〔2〕勇猛
〔2〕
あの日見た流れ星は、綺麗であった。雲一つ無い満天の夜空に散りばめられた無限の星を掻き分けていくその姿に、目を奪われた。小さな林の中にひっそりと建つ古民家と道場。古い純日本式の家屋に最近は飽き飽きしていたが、こういう家屋が建てられている暗い場所だからこそ、こんなに美しい眺めが観れるのだろう。淹れたての日本茶を啜ってまた眺めると、一味違って面白い。縁側に、まだ半分も飲み終えていない湯呑みを置く。草履を庭石の上で履いて庭へ出ると、また一興である。こうして安らかに観れることは、やはり平和な世界のお陰だろうか。
昔の大戦の罪から脱却し、二度と犯さないようにしてきた国々には、感謝の言葉は絶えない。自分の家が剣術などという殺人術を伝授しているのも、その平和な世界の秩序の安寧である。正義の名の下に許される非道を教えるというのは、心地いいものである。まるで、自分がこの世を護っていると錯覚してしまう感覚が痛快なのだ。
「人間皆兄弟、話せばわかる」というフレーズを聞いたことがある人たちは、沢山いるだろう。元は一人の人間から人類という地球が生み出した奇跡に進展したわけだから、根本的に血は繋がっているといえる。ならば、世界中の人々は国際問題やそれぞれの価値観に囚われず、この星は直ぐにでも静穏さが取り戻されることだろう。これは、誰もが願っていることだ。そしてそれが実現されることを、皆、信じて待っている。
誰もが等しく、争いの無い世界。これは理想ではなく、限りなく現実に近いモノなのだ。人が争わず、共存して生きる界にしたいという想いが、いつか明るい未来を照らす。
「嗚呼、人類よ。いつ、君たちは気付くことが出来るのだろう。そんなむさ苦しい戦いの世界から出でて、天界のような幸せの世界に住みたくはないか。ならば、気付こうぞ。そして君たちの手で掴み取ってみせよ、その幸福を。」by 士条神旭