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∮プロローグ∮





出逢いは


いつも突然で


そして


必然的なモノ─────・・・












私、乙葉(オトハ) 瑞希(ミズキ)

今年で19歳になるフリーター


今日は平日で今の所昼間のバイトはしていなかった為、家に近い“ドリームシティー”に来ていた


“ドリームシティー”とは

洋服・食品・雑貨屋・ゲームセンター等を一つにまとめた大きな夢のようなお店だ


「……さて、どうやって時間を潰そう…」


色々と店があるし、ボーッと見て回れば時間なんて直ぐだらうなと考えて居ると、前から来た人とぶつかってしまった


「!っす、スミマセ──」


そう言いかけて私は俯いていた顔を上げると、ぶつかった時よりも衝撃的なモノを見てしまい言葉に詰まった


180㎝以上ありそうな身長に、スタイルのイイ身体に整った顔、少し長い前髪に全てを見透かされているような、吸い込まれてしまいそうな瞳


そこに立っているだけで絵になるとは、まさにこの人のことなのではとつい見惚れてしまった


……綺麗な人…。モデルか何かの人かな?


でも……なんだか怖い感じがする──


あまりにもジッと見つめすぎた私はハッと我に返り、お辞儀をして彼の横を通り過ぎようとした


ガシッ


「……えっ?」


だけど彼が私の腕を掴んで離さなかった


それに驚いてフリーズしていると、彼がゆっくりと口を開く


「………名前、聞いてもイイか?」


「?えっと……乙葉瑞希、です」


いきなり何だろうと思いつつ私はフルネームで答えた


すると彼は辺りをキョロキョロとしたかと思うとある一点を見つめ、そのまま私に話しかけた


「…甘い物とか、好きか?」


「えっ?……まぁ、好きですね」


「なら、ぶつかった詫びをさしてくれ」


彼はそう言って、目の前にある“サーティワン”に指を指した 


「…!ぶつかったのは私の不注意な訳ですし、そんな、悪いですよ!」


「……駄目か?」


「えっ?」


ど、どうしよう!そんな甘えたような言い方されたら断りずらいんですけど!?


見た目からしょんぼりとした彼に対し、私は仕方なく首を横に振った


「……じ、じゃあ、お言葉に甘えて…」


そう言うと、彼は「そうか」と何やら嬉しそうな顔をして見せた


初めは、少し怖いとか思ってたけど……もしかしたら結構可愛い人かも


そんな事を思っていると、いつの間にか並んでいて選ぶ順番が来ていた


「何がいい?」


「あ、えっとじゃあ……ポッピングシャワーのシングルをレギュラーで」


「……それだけか?」


「…あ、ハイ。これ以上はさすがに失礼ですし…」


苦笑いで答えると、彼は何やらジッとアイスを見つめてまた私に話しかけた


「……抹茶か苺ならどっちだ?」


「…えっ?」


何の事やら分からず私は悩んだ末、苺と答えてみた


「…なら俺は、ストロベリーのシングルをレギュラーで頼む」


「ハイ。ではレジの方で少々お待ちください」


店員さんはそう言うと、次の客の相手をし始めた


………て言うか、まさかとは思うけど……


「…あ、あの!」


「ん?」


「えっと…なんかスミマセン…」


確信が無いためハッキリと言えないが、多分……そう言う事だろうと思い謝罪した


だけれど彼は、無表情のまま「何の事だ?」としらを切る


「お待たせしました~」


レジで彼がお金を払っていると、丁度よくアイスが二つ出てきたので、私はそれを持った


「………」


「あ、あの!もし良かったら、その……どこか座って食べませんか?」


「……ああ」


その一言にホッと胸をなで下ろし(いや、実際になで下ろす訳じゃないのだが)辺りを見渡して空いている席を探した


「あ、あそこが空いてますよ」


私は店の前にある隅っこのカウンターを見つけて、歩き出した


その後ろを彼もついて来て、隣同士に座った


「えっとじ、じゃあ……頂きますね」


なんだか気まずい感じがあったが、食べないのも失礼だと思い一つ口に含んだ


ある意味久し振りのポッピングシャワーの為、凄く美味しく感じた


……それが顔に出ていたのか、隣でジッと見つめられている事に気付いてチラリと彼を見た


「…お前、美味しそうに食うな」


「……良かったら、食べますか…?」


私は自分のスプーンでアイスをすくうと、彼の前に持っていった


それを見た彼は少し驚いた顔をしたことに気づき、私はハッとする


「す、スミマセン!そうですよね…何も自分のスプーンでなくてもいいですよね」


「……いや、俺は構わない」 


彼はそう言うと、私の腕を掴みそのままパクリと口に持っていった


「美味いな、コレ」


初めて、彼の笑った顔を見た気がした


……なんか私、変だ…


この変な気持ちを悟られないようにと、私は彼に質問した


「あ、あの……アナタの名前を、聞いてもイイですか?」


「……菊池(キクチ) 徹矢(トオヤ)


