8ヶ月目(12月)冬ごもりとあたらしい家
鶏小屋を牧場に移したあと、辺りは本格的な冬へと変わっていった。
自分が記憶している冬よりも気温がずっと低い気がするけれども、ひょっとしたら人類がいなくなって、火を使ったり電気を使わなくなった分、地面が冷えるようになっているのかもしれない。
貯蔵庫は凍った氷が冷やさなくてもそのままずっと凍った状態で1日保つようになり、畑では冬の野菜が収穫できるようになっていた。
キャベツに人参、ゴボウに白菜。
白菜は一抱えもありそうなものをランが「今日は豚と白菜の鍋にしよう」とホクホク顔で家に持っていったし、それ以外のものは低温の貯蔵庫の方に保管する。
冬場は野菜を食べれないと思っていたけれども、意外といろんな野菜が採れるんだなあ、と思っていた。
畑の雑草などの伸びは少ないので、畑のメンテナンスも夏よりは楽なので、冬はみんなで家にいる時間が増える。
すると困るのは電力不足だ。
お風呂を15人が入れるほどお湯が沸かなくなったり、日が短くなり家で使う電気が増えるけれど、夜電気があまり持たなくなっていた。
ランとたま、ミル、マルのお姉さん組は冬なんだしゆっくりお風呂に入りたい、と言う。
トラ、ジョリ、リンと僕は夜に明かりがあったらもうちょっといろんな作業ができるよね、と話し合うようになっていた。
そろそろ、いまの家がいろんな意味でキャパオーバーになりつつあった。
そんなある日、リンとルーが1枚の紙をみんなに見せてきた。
それは大きな1枚の紙に書いた地下1階、地上2階の3階建ての家の図面だった。
図書館でこの前建築関係の本をいっぱい持ってきたのはこのためだったんだろう。
新しい家は一階に大きなキッチンがあり、外につながっていて、ランやたまが熱望していた石窯やかまどなど電気を利用しない台所の機能も付け加えていた。
みんなでご飯を食べれる大きなダイニングは今の家のままに、今トラたちの寝床になってしまっているリビングスペースはそのままみんながTVで見れる場所としてそのまま書かれていた。
大きく違うのは、風呂のスペースが家の中と外の2つあり、薪で風呂釜の湯沸かせるようになっている。
電気では難しい部分を薪で補おうというアイデアだ。
風呂の外のスペースはサウナと露天風呂になっていて、これは畑仕事をしたあとにちょっとだけ汗を流したい時用だという。
露天風呂を作ったのはたまとリンが先日温泉について皆に話をしていたからだろうと思う。
二階はリン、ラン、ルーの部屋、僕とたまの部屋の他に新しくトラたちの部屋、小中大3つの部屋が設計されていた。
その他には図書館からもってきた本を置ける図書室のような部屋も大きく作られていて、そのほかに物置くスペースも作られていた。きっと洋服を置いたり、夏や冬の季節の必要なものを置く場所の他、野菜の乾燥室などにする予定だという。
家の設計図には地下も書かれていて、家の中の貯蔵備蓄庫として1,2週間分は食べ物が備蓄できるようになっている。夏場も地下だから涼しく貯蔵できるので、冷蔵庫の電力をある程度抑えられるだろう、という話だった。
屋根には新しくソーラーパネルを設置し、水車小屋からも電力を引っ張ってきて、今よりも使用できる電力量を増やす計算だ。
「ねえ、これ作ってみようよ」
これからより寒くなり畑の仕事もないこの時期だからこそ、せっかくならやろう、という話になった。




