ユンボと耕耘機
リンの軽トラを従えて、車の専門店にいくと…
「やっぱり都内とは品揃えが違うね!」
必要だと思われる、農作業用の機械がいっぱい、夢のように広がっている。
「やっぱもうちょっと大きなトラックじゃないと入らないな…」
僕はユンボと耕耘機を撫でながらそういう。
屋内に置いてあったので、コンディションもばっちりだ。
すると、リンが
「みつけたー!!!!」
建物の奥で叫んでいる。
そこには、きれいな姿のままの四トントラックが1台、建物に寄り添うように停まっていた。
「ちょっと運転してみるね!」
鍵がついたままのそれをリンはエンジンをかけて、発進、バック、マニュアルの車をさっと乗りこなす。
「これに、ユンボと耕耘機のせて帰ろう!」
トラックの窓からいい笑顔でリンが親指を立てながら言う。
ハンドル握ると性格が変わる人がいると聞いた事があるけれども、リンはそのタイプなのかもしれない。
トラックにユンボ、耕耘機の他にも役に立ちそうなものを幾つか入れて、リンとルー、僕とたまとラン、という2組に分かれて車に乗り込む。
さあ、出発だ、と建物から車で出たところで
「モー」
「ブーブー」
牛と豚の集団に取りかこまれる。
僕はリンに言って、トラックの荷台にあったものを整理して、どうにかこうにか隙間を作ると、トラックの荷台にと続く坂を板で作り、豚を5頭ほど追い込んで、荷台に乗せることに成功した。
「ベーコン!ハム!トンカツ!」
思わず口に出てしまう。
「本当は牛乳やバターを考えると牛も欲しいんだよなあ」
とつぶやくと
「バター!? 牛乳!?」
『コイツヲ持ッテ帰レタラ、手二入ルノカ!?」
たまとランがすごい勢いで食いついてくる。
「うん、ほら、牛のおっぱいあるだろう?あれから牛乳が出るんだよ」
と指さすと、本の中DVDの中でしか知らない牛乳に思いを馳せた二人は
「よし!持って帰ろう」
『牛乳げっとダ!』
と鼻息あらく宣言する。
けれども
「ちょっとまって、もう豚で荷台はいっぱいだし、豚と牛両方を一緒にはいれられないよ。さっき乗ってきたトラックで運ぶにしても、運転できるのは僕とリンだけ…」
「できるよ!」
言葉をさえぎってランが手をあげる。
「リンほどはうまくないけど、実は練習させてもらってたの」
とリンが運転ができると言い出す。
「だから牛、持って帰ろう!」
そういって、牛を指さす。
「よしわかった。ラン、トラックもってきて、たま、牛を載せる準備するよ。ルー、そこらへんにある草をできるだけトラックに運んで敷いてくれる?」
こうなったら毒を食らわば皿まで、の心境で牛2頭も追加で連れて帰ることにする。
牛をどうにかこうにか引っ張ってトラックの荷台に上げ、4トントラックをリンとルー、2トントラックをランとたま、そして乗ってきた車を僕が運転し、帰路につく。
思った以上の収穫だったが、家に帰るころには真っ暗になっていて、なんとなく、の感覚を頼りに家に帰ると、隣の家の木に牛を2頭繋げ、豚は…悩んだ末
「ごめんなさい…」
と謝りながら隣のお家にはいり、リビングに草を敷いて放すことに。
水を置いてとりあえずは豚を放すと最初はあたりを探っていたけれど、すぐに落ち着いた様子を見せた。
犬が帰ってきたのを喜んで出迎えてくれたので、新しい水に換えてあげると
「牛の番、よろしくね」
とひと撫でしたら分かったように牛の近くで座り込んだ。
「お腹すいたね」
「ランもおなかすいたー!」
『タマモ』
「ルーも!」
大仕事のあとでへとへとになりながら牛と豚をどうにかしたので、お腹がペコペコだが
「僕がご飯準備してる間に、みんな順番にお風呂にはいっちゃおう」
昼間温泉にはいったけれども、その後の牛と豚で汗びっしょりになったし、服もどろどろになったので、洗濯してお風呂をみんなで順番に入ることにする。
最近はリンとたまにお願いしていたので、久しぶりにご飯を炊いて、ジャガイモと玉ねぎで味噌汁をつくり、卵を焼き鳥の缶詰で溶いて焼いて親子丼の上を作る。あとはトマトときゅうりでサラダを作り、みんなにお膳立てをお願いして、シャワーをさっと浴びる。
ホカホカご飯に焼き鳥の甘辛タレと玉子のトロトロをかけて、食べ、軽く塩を振ったトマトときゅうりを咀嚼し、お味噌汁を流し込む。
「動いたあとのご飯は美味しいね」
そういって、みんなであっという間にご飯を平らげると、すぐに眠くなってしまったので
「牛と豚は明日いろいろやろう」
そういって、みんなぐっすりと寝るのだった。