「…徹矢、さんは何歳なんですか?」


「………今年で26になる」


「へぇ、年上だったんですね」


「…そっちは?」


「あ、自分は今年で19になります」


そう答えると、徹矢さんは少し驚いた顔で「もう少し若く見えた」と言うから、私は笑って「よく言われます」と答えた


「……ん」


「えっ?」


「残りの半分…やる」


それを聞いて私はまた笑っていて、やっぱり優しい人だと改めて確信した


そして、徹矢さんと食べながら色々な話をした


と言っても、自分のことしか話していないけど


徹矢さんはそんな私を黙って聞いてくれていた


今何をしているのか、好きなモノは何か、今日は何故ココへ来たのか


「──で、今日は本屋の前に辺りをウロウロしてようかなと思っていたら、徹矢さんに会ったんです」


「……そうか」


「徹矢さんは?今日はどうしてココへ?」


そう聞くと、なんだか少し眉間にシワが寄った気がして気まずくなった


「あ、別に無理に話さなくてもイイですから……」


私は焦って違う話にしようとした


「いや、俺も話させてくれ」


でも彼がそう言うので、私は頷き黙って彼の話を聞くことにした


話からすると、どうやら付き合っていた女と今日ココへやってきたのだと言う


だけど、その女とは元々付き合う気がなかったらしい


あまりにしつこく、渋々付き合うことになったそう


でも女は自分が好かれていると大いに勘違いをし、徹矢さんの友達を知らずにパシりにしたりと好き勝手し出したと言う


「──だから、さっき別れ話をして来たんだ」


「そう、ですか。それは……とても苦しかったですね」


「苦しかった?」


「だって、徹矢さんの友達をパシり扱いするなんて……何も知らず出来ない側は苦しかった筈ですもん」


なんだかそう思った私自身、とても苦しくなった


側に居るのに、何も出来ない


それは、私も味わったことのある気持ち


「徹矢!やっと見つけたわよ!!」


そんな時、いきなり聞こえた声に後ろを振り向くと、なんだか怖い顔をした女がそこに立っていた


………何、いったい誰?


「……なんか用か?」


「なんか用って、彼氏に会うのに理由が必要な訳?」


「もう別れただろ」


「まだよ」


そこまで聞いて、私は気づいた


……この人が、徹矢さんの元カノなんだ


「……ん?誰よ、その女」


私はまたジッと見過ぎたらしく、視線に気付いた女が此方の方を睨みつけてきた


私は一瞬ビクリとしたが、そんな私の前に徹矢さんが庇うようにスッと立ち上がった


「……コイツは関係ねぇ」


「何よ、それ……アタシに別れ話を持ってきたのも、全部アンタのせいね!!」


どうやら火に油を注いだらしい


「許せない!私から徹矢を奪ったアンタを!」


だけど私も黙って見ている訳じゃない


さっきの徹矢さんの話を聞いて、私はこの人が凄くムカついた


そのことに思い出した私は、もう無我夢中だった


「……っ!?オイ…」


「いい加減にしなさい!!」


私を止めようとした徹矢さんを無視して、私は女の前に立った


「なっ!?」


私の声に女も周りに居た人達もビックリしたような顔で見てきた


だけどそんなことはお構い無しに、私は続けて言った


「アナタが振られたのは、彼の友達をパシりに使ったり彼の知らない所でこき使ったりしたからでしょう!?なんでそんなことも分からないんですか!!」


「…なっ!アンタには関係ないでしょ!?」


「あります!……だって私は、彼女だから!!」


「「っ!?」」


その言葉に女も徹矢さんも驚いた顔をした


………ん?私、何口走って!!


我に返って気づいた時には、もう既に時遅しで……私は女に叩かれた


ガシャン!


