⭕ 聖女の交信 1
──*──*──*── 聖礼輝会・支部
信者:A
「 ──じゃあ、8日に德寛駅に10時集合ね! 」
信者:B
「 は~い 」
信者:C
「 気合い入れて、リーフレット配布しましょうね! 」
信者:B
「 我等が聖美鵺様の為にね! 」
信者:C
「 皇拉さん、貴女も参加するのよ! 」
信者:皇拉
「 えっ……私もですか?
その日は家族行事があるので参加出来ませんけど… 」
信者:C
「 皇拉さん!
貴女、何を言ってるの!
聖美鵺様と家族、どっちが大事なの!! 」
信者:皇拉
「 家族に決まってますけど? 」
信者:C
「 まぁ~~~!
なんて罰当たりな事を言うのかしら!!
聖美鵺様の方が大事に決まってるでしょ!
聖美鵺様を優先しなさい! 」
信者:皇拉
「 聖美鵺様は他人なんで、家族より優先する事はないです 」
信者:B
「 一寸、皇拉さん…。
言い過ぎよ? 」
信者:皇拉
「 何処がですか?
他人より家族を優先するのは世間では当たり前じゃないですか?
聖美鵺様に御執心されるのは、そっちの勝手ですけど……聖美鵺様LOVEを押し付けないでください。
リーフレット配布でも布教活動でも参加したい方達だけでされたらいいじゃないですか。
時代が時代ですし、強制するのは良くないと思います 」
信者:A
「 皇拉さん。
貴女、入団して何年も経つのに相変わらず生意気な事を言うのね。
いい加減、周りに合わせる事を学んだらどうなの? 」
信者:皇拉
「 先約を優先するのは世間の常識じゃないですか。
皆さんは違うかも知れませんけど、私は先約を優先する派なので8日のリーフレット配布には参加しません 」
信者:B
「 皇拉さん、貴女には信心が足りないわ!
聖美鵺様への忠誠心もね! 」
信者:皇拉
「 忠誠心って……。
私は別に聖美鵺様に忠誠を誓う為に通ってるわけじゃないです。
導き親に対する御義理で来てるだけです。
それに凄いのは聖美鵺様じゃなくて、聖美鵺様が見せられる不思議な力の方じゃないですか?
聖美鵺様だって『 自分は崇められたり、拝まれたり、崇拝されるような立場じゃない。エネルギーの根源たる〈 S・G 〉に手を合わせてください 』って、何時も言われているじゃないですか 」
信者:A
「 あのねぇ、聖美鵺様は謙虚な方なのよ!
〈 S・G 〉と交信の出来る聖美鵺様は凄い方なのよ!! 」
信者:皇拉
「 兎に角……8日のリーフレット配布には行けませんから!
お先に失礼します! 」
未だ何かを言いたそうな先輩信者達へ向かって、ガバッと頭を下げた私は急いで玄関へ走った。
履いていたスリッパを脱いで返却したら、下駄箱に置いてある靴を出して素早く履く。
急いで玄関から支部を出た私は、自転車置き場に停めてあるチャリの元へ走った。
家族行事があるなんて、実は嘘だったりする。
折角の貴重な祝日をリーフレット配布なんかで潰すわけないじゃん!
その日は久し振りに小学校時代に仲の良かった友達と会う約束をしてるんだから!
ふふふ~~~♥️
実は6年間ずっと片想いしていた初恋の人だったりす・る・のぉ~~~~♥️
デートだよ、デートぉ♥️
気合い入れて、お洒落しないとね!
チャリの鍵を解除して、サドルに跨がろうとした時に声を掛けられた。
「 誰よ… 」って思ったら、まさかの聖美鵺様だった!
噂をすれば何とやらね。
聖美鵺
「 皇拉さん、少し…話を出来ないかな? 」
信者:皇拉
「 は……はい… 」
嘘みたい!!
あの、聖美鵺様から直々に声を掛けられるだなんて!
雲の上の人だとばかり思っていたから吃驚!
私はコクリ…と頷いて、聖美鵺様と話をする事にした。
こんなチャンス、滅多にないもんね!
それにしても、聖美鵺様って美形だわぁ~~~♥️
目の保養には最適ね!
眼福だわぁ~~~、イケボだしぃ♥️
聖美鵺
「 帰り際に御免ね 」
信者:皇拉
「 い、いえ!
とんでもないですぅ♥️
それで話って何でしょうか? 」
聖美鵺
「 うん……。
10月8日の事なんだけどね… 」
信者:皇拉
「 リーフレット配布の事ですか?
その日は家族行事で参加は── 」
聖美鵺
「 リーフレット配布??
何の事かな?
聞いてない…… 」
信者:皇拉
「 えぇっ?!
知らないんですか?
先輩達が聖美鵺様の為に『 リーフレット配布をするわよぉ! 』って張り切って話してましたよ 」
聖美鵺
「 ………………はぁ~~~…… またか…。
止めさせないと……。
教えてくれて有り難う、皇拉さん 」
信者:皇拉
「 いえ……。
聖美鵺様にも知らない事ってあるんですね? 」
聖美鵺
「 ははは……。
御夫人達はパワフルで困るよ…。
慕って頂けるのは有り難い事だけれど……暴走されるとね… 」
信者:皇拉
「 聖美鵺様も大変なんですね…… 」
聖美鵺
「 あぁ…御免ね。
皇拉さんは10月8日に誰かと会う予定だよね?
出来る事なら予定をキャンセルして会わない方が良いんだけど……、難しいなら出来るだけ人目の多い場所で会うようにした方が良いよ。
明るい内に別れて、寄り道せずに帰宅した方が良い。
間違っても彼とは2人きりにならないように心掛けてほしいかな。
決めるのは皇拉さんだから強要は出来ないけど……。
僕は…伝えたからね 」
聖美鵺様は言いたい事だけ言うと、自転車置き場から離れて行った。
何だったの??
何で私が “ 誰かと会う約束をしている ” って事を聖美鵺様は知っていたの??
私は誰にも教えてないのに……。
それに聖美鵺様は “ 彼 ” って言ったわよね?
どうして私が男性と会うって思ったのかしら??
「 会わない方が良い 」とか「 キャンセルした方が良い 」とか「 人目の多い場所が良い 」とか「 2人きりにならない方が良い 」とか「 明るい内に切り上げろ 」とか……。
本当に何なの??
気味が悪いわ……。
今後は聖美鵺様とは関わらないように気を付けなくちゃね!!
私はチャリに跨がってペダルを踏むと、チャリを走らせて転車置き場を去った。