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1年と6ヶ月目(10月)の話その5

翌日の朝。

待ち合わせの昨日別れた場所まで戻るために、トラックとキャンピングカーを走らせていた僕たちは、トラックではなく車できたトラからびっくりする話を聞かされた。


「この前のスーパーの近くを通りかかったら、木とかいろんなので道が通れなくなってたんだ」


話を聞くと、トラとリンで2台のトラックでこっちに向かっていたが、先を走っていたリンのトラックが障害物で停まり、リンが車を降りて、道にふさがったそれを調べていると、覆面をしたやつらが10人くらいでリンを取り囲んでつれていってしまった、という。


トラックも占拠されてしまったので、トラはあわててそこから逃げ出して、近くに止めてある車で動きそうなものを探して、僕たちのところまできて、合流したのだという。


「あのスーパーって、お米とか食べ物はなくなっていたところの?」

「そうそう。やっぱりあれは誰かがもっていってたんだよ。で、そいつらがリンを攫って行ったんだと思う」

「リンを急いで助け出さないと、まずいな」

「ああ、でもそんなにひどいことはされてないかもしれない」

「え?」


トラックと車を走らせて、リンが攫われた、という場所まで戻ってくる。

道にバリケードのようにいろいろなものが積まれていて、その向こう側にトラックが2台停まっていた。


たまとルーたちは別の道から家に帰ってもらい、ジョリとマルとミルとラン、あとはビッテンバウワーさんたちに状況を報告してもらうことにした。


トラックを降りて、リンが連れ去られたという場所で、何か手掛かりがないかを探していると


「お前たち、さっきのやつの仲間か!」


目と口のところに穴をあけた紙袋で顔を隠した子が声をかけてきた。


「あ、お前!リンを連れ去ったやつらの仲間だな!」

「そうだ!お前らも来い!」


そういって紙袋をかぶった僕の腰あたりの身長の子は偉そうな態度で僕たちを見上げながら命令する。


「な、ひどいことされなさそうだろ」

「あーうん」

「なんでリンは連れ去らわれたの?」

「さすがに10人くらいに寄ってたかってだと、ケガさせちゃいそうだからだと思う」

「なるほど」


リンを大丈夫といった理由がなんとなく理解できた僕とトラは、その子に言われるがままとりあえずついていくことにする。


そこは、学校の跡地で、校舎をまるまる彼らの住処としているようだった。

大きなフェンスに囲まれて、L字型の校舎とその前には広い校庭がある。

門の前には「小・中学校」と書いてあったのでもとは小学校と中学校が一緒になったものらしい。


「とりあえず、そこでまて!」


建物の入り口でしばらく待たされたあと、入っていいと許可をもらい、中に入る。

あちこちから声が聞こえたり、走る音が聞こえたので、おそらく数十人はいるだろう。

いままで、地球で出会った中で一番大きなコミュニティかもしれない。

そんなことを考えていると、一つの部屋に通される。


おそらくは校長室などだったろうとおもうソファーやら重厚な机があり、革張りの椅子に座っていたのは…


「手荒なことをしてすまんなあ」


いぬのような耳と尻尾をもった小柄なおじいちゃんだった。




おじいちゃんことジョンさんは、ベガル族の族長だと名乗ってくれた。

ここには80人の村人が住んでおり、みんなベガル族だという。


「さっき連れてきてしまったポルス族の男の子も手荒なことはしとらんので安心してくれ。アルタ族とポルス族が一緒にいるとはのう…」

「別にそれは関係ないだろう。それよりもリンを返せ」


トラがジョンさんに向かって唸るように言うが、ジョンさんはどこ吹く風といった様子で特にきにしていない。


「まあまあ、短気は損気というじゃろ?」

「いきなり連れていかれて心配しないわけも気にしないわけもないだろうが!」

「なに、聞きたいことを聞いたら開放してやるでな」

「聞きたいこと?」


リンに聞きたいことがあるというのなら、僕のほうが答えられる可能性がある、そう思ってそれをジョンさんに言うと


「ほう。ここにもともと住んでいた種族だというのじゃな」


ジョンさんの目つきが鋭く変わった。


「そしたら、ちょっとこっちへついてきてくれたまえ」


椅子からよっこいしょ、と降りて、部屋を出ると建物をぬけて体育館のあるところまで連れてこられる。


「ここの裏地なんじゃが…」


そういって連れてこられたのは、校舎の裏手にあるどうやらグラウンドの跡地のようだった。


「うわ。なんだこれ」


そこには一面蔓状の植物がびっしりと生えていた。


「この茎を一本つぶしてみてほしいんじゃが」


ジョンさんはそういうと、あの紙袋を急いで顔にかぶる。


「?」


その行動を不思議に思いながら、トラと僕は言われた通り、茎を一本ねじりとると、あたりにいやーな匂いが立ち込める。


「うわ!くさい!!!!」

「おおおお…」


ジョンさんとトラが鼻を抑えて悶えているのを横目に、僕は蔓と花をまじまじとみる。たぶんこれはヘクソカズラといって、嫌な臭いのする雑草の一種だ。


「わしら種族はひときわ鼻がよいので、この匂いで具合を悪くするものが多くおってな…。困っておるのじゃ」


夏の間中生えてくるこの草を刈り取っていて、みんな具合を悪くしてしまったという。

この草をどうにかならないか、知らない人がやってきたので、話を聞こうと思いつれてきてしまったのだという。


「あれ、そういえばリンは?」

「先ほど相談したときに、匂いに目を回して、今は部屋のひとつで休んでおる」


…リンもたぶん知らない草だったから油断したんだろう。僕は「くさい」くらいだが、ジョンさんもトラさんも、とてもつらそうにしているので、この草をどうするのか考えなくてはいけないなあ、と思う。


校舎にもどって、リンと合流したのちに、ジョンさんは建物の中を案内してくれた。


3階建ての校舎は、1階をちっちゃな子とお年寄り、2階を若い人たちの住まいにして、それぞれの部屋で家族が暮らしていた。


水や食料をどうしているのか、と聞いたら、食料はスーパーや近くのコンビニからもってきたものを1階と一部屋に積んでみんなで管理しており、水は目の前の校庭にみんなで井戸を掘ったという。


あとは雨水を貯める樽を屋上に置いて、それも使っているという。

この校舎で犬耳をつけたベガル族の人たち80人、村人がみんなで共同生活をしていた。



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