新たなるもの
あけましておめでとうございます。年末に書き途中をうっかり消してしまい失意のどん底でしたが、復活してみました。よろしくお願いいたします。
犬が吠えている先を懐中電灯で照らした。
元は生垣だったが人の高さ以上になっている草や木の向こうで
ガサガサという音が聞こえる。
「誰かいるんですか?」
丁寧語で問いかける。
すると、茂みの向こうから、人影が現れた。
「それ、こわい…」
人間…のようでいて、大きく違う姿をしたその子たちは1,2、3人(と、とりあえず数える)いた。
今にも泣き出しそうな顔をした彼らは人間でいうと10才~15才くらいだろうか。
僕よりも少しだけ年下に見えた。
そして大きく普通の人間と違うまるでウサギのような長い耳をロップイヤーのように項垂れて小刻みに震えながら、犬を指さす。
とりあえず、犬が唸って彼らを見て吠えるのを「コラ!」と怒ると、理解したのか、敵ではないと認識したのか、おとなしくなった。
犬がおとなしくなると、彼らはどうしていいのか分からず、垣根のところにいたので、おいでよと、声をかけると、おとなしくこっちに歩いてきた。
よく見ると、彼らは白い長いシャツのようなものを着ていたが、あちこち汚れ、破け、ボロボロの状態。
しかも素足で歩いていたらしく、足は傷だらけのようだった。
たまに水を用意するようにいって、彼らを家の中に入れる。
おそるおそる入ってくる様子に、おそらく危害を与えるようなことはないだろうと(むしろ犬の方が攻撃する可能性があるだろうと)考える。
たまが持ってきてくれた水で彼らの足を拭き、家の毛布をリビングに敷く。
「よかったら今日はここで寝なよ」
そういうと彼らは一様にほっとした様子を見せる。
きっと見た感じだと、さっきのイヌのように野犬やら何かに追われたりしていて、身一つで逃げていたのだろう。
詳しいことは明日聞くことにして、今日は休みなよ、と言おうとしたら、彼らのお腹がぐう、と鳴った。
「よかったら食べる?」
残り少ない備蓄のカップラーメンを3つ作ると、彼らはわき目もふらず食べ始める。
彼らが食べ物を食べている間、たまは彼らのことをじっとみていたが、眠くなったのか二階にあがっていった。
きっと僕の部屋に敷いた、たまの布団に潜るのだろう。
お腹が落ち着いたウサギ耳の彼らも、一番年下のこがうつらうつらしはじめたので、詳しいことは明日、と言って眠らせることにした。
数日たって、生きている者との遭遇は何度目かだが、自分の知っている人間にはまだ出会えていない。
それどころか、たまも人間に見た目は近いが、おそらく人間ではないだろうとおもっていたが、さらに人間でない見た目のものと3人、出会ってしまった。
自分の家、自分の部屋、自分の布団に入りながら、僕はいまの地球に、人は存在するのだろうか、と思いを馳せながら眠りに就くのだった。