6.変態がいないーーといいな
□月□日
体の調子は絶好調。普段薬と縁のない俺は処方された薬がてきめんに効いた。
体の調子は良いし心なしか空気が澄んでいる気がする。気分は最高だ。
まぁ、オレの機嫌が上々なのはこの所ずっと付きまとわれていた変態がここ数日姿を見せないからだ。
とうとう目を覚ましたのだろうか。きっと男を追いかける不毛さに気づいたに違いない。その証拠に変態は今日も姿を現さない。
こうなると奴との攻防は絶対に良い思い出になどならないが、社会に働きに出た時や万が一宇宙人に遭遇した時の練習位にはなったと思う。まさか相手をぶちのめしはしないが世の中の理不尽さは学べた。
我慢強さが減った気がするので一概に喜べない。
なにはともあれ、変わり映えのない日常が一番だ。
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□月□日
幸せは長くは続かなかった。何事もなかったように変態は現れたのだ。
もしかして押して駄目なら引いてみろ作戦じゃないだろうな? 引きっぱなしでいれば俺は死ぬまで忘れたまま平和に暮らせたのに。
「風邪を引いていたのですよ。……目の調子も悪かったので。寂しくさせてすいません。やはり貴方の顔を見なければ1日が始まりませんね」
目の調子? 何のことだ。目が悪いなら眼鏡でもかけてろ。寂しいとか何の冗談だ。起きながらにして寝言ほざけるとは器用な奴だ。
久々に見る変態にいつもより毒舌が強くなっている気がしないでもない。歩調を合わせて隣を歩く変態に歯に衣をつけずにいう。
しかし流石変態。何故か頬を染めこちらを見ている。
「ああーー、貴方とこうして愛の確認しているだけで僕は幸せです」
きっと多分恐らくーーーー、こいつは風邪の菌が脳内に侵入し重傷をきたしてしまったのだ。俺とこいつの見解が違い過ぎる。元からかもしれないが。
無言で久しぶりに男の急所を蹴りあげる。何時もの流れだが、ふと変態の顔を見た俺は息を飲んだ。
変態は顔を歪めながらもどこか恍惚な表情を浮かべてこちらを見ていた。
まさかーー、こいつはーーーーーー。