。

 自身がどれほど私を心配したのか、どれだけ私が大切なのかをありったけの想いを乗せて囁く。

 私の目は死んでいた思う。

 本当に朝からしんどい。

 早く帰らないかなぁ。

 


 ーーゾクリ


「ッッ!?」


 今の気配!!


「どうしたんだいスピカ。急に立ち上がって。危ないよ?」


 何か言っているけど今は無視で。


『メーティス、今感じたよね?』

『うん。近くにいるはず』


 学府祭の時より感じなかった不浄の気配を今、確かに感じたのだ。


「レイフォールド様、申し訳ございません。急用ができたので失礼します」


 その場から離れて教室から出る。

 先ほど感じたのは廊下の方からだった。

 まだ近くにいるはず!!


「クソッ、いない!!」

「あら、スピカさんごきげんよう」


 と、そこでミラとその取り巻き達に偶然出会ってしまった。

 ああもう!!


「……ごきげんよう」

「こんな所で走り回るなんてはしたないですわよ」

「はい。ご忠告感謝します」

「次から気をつけなさいな。では」


 それだけ言うとミラ達は去っていった。


 ……え、それだけ?


 てっきりミラに先ほどレオナルドが私の所に来た事や、昨日や一昨日に寮にまで来た事でお話されるのかと思ったけど。

 実際は、仕方がないとはいえ廊下を走っていたスピカを注意しただけだし。

 ある意味模範的な行動だよね。


「はあ。とりあえず落ち着こうか」


 だからこそ冷静になる事ができた。


『そうね。やっぱり黒い宝玉を持っているのはこの学府の生徒ね』

「うん。先生とかの職員もいなかったしそれで間違いないと思う」

『生徒達の大半には接触したはずだけど、それでも感じ取れなかったのだから、普段、黒い宝玉の気配は感じ取れないのだと思ったほうがいいわね』


 むやみやたらと探し回るのはやっぱりだめか。

 だったらどうする? 

 考えなきゃ。


「だったら、あの気配を感じ取れるときは、持ち主が黒い宝玉を使った時、或いは使おうとした時?」

『使おうした時と考えるのが自然ね。師匠の時の事を考えると、もし黒い宝玉を使っていたらもっと気配を感じても良いはずよ』

「なるほど。だとしたら、ちょっとまずいかもね。少なくとも黒い宝玉を使う意思が多少なりともあるのだから。不浄の化け物がいつ出てきても良いようにしておかないと」


 この日は念のために、不浄の化け物が何処に出現しても駆けつけられるように別の場所で待機しておいた。


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