3ヶ月と1日目 夏の一日
鶏と牛の声で目が覚めることに慣れてきた。
ベッドから勢いよく飛び出すと、たまも同じように起き出す。
空が若干明るくなってきて、もうすぐ日の出を迎える空が今日もいい天気になると教えてくれていた。
「ルーおはよう!」
バケツをもったルーと階段のところで会う。
最近のルーティンワークとして朝ご飯の前にルーが乳しぼりをしてくれる。
「ランは?」
「畑に行ったよ」
「了解」
ランが朝食べれる野菜をいくつか収穫してくれているので、僕は家の隣の鶏小屋にいく。
「コッケーココーコッコ!」
なんとなくイントネーションが不思議な挨拶を受けながら、抱卵させる以外の卵を探して、ボールに入れる。今日は7玉もあった。大収穫だ。
家に帰るとたまがシーツとかタオルとか洋服を洗濯機へと放り込んでくれていた。
ご飯が終わって、太陽が出てきたら、洗濯機を回すことにする。
卵をもって台所にいくと、まるでスーパーの特売の帰りのような野菜の山が台所を埋めていた。
「夏場の野菜ってとんでもないよね。収穫した端から新しいのが生まれてくる感じよ」
ランが野菜の山を見て嬉しそうだけれども複雑な顔をしながら言ってくる。
「今のうちに秋から冬の備蓄食料を作ろうと思うけれども、まるまる1日作業になるとおもう」
野菜の山を前にして、使命感に燃えたランが宣言するように言った。
朝ごはんは、夏らしくソーメンにした。
スーパーの跡地でもってきた乾麺の類は早めに消費してしまおう、ということと、パスタやうどんラーメンなどは作れるけれど、ソーメンは技術が必要なので、あるうちに味わっておこう、という僕の提案だ。
茹でたソーメンに細かく刻んだ紫蘇、トマト、キュウリ。
そこに温泉卵を落としてめんつゆをかける。
キムチか柴漬けをちょっと入れても美味しいんだよなあ、と思いそろそろ漬物とか野菜の長期保存も考えないとな、と思ってみる。
巨大な冷蔵庫みたいな貯冷庫も作ったのである程度いろいろなものは保存できる。
野菜によっての保存方法は調べておいた方がいいなあ、と思いながらソーメンを食べるのだった。
朝ご飯を食べた後、暑くならないうちに畑の雑草をとったり水撒いたり、みんなで収穫をしたりする。
夏の野菜は勢いがよくて、ここ数日、みんなで収穫したものを数えたら
オクラ×ボール1杯分
キャベツ×12玉
キュウリ×38本
ししとう×ボール1.5杯分
ズッキーニ×30本
トウモロコシ×51本
トマト×大き目な段ボール2箱
ナス×大き目な段ボール2箱
ピーマン×89個
レタス×3玉
かぼちゃ×5玉
という状態に。
スーパーの特売から帰ってきた状態から、スーパーの特売のコーナーそのものになりつつある。
他にも急いで収穫しないでそのままにしているのが
枝豆、大葉、唐辛子、ニンニク、ショウガで、これは必要なだけとって、あとは乾燥させたり、そのまま来年のためにタネにしたりありのまんまでいこう、ということにしている。
とりあえず、この大量の野菜を秋冬の備蓄のために、なんとか加工しなくてはいけないので、ホームセンターに瓶など容器だの、保存用の入れ物を仕入れに行くことにする。
車に乗り込んで、ドライブすること5分ちょっと。
近所のお馴染みのホームセンターの跡地にいき、瓶とタッパーと保存の袋を探し出す。
そのコーナーの近くでたまとランが一生懸命なにかを探しているので聞くと
「ミョウバンってどんなもの?」
と聞いてくる。
ミョウバン?なんか薬品だった気がするけれど、そう思ってキッチン回りの洗剤やらいろんなものが置いてある薬品のコーナーに2人といく。
「こっちは重曹で、こっちはセスキ炭酸ソーダか…」
ミョウバンを探して呟く僕のつぶやきに2人が過剰に反応する。
『重曹!』
「セスキ炭酸ソーダ!」
なにやら2人の心に火をつけてしまったようだ。
「あ、あったよ、これがミョウバン」
そういって、ミョウバンを二人に渡すと、棚にあるそれをごっそり持って帰ることにしたようだ。
科学の実験でもするのか、怪しい薬品に囲まれて、帰りの車はずっしりと重くなったのだった。




