表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
黄金の竜  作者: ラーさん
第一章「黄金に輝けるもの」
12/73

「出会い」4

 知っていると思うけど、五年前この国の王様が亡くなった。


 ……え? 知らない? どの国だって?


 ……えーと、ここはクレルモン王国で、五年前に国王のコンラートが亡くなったんだが、これが自分の子供、王太子フォルランに殺されたんだ。王太子でも親殺しは大罪さ。それで王弟ベルトランが兵を挙げ、フォルランを攻めて敗死させた。


 ……本当に知らない?


 ……ああ、そう……。


 と、ともかくこのベルトランってのが今の王様で、オレの命を狙った奴さ。


 オレが王様に命を狙われる大層な身分になった理由ってのがオレの出生さ。お袋はこの国の片田舎ソーシルの農家の娘だった。ソーシルには王家の狩猟場があってな、そこに先の王様のコンラートが狩りをしに来て、オレのお袋もまんまと狩られちまったってわけさ。


 ……すまない、表現が悪かった。


 まあ、そういう訳でお袋は王様に見初められてオレを身ごもった。オレの本当の親父、コンラートは知らなかったらしいがね。同じ頃に王妃との間に異母兄のフォルランが生まれた。王妃は嫉妬深い性格で、結婚前の王の愛人を公衆の面前で手ずから切り刻んだそうだ。だから王様の近臣も面倒を恐れて知らせなかったんだろう。おかげでオレは生まれてすぐに死なないで済んだって話だがな。


 ……さて、こうしてお袋は未婚の子持ちとなったんだが、これでお袋は苦労した。何せ未婚の女性が父親のわからない……というか、わからないということにされた子供を連れているんだ。事情は近所じゃ公然の秘密だったそうだが、秘密が王妃にばれたