⭕ 水死体からの誘い 2
発狂して自分から窓の外へ落ちた女子生徒は、一命は取り止めたらしいけど、地面に落ちた時の衝撃で全身を強打して今でも動けない状態で、病院に入院中だって噂…。
これだけじゃなくて、瀬圉静絵にチョッカイ出した男子生徒が階段から落ちたり、転んで怪我をしたり、物を無くしたり、火傷をしたり、病院へ運ばれる──なんて事がちょくちょくあるみたい。
入学式の終わった翌日には「 旧校舎の裏庭に死体が埋まってる 」なんて問題発言をしたらしくて、先生達を戸惑わせたらしいし。
「 早く掘り起こして、遺体の帰りを待つ遺族の元へ返してあげて 」なんて校長先生に直談判しに言ったのも有名な話。
入学早々、やらかした瀬圉静絵は色んな意味で有名人。
保護者を呼ばれる騒ぎになったけど、「 文句を言う前に旧校舎の裏庭を掘ったらどうだ 」って言われて瀬圉静絵の両親からは全く相手にされなかったみたい。
実際に旧校舎の裏庭を掘り起こしたら、白骨化した死体が出て来たものだから、学校は大騒ぎになって……。
瀬圉静絵は先生達からも別の意味で問題児視されている女子生徒ってわけ。
今では誰もが瀬圉静絵から距離を取っていて、近付こうとしないって噂…。
そんな高校で浮いてる存在の瀬圉静絵にあんなに超絶美形な彼氏が居たなんてねぇ。
人って分からないものねぇ……。
──*──*──*── 喫茶店・えみゅ〜る
?
「 いらっしゃいませ、瀬圉小玄武様,静絵様 」
瀬圉静絵
「 こんにちは、ソツバさん。
今日もマスターはお休みですか? 」
ソツバ
「 彼女とデートだそうです 」
瀬圉静絵
「 えぇ〜〜…お店を放ったらかしてデートって…… 」
小玄武
「 相変わらずだな。
代々続く霜村家の跡取りがあれば浮かばれないな 」
瀬圉静絵
「 一寸小玄武、言い方!
霜村家の人達は未だ生きてるでしょ〜 」
小玄武
「 そうだったか?
どうでもいい。
杏遵は自らフラれに行ったのだろう?
物好きな奴だ 」
瀬圉静絵
「 違うと思う… 」
ソツバ
「 奥で藺羨様が御待ちですよ 」
瀬圉静絵
「 あっ、そうだった!
──藺羨さん、お待たせしました 」
藺羨駛夏
「 やぁ、静ちゃんと小玄武君。
ニュース見たよ。
念願が叶って良かったね! 」
瀬圉静絵
「 藺羨さんのお蔭です。
警察の方に手を回してくれたから 」
藺羨駛夏
「 オレは池の前で大事なカメラを落としただけさ。
偶々通り掛かった御人好しそうな新人警官が親切にカメラを池から拾い上げてくれただけだよ。
カメラと一緒に白骨死体まで引き上げてくれたのは嬉しい誤算だったね 」
小玄武
「 そういう事にしておこう。
次のネタを持って来たぞ。
記事に書け 」
藺羨駛夏
「 勿論、喜んで書かせてもらうよ。
静ちゃんの依頼から始まった【 死体は帰りたがっている 】の掲載記事は今や人気の看板記事だからね!
──で、次は何処に埋まっているんだい? 」
瀬圉静絵
「 西紀ノ坂にある工事現場です。
残留思霊体が立っています。
…………男の子と…女の子……です… 」
藺羨駛夏
「 そうか…。
詳しく聞こう。
見た感じの年齢と服装は? 」
瀬圉静絵
「 はい…。
男の子の年齢は── 」
──*──*──*── 歩道橋
小玄武
「 駛夏、喜んでいたな 」
瀬圉静絵
「 うん…。
お父さんが紹介してくれて良かった。
藺羨さんが記事に書いてくれるから、犯人からも忘れ去られた死体が掘り起こしてもらえる切っ掛けになっているし… 」
小玄武
「 犯人が捕まえられないのは口惜しいがな 」
瀬圉静絵
「 残留思霊体と話が出来ればいいのにね…。
そうしたら、犯人の情報も一緒に書いてもらえるんだけど…… 」
小玄武
「 今迄に掘り起こされて発見された死体は新たしいのも含めて、半数以上は遺族の元へ帰れている。
駛夏を紹介される前より格段に進歩している。
弓弦に感謝だな 」
瀬圉静絵
「 藺羨さんって、代々陰陽師の家系で育ったのよね?
どうして陰陽師にはならないでオカルト雑誌でライターをしてるの?? 」
小玄武
「 さてな。
事情は知らないが、オカルトライターは駛夏の性に合ってると思うぞ。
静絵が依頼した【 死体は帰りたがっている 】の記事を掲載してから月刊UAの売り上げも上がっているようで何よりだ。
これからも記事のネタを提供して利用させてもらうとしよう 」
瀬圉静絵
「 小玄武ぅ〜〜〜言い方… 」
小玄武
「 利用されているのは静絵もだぞ。
御互いに利用の出来る内はうんと利用し合うものだ。
Win‐Winな関係──と言うのだろう? 」
瀬圉静絵
「 そうね…。
………………埋められたり、沈められてる死体が多過ぎる…。
あの子達……犯人に誘拐されたのかな? 」
小玄武
「 さてな。
誘拐事件は毎日、何処かで起きているからな 」
瀬圉静絵
「 今日もユタクさんに会えなかったわ… 」
小玄武
「 杜代加有明古の旦那だぞ。
既婚者を狙うな 」
瀬圉静絵
「 別に狙ってないし!
私はユタクさんに憑いてるアッチに会いたいの 」
小玄武
「 霄囹か。
悪趣味だな 」
瀬圉静絵
「 小玄武って霄囹の事、嫌いよね〜。
霄囹って日本だけじゃなくて世界中にとんでもない事して、最後にはお母さんの〈 守護り手 〉──玄ちゃんにメッタメタのギッタギタのバッコバコのボッコボコにされた陰陽師でしょ?
今は何でかユタクさんの〈 守護り手 〉をしてるみたいだけど? 」
小玄武
「 千年以上の怨みを込めて思う存分叩きのめさせてもらったからな 」
◎ 訂正しました。
有明子 ─→ 有明古