4.変態を観察してみた
□月□日
突然だが変態を観察してみようと思う。今までずっと殴ったり股間に蹴りを入れたりして撃退していたのだが奴は懲りずにやって来る。
このままでは何時までたっても本当の意味での撃退が出来ない。その為にも敵の情報を知るのは大事な事だ。
まず俺が奴について知っている事をあげてみようと思う。
1.変態である
2.俺の事を何かしらの手を使って調査したらしい
3.朝の登校時に現れる
4.年は同じくらい
5.男である
これだけだ。知っている情報があまりにも少ない上に大して役に立ちそうにない。
1・5については言うまでもなく、2についてはノーコメントだ。あまり考えたくない。
3については家の前にて待ち伏せが最早定番としている。家を出る時間をどんなに早めても遅くしようとも必ず家の前にいる。
ストーカーとして訴える事が出来るのではないかとも考えたが、それには男が男にストーキングされているという事を説明しなくてはいけない。
何その羞恥プレイ。
思春期のデリケートな男心にはハードルが高すぎる。警察に行くのは最終手段だ。その時は確実に変態を豚箱に叩き込む気概で行くに違いない。
「おはようございます。麗らかな朝の光に照らされた貴方は美の女神も裸足で逃げ出すであろう美しさですね。瞬きする時間も惜しいくらいです」
玄関を開けると今日も現れた変態。いつもならなるべく視界に入らないように自転車で走り抜ける所だが、今日は違う。
真っ向から対峙し頭の天辺からつま先まで観察する。
一度もカラーリングをした事がなさそうな髪は真っ黒で耳にかかるかどうかの長さだ。今時の男子学生とは一線を引くかのように制服は着崩していない。
典型的な優等生ルックである。変態だが。
身長は同じか少し俺よりも低いくらい。いつも学ランを着ている。
何よりも目を引くのはその顔だ。テレビに出ている俳優やタレントも真っ青な美形なのだ。変態の癖に。
僻みがましいコメントになるのは勘弁して欲しい。こちとら何処にでもいる、適度に制服を着崩し髪を染めた十人並みの容姿でしかない。
さすがにイケメンなど滅びればいいとまでは言わないが、変態は滅びればいいのにとは思う。細胞1つ残さずに。
「愛しい人、そんなに熱い瞳で見つめられたら僕はもう……」
気がつけば視界いっぱいに広がる変態の顔。互いの口が触れるか触れないかの距離まで近寄った所でようやく事態に気付き、形の良い鼻を目掛けて頭突きをかました。
そのままの勢いで仕上げの急所を蹴りを入れると、いつも通りその場を立ち去る。
結局、今日も変態について何も分かる事はなかった。
何かもうどうでもよくなってきた。どうでもよい訳ないのだがもう変態についての知識を増やす事が嫌だ。
「ーーーーあぁ、待って下さい!」
段々と立ち直りが速くなる変態に恐怖し殺意を覚える。このままでは俺は犯罪者になって奴より先に豚箱に入ってしまうのではないだろうか。