「痛っ!」


叩かれてバランスを崩してしまった私は、並べられていたテーブルに頭をぶつけてしまった


そして座り込んだ私は、額に手を持っていきまた痛みを感じ離す


すると──・・・


「──っ!?オイ、血が……!!」


後ろから聞こえた徹矢さんの声、だけど私は「平気です」と言うとまた女の方を今度は睨み付けた


「…な、何よ!アンタが悪いんでしょう!?」


「……それで?」


「──えっ?」


「それで、気は済みましたか?」


私は無表情のまま、女にそう問いかけた


女の方は、何やらビビっているのか震えている


「アナタが彼に付きまとうと言うなら、此方だって手段を選びませんよ?」


私はゆっくり立ち上がり女の耳元まで唇を持って行くと、周りには聞こえないように囁いた


「私は彼の為なら死ねるけど、アナタはそれが出来ます?」


そう言うと、女は顔を真っ青にして怯えながら消えて行った


それを見届けて私は溜め息を吐いた


「ふぅ、これで多分もう大丈夫だと思いますよ」


私は徹矢さんの方に振り返って苦笑いをしたが、何故か徹矢さんは傷付いたような顔をしていた


「……?徹矢さん?」


「っの馬鹿!怪我までして庇う必要なんてねぇだろうが!!」


「えっ?ありますよ。だって、徹矢さんはもう、友達じゃないですか」


ニッコリと微笑むと、そんな私を見て徹矢さんは溜め息を吐いた


「それにホラ!怪我だって掠り傷で直ぐに血も止まりましたし」


「………………」


何故だろう……徹矢さんが黙ったままなのが何故か不安を感じるのは………


「あ、アイスのゴミ、捨てときますね」


私は無理矢理笑顔を作り、ゴミを片付けようとする


だけど……その腕を掴む手に止められた


「えっ、と……徹矢さん?」


「……徹矢。何故か、お前にはそう呼んでほしいんだ」


「…ハイ」


どうしてかこの時、私は彼の…徹矢の言葉を素直に受け入れてしまった


まだ、会って間もないと言うのに……彼の有無を言わさないあの瞳に、私は逆らえなかった


「……瑞希?」


「…えっ?あ、ハイ!」


突然、彼の口から自分の名前を聞いてドキリとした


……初めて……名前を言われた……


そして、私はもう一つ気が付いた


顔を上げた瞬間、徹矢の顔が意外にも近かったこと


「……あ、あの!」


胸のドキドキを忘れようと、私は少し大きめに叫んだ


「ん?」


「……えっと、あ、LINEとか、してますか?」


悩んだ末、私はついそんなことを口走っていた


徹矢もポカンとした顔で固まっている


あぁ~私の馬鹿!初対面で何言ってんのよ!!


もう駄目だと思って目を瞑っていると、掴まれた腕から何故か徹矢が震えているのが分かって、目を開けると徹矢が震えながら笑っていたのが見えた


「……何笑ってるんですか」


「いや、俺も同じこと考えてたから」


「………!」


「…LINEしてるなら、話は早いな」


徹矢はそう言いながら、ポケットからスマホを取り出した


何だと見ていたら徹矢が「ホラ、携帯出せば?」とまた無表情に戻って言ってくるので、私はそそくさと携帯を出した


「ちょっと貸せ」


言うが早いかの差で私の携帯が徹矢に奪われ、手慣れた操作でスマホの画面をいじっている


私は、そんな仕草も絵になるとぼんやり見ていると徹矢が「……ん」と私の携帯を返してくれた


携帯を受け取りLINEの画面に目を向けると、そこには”菊池徹矢“とあった


「…ありがとうございます」


「まだ、時間平気か?」


「えっ?まぁ、少しなら…」


「なら、少し付き合え」


徹矢はそう言うとどこかに電話を掛けだした


……この人は、なんだか不思議な人だなぁ


初めて会って、こんなにも話したのは初めてだな


オマケに初めて知らない人に叩かれたし


……初めて──────


「………オイ?」


「えっ?あ、電話終わりましたか?」


ボーッと徹矢の事を見ていたら、いつの間にか電話が終わったのか徹矢が顔を覗き込んでいた


「?…ああ、終わった」


「ところでどこに付き合えばいいですか?」


肝心の所を忘れていたが、そもそも何にどこに付き合えばいいのか分からないのでは、安心できるか分からないのだ


「……この階にダイソーってあるか」


「ありますけど?」


「どこ?」


「えっと…ここからそう遠くない、あっちです」


頭で考えながらそう答えると、それを合図にか徹矢に手を捕まれてそのまま無言でダイソーへと向かった


ダイソーの前まで来ると、徹矢に待っているように言われて数分後


出てきた徹矢は何か買った袋を私に見せて、近くのソファを指差した


「…まずは手当てする」


そう言った徹矢の顔は、優しくて…


ずっと見ていたいと思った


 

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