⭕ 聖女の交信 3
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「 ──いやぁ~~~、遅くなったぁ~~~!!
まさか渋滞にハマるなんてなぁ…… 」
店員:ソツバ
「 藺羨様、聖美鵺様が御待ちですよ 」
藺羨駛夏
「 おっ、そう?
待ち合わせしてたのに大遅刻だな~~~ 」
オカルト雑誌の月刊UAでオカルトライターをしている藺羨駛夏は頭や両肩に積もった雪を片手で簡単にパッパッと払うと客席へ向かって歩いた。
待ち人が座っている席だ。
藺羨駛夏
「 空夢!
済まないな、待たせた 」
聖美鵺空夢
「 藺羨さん!
会えて嬉しいです(////)
えぇと……1人ですか? 」
藺羨駛夏
「 後からな。
未だ学生だから学校が終わってから来るよ 」
聖美鵺空夢
「 そうなんですか?
学生さん……なんですか 」
藺羨駛夏
「 あぁ。
オレの連載記事に毎回ネタを提供してくれる協力者なんだ。
静ちゃんは可愛いけど、呉々も惚れるなよ。
おっかない番犬が傍に居るからさ 」
聖美鵺空夢
「 番犬……ですか? 」
藺羨駛夏
「 ──おっ、新人か?
とうとうバイトを雇ったのか?
お嬢ちゃん、ホットココアを頼むわ 」
霄囹
「 誰が “ お嬢ちゃん ” だっ!!
ボクは “ お嬢ちゃん ” じゃないぞ! 」
藺羨駛夏
「 何だよ、ユタク君の腰巾着か。
今日は一緒に居ないんだな 」
霄囹
「 誰が “ 腰巾着 ” だ!
言い方に気を付けろよ、人間!! 」
店員:ソツバ
「 霄囹──、御客様に対して何ですか、その言葉遣いは。
失礼ですよ。
御客様が御入店されたら何と言うんでしたか? 」
霄囹
「 ………………うぐっ…………いらっしゃいませ……。
…………御注文は……ホットココアを1つで宜しいですか…… 」
藺羨駛夏
「 あははっ、上手い上手い! 」
霄囹
「 張り倒すぞ、貴様ぁ~~~ 」
店員:ソツバ
「 霄囹、言葉遣い 」
霄囹
「 …………御注文を承りました…………くっ…… 」
注文を受けた霄囹は屈辱的な表情をしながら客席を離れて行く。
藺羨駛夏
「 こりゃ、静ちゃんが喜ぶなぁ。
空夢、見物だぞ! 」
聖美鵺空夢
「 そう…なんですか? 」
藺羨駛夏
「 空夢、静ちゃんに依頼する内容の確認をしようか 」
聖美鵺空夢
「 はい。
“ ある人を探してほしい ” です。
探し人は多分…もう……。
行方知れずとなってから2年が経とうとしてますから…… 」
藺羨駛夏
「 確か…聖礼輝会の信者さんの1人だったよな? 」
聖美鵺空夢
「 はい……。
彼女の御両親からは何度も『 娘を見付けてほしい 』と頼まれるのですが、僕には専門外な事ですから…… 」
藺羨駛夏
「 空夢の能力は物探しや人探しには向いてないからなぁ。
それを盲信してる信者に話しても通じないか… 」
聖美鵺空夢
「 そうですね……。
……もう生きていない事は分かっているんです。
だけど……誰が犯人なのか……、何処に居るのかは分からなくて…… 」
藺羨駛夏
「 確かに死んでる探し人なら静ちゃんが適任だ。
ただ、犯人は分からないぞ。
静ちゃんは残留思霊体を見る事は出来ても、話せないからな。
探し人の場所が判明しても場所に依っては直ぐに対処が出来ない 」
聖美鵺空夢
「 はい……。
それでも──、彼女を探している御両親の為にも場所だけは特定してあげたいんです。
どんな形であれ、御両親と再会させてあげたいです… 」
藺羨駛夏
「 空夢、本当に記事にしても良いのか?
幾らマイナーなオカルト雑誌だと言ってもな【 死体は帰りたがっている 】は結構ネットユーザーに注目されてる記事だぞ。
大々的に聖礼輝会の名前を出すと拙いんじゃないのか? 」
聖美鵺空夢
「 そろそろ終わりにしたいんです…。
両親も親戚も怒ると思いますけどね…。
いい加減、普通の生活を送りたいんですよ…。
此処で住み込みで働かせていただけるんですよね? 」
藺羨駛夏
「 まぁな……。
此処は特殊な喫茶店だから、空夢の家族には見付かり難いと思うぞ?
何せ会員制だから客は滅多に来ないしな。
マスターにはOKを貰ってるし 」
聖美鵺空夢
「 えぇと…オーナーの許可は要らないんですか? 」
藺羨駛夏
「 アリコさんか?
大丈夫だよ。
アリコさんはオーナー特権を利用してタダ飯を食いに来てるだけだから。
気にするな 」
聖美鵺空夢
「 そうなんですか? 」
藺羨駛夏
「 必要な荷物は持って来てるんだろ? 」
聖美鵺空夢
「 はい。
必要な荷物は宅配便で届いてました 」
藺羨駛夏
「 それなら、今日から住み込めるってわけだな? 」
聖美鵺空夢
「 はい。
そうなります 」
藺羨駛夏
「 ──というわけなんで、ソツバさん空夢の事も頼みますね! 」
店員:ソツバ
「 マスターから何も聞いてませんけどね……全く…。
空夢さんには明日から働いてもらいますから、宜しくお願いしますね 」
聖美鵺空夢
「 はい!
此方こそ明日から宜しくお願いします! 」
霄囹
「 ホットココアだぞ!
有り難がって飲めよ! 」
藺羨駛夏
「 言葉遣いに気を付けろって。
一応、御客様なんだからさぁ 」
霄囹
「 煩いっ!!
おい、お前は明日から此処で働くのか?
ボクが直々にしごいてやるから覚悟しておけ! 」
藺羨駛夏
「 おいおい、一致ょ前に先輩風を吹かすなよ。
空夢は見掛けに依らず、お前より器用だぞ 」
聖美鵺空夢
「 見掛けに依らずって…………酷いなぁ…。
明日から宜しくお願いしますね、霄囹先輩 」
霄囹
「 う、うむ……。
ボクを先輩として敬うなら仲良くしてやってもいいぞ! 」
藺羨駛夏
「 照れてるのか?
可愛いぞ!
くははははっ(////)」
霄囹
「 笑うんじゃないっ!!
こんな格好は今日だけなんだからな!! 」
和服エプロン姿の少年は顔を赤らめながら、客席から離れて行った。
明日から彼が僕の1日早い先輩か…。
明日から此処で僕の新しい人生が始まるんだ。
退屈しなさそうだな。