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18 悪役令嬢系少女ミラ

「ふぅー。見つからないね」

『そうね』


 学府に編入してから数週間。

 黒い宝玉の気配を探し周ったが未だに見つかっていない。

 どうにかもっと効率が良く確実に見つけ出せる方法はないかなーて何度も考えるが、そう都合良く思いつくわけないし。

 はあ。

 本でも読もう。


 学府の生徒にはある特典がある。

 それは、隣にある図書館を無料で利用でき、さらに制限はあるものの本を借りる事もできるのだ。

 これには大いに喜んだ。

 最近では、黒い宝玉探しと並行して休み時間に人の少ない中庭にある椅子に座って本を読んでいるのだ。


 しかし、そんな私の時間を邪魔する者が現れた。


「ああ、スピカ、こんな所にいたんだね。探したよ」


 ちっ。

 面倒な人が表れた。


「……」


 本を読みながら相手をするのは失礼なので、仕方なく、本当に仕方なく本を閉じで相手を見上げる。

 彼の名前はレオナルド・レイフォールド。

 どこかの公爵家の長男で、学府一のイケメンらしい。

 そんな事知ったこっちゃないし、どうでもいい。

 でも、現学府の生徒の中で一番身分が高いし、失礼過ぎる態度は取れない。

 本当に面倒な相手。


 奴との出会いは、学府に編入してからではなく、その前。

 学府祭の時だ。

 私が初めて学府祭に行った日。

 不浄の気配をしたあの時。

 あの時ぶつかった男がこの人だったみたい。

 いや、あの時急いでいたので誰かにぶつかったな程度にしか覚えていないんだけどね。


 なんかこの人は違ったみたい。

 さらされた白い髪、透き通るような肌。

 儚げなその容貌を見たこの人は一瞬にして私に心を奪われたらしい。

 そして、この学府で再会したのである。


 いや、しらないよ。

 何それ意味わからない。

 そんなこと私に言われても大いに困る。

 どこぞの物語みたいにフラグ回収してしまったけど、そんなのは私はいらない。

 だって本当に邪魔でウザいもん。


「スピカ、どうか僕の話を聞いてくれるかい?」


 などと言いながら勝手に私の隣に座り、勝手に話し始める。

 だいたいが私に囁く甘い言葉だけど、微塵もときめかない。

 私はこいつに微塵も興味のないし、むしろ嫌いなほうだ。

 なのにこんな話を聞かせ続けるのはある種の拷問だと思う。

 たぶん、私の目は死んでいると思う。


『メーティスぅ。ウザいよぅ。気持ち悪いよぉ。助けて』

『……無理ね』

『だよねぇ』


 心の中でメーティスに泣き言を言ってもどうにもならない。

 だってメーティスも辟易しているし。

 本人じゃないだけマシでとは思うけど、やはりウザいし気持ち悪いと思っているはず。

 思っていて欲しい。

 一心同体だしね。


 長々と一人語りを終えたレオナルドは満足したのかその場から去っていった。

 それまで私は一言も喋っていない。


「はぁ。次から別の場所で読もうかな」


 そうして、読書を再開しようとした時、


「スピカ・スターティア!!」


 また別の存在が私の元にやって来た。

 今日は来客が多いな。


「わたくしの婚約者であるレオナルド様につきまとうなんてどういうつもりなの!!」


 その存在は後方に取り巻きを引き連れて目尻を上げて私を威嚇する。


 彼女の名前はミラ・エルカイトス

 こちらのお家は候爵家で、先ほど本人が言ったとおりレオナルドの婚約者である。

 彼女の事は初めて見た時から覚えている。


 なんだこのおっぱいは!?


 それが私がミラを初めて見た時の感想だった。

 私と同い年であるはずなんだけどな。

 胸部の戦闘力は私とは比較にならない。

 何を食べたらこの歳でこんなに育つんだろう。

 いや、私は年相応だし。

 まだまだ伸びるし。


 閑話休題。

 当のミラはレオナルドが私にご執心という噂を聞きつけ、憤慨して私の所に来たってところかな。

 まあ適当にあしらおうか。


 いや、ちょっと待って。

 この子この前よりも大きくなっていない? 


「どういうつもりも何もあの人が勝手にこちらに来るのですが」

「なっ!?」


 あ、しまった。

 胸部装甲を見ていたらつい本音が。


「ふっ……ふふふふ。そうですか。いいでしょう!! 必ずやレオナルド様を取り返してみせますわ。どんな手を使ってでも!!」


 ミラはそう宣言すると、行きますわよと見事な金の巻き毛を払いながら言って去っていった。

 まあ、面倒なことにならなくてもよかったかな。

 それにしても、


「……後ろの子達何しに来たんだろう?」

『あんた、気にするところズレているわね』


 だって、後ろの子たち何も言わなかったもん。


「あ、鐘の音。私の時間が」


 くそう。

 私の時間が奴に邪魔された。 

 もう最悪だ。 

 まったくあいつは何なの。

 



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