1年と11ヶ月目(3月)そのさん
翌日は、誰が何かを言ったわけでもないのに、日が昇ると同時にみんなの目が覚めた。
新しい家と前の家、そして入りきらなかった人はトラックの荷台で毛布を分け合って寝たので、まだ肌寒い3月の夜も無事に乗り切れた。
新しい家の前、露天の風呂を沸かして、まずはドワーフの村から来た人たちに順番にさっぱりしてもらう。
そしてその間にベガルの人たちのところにいって、卵や牛乳などをもらうついでに、豚を一匹締めてごはんにすることにしよう、といわれた。
ランとマルとミル、そしてたまはマルガレットさんやほかのドワーフの奥様たちとものすごい勢いでパンを焼き始め、ごはんを焚いて、スープを作り、サラダを拵える。
フライパンの大きさのままの大きなオムレツや、お皿に山盛りのソーセージ。
野菜いためなどが次々と作られていき、ベガルの人たちも合流して、150人ほどの大人数でのご飯となった。
ご飯を食べながら、ベガルの長老ジョンさんとドワーフのまとめ役ストリングスさんは挨拶を交わし、トラやリンや僕たちと被害状況や、いろんなものを確認しあう。
まず僕が話をしたのは、この日本という場所は島で、地震が起こりやすい場所だということ。地震やそれに伴う火事や津波の説明もする。
いま僕たちがいる場所は高台のため津波の心配はあまりなく、あと地震のときに大きな被害や震源地になりやすい活断層からも少しずれていることも説明した。
だからといって、この場所が安全でも大丈夫なわけでもなく、何かあったときにはもちろん危険であることも話をした。
「この島というのがあぶないんじゃったら、さっきいったように大陸?とかいうところに引っ越ししてはどうかのう?」
ストリングスさんが言ったが、大陸まではものすごく離れていること、大陸でも地震がないわけではない、ということ、また新しい大陸であるなら、どんな危険があるのかがわからない、ということも伝える。
いまこの島で生活ができているけれども、大陸で生活が可能なのかどうなのか不明だからだ。
もし大陸が無事だったら、日本がこのままの状態であることはないと思うので、おそらく大陸のほうでも、何かが起こったのだと僕は思っている。
何があるか分からないので、今の状態で大陸に移住、というのはちょっと冒険すぎる、という話もした。
そもそもこの人数だから、大きな船でもない限り無理だし、操縦なんて、できそうにもない。
いろいろな話をして、とりあえずみんなでまとまってここで生活し、いままでの得意分野での役割分担をしよう、という話になる。
「しかし、こまったのう…」
ビッテンバウワーさんは肩を落とす。
「わしらの住むところもそうじゃがベガルのみなさんも新しいところを用意せんといけんからなあ…」
1,2軒大きな家をたててしばらくは共同生活をしたあとで、順次家を建てよう、と計画をしていたのだが、地震で大きくヒビのはいった校舎をみて、ベガルのみんなが大きな建物を怖がるようになってしまったのだ。
タイミング悪く、近くの大きな建物が地震で崩れてしまったのを見たから、というのもある。
一気に100人以上の家を作らなくてはいけなくなってしまった。
もちろんそろそろビッテンバウワーさんやマルガレットさんたちの家も作ろうとおもっていた矢先だった。
ベガルの人たちは33家族。ちなみに、引っ越ししてきた当時は80人ほどだったが、この半年で子供が10人も生まれていた。双子や三つ子が多いからだというが、全員すくすくと元気に育っている。
ドワーフさんたちは街の人たちが23人、そしてすでにこっちにきているマルコたち12人を加えると15世帯、40人近い人たちになる。中には若い夫婦が3組ほどいて、もうすぐ赤ちゃんが生まれるところもあるのだとか。
できれば安心して子供が育てられる家に出来たらいいけれど…いっきに48軒もの家は作れない。
資材を調達するのも大変だし、どうしたものか、と考えているとルーが一冊の本を持ってきてくれた。
「これならどうかな?」




