2011/4-5 慰鶴と蛍が愛華のもとへ ~ 涼風、宵狐のもとに慰鶴から知らせ
A
チ『…ロリロリな君と…危険な香りのする君…その後ろの影の薄そうな君は、俺と一緒に姫魅君を連れて帰る。』
パ『ロリってなによっ!!』
咲『…影の…薄そうな…』
チェンの言葉に反応する二人を後ろに、自覚のあるエルモだけが冷静に答える。
エ『蛍の兄ちゃんを止めに、俺達も行かなくていいんでしょうか?』
チ『もし、帰る途中でプーの手下に出逢ったら、援護が主の俺では、姫魅君をかばいながら闘えない。君たちが必要だ。それに…』
チェンが蛍の目を見る。
彼女は、苦しむ仲間の向こうに兄の姿を見ていた。
チ『奴は蛍ちゃん、君にしか止められないだろう。』
蛍『止めて見せます。』
蛍が力強く答える。
姫『慰鶴、蛍のサポート…』
慰『任せておけっ!!』
慰鶴が微笑むと、姫魅は安堵し、眠りについた。
慰『姫魅をよろしくお願いします。』
チ『君たちが無事に帰ることを祈る。』
* * *
力は互角。
愛華とネルは、息を切らせながらお互いを見ていた。
緊迫した空気を聞きなれた声が壊す。
蛍『愛華お兄様っ!!』
カ『蛍…ちゃん?』
力が抜け崩れるネルの身体を慰鶴が支える。
カ『慰鶴…君…』
慰『姫魅はチェンさんが連れていきました。もう大丈夫です。』
カ『ありがとう。』
ネルの笑顔は疲れきっていた。
蛍『お兄様…姫魅に何をしたのですか!!』
愛『あぁ…くっ…う…』
愛華が頭を抱え、苦しみ出す。
蛍『お兄様…?』
愛『俺…は…』
愛華の脳裏に、父と母の悲鳴が響き渡る。
血飛沫の向こうで、俺を無邪気に待つ、幼い少女。
彼女は…
愛『あ…あ…』
彼女は…
―ホタル。
愛『あああああ!!』
蛍『お兄様?』
愛『俺は…俺は…!!』
愛華の叫びに呼応し、木々が暴れだす。
蛍『愛華お兄様!!』
慰『蛍!!行くな!!』
今の愛華は何も見えていない。
無差別に周囲を破壊する木々の中心で、愛華は叫び続けている。
しかし、蛍は慰鶴に微笑んで見せると、愛華に向かって歩き出した。
カ『無意識の兄妹を想う気持ち…か…?』
動きを激しくする木々は、蛍を避けている。
蛍『お兄様…蛍が今、お側に参ります。』
木々の放つ轟音と愛華の叫びの中で、蛍が微笑んだ。
* * *
宵『涼風…迷った?』
進んでも進んでも、終わりの見えない獣道にいい加減に飽きて、ようやく宵狐が訊ねる。
涼『…方角は見失っていない。』
溜め息をこれ見よがしに吐こうと宵狐が息を吸った時だった
宵『あの鷹…。』
森の向こうを飛ぶ鷹が、真っ直ぐこちらに向かってくる。
涼『俺達を獲物と勘違いか?』
涼風が苦笑するが、違うようだ。
宵狐が腕を伸ばすと、鷹は器用に減速し、宵狐の腕に止まった。
宵『手紙…俺当て?』
"宵狐へ"と大きく書いてあるが…旅の途中、番外編で涼風には本名は明かしてある。
補足を入れる必要はないだろう。
手紙を開くと、戦闘の最中に書いたのか、所々が血に濡れている。
―至急、応援願う。慰鶴―
敵側にいる俺に手紙を送るほどの状況だと言うのか。
姫魅の身が危ないのかもしれない。
宵『頼りになる道案内が来てくれた。』
涼『悪かったな。』
宵狐が鷹を飛ばしてやると、鷹は来た道を辿り始めた。
2011/05/01 (Sun) 13:50