めがさめたら。
連載はじめました。よろしくお願いいたします。
目が覚めたら、人類が滅亡していた(らしい)。
僕の名前は田中悠。
記憶があるのはベッドでいっぱいのチューブにつながれた自分。
突然罹った難病で起き上がることもしゃべることもできなくなって
日に日に弱っていく自分。
あーしぬんだなあって薄れていく意識の中で思ってて…
何故か目が覚めた。
それも超すっきりと。
たぶんここは病院だったところ。
チューブがつながったままだったから。
でもあたり一面埃っぽくて、
チューブの先の機器からも機械音は聞こえない。
室内は荒れ果てて
ベッドらしきものに横たわっていたけれども
シーツもボロボロだ。
死後の世界だとしても病院である必要はないし
そもそもこの病室も病院も古くてボロボロだが見覚えがある。
おそらく入院していた病院だろう。
自分がいることを忘れて病院が廃院になって
そのままになったのだろうか…
そんなありえない事、起こるだろうか。
とりあえず、チューブを外し体を起こしてみる。
だるさも何もない。
まるで病気だったことが嘘のように動く。
寝たきりで体力が低下していたはずのカラダなのに
起き上がってもしんどさがない。
じゃあ、とベッドから降りてみる。
しっかりと足で立てた。
それだけでなく普通に歩ける。
まるで元気だったときのように。
ベッドで寝た切りだったことも嘘のようだ。
へやをうろうろしたら、部屋の隅に古ぼけたスリッパを見つけたのでそれを履く。
へやに備え付けの洗面台の鏡が割れてガラスが飛び散っていたからだ。
近づいて蛇口をひねると、ごぼごぼ、と音がして
赤茶に濁った水が出てきた。
しばらくすると透明になる。
手で掬ってにおいを嗅いでみると特に変なにおいはしない。
一口口に含んでみると、普通の水の味がした。
とたんに喉の渇きを覚えて、むさぼるように水を飲んだ。
しばらくすると、水は蛇口を止めるまでもなく止まってしまった。
とりあえず、病室の外へ出てみよう、
僕はそう思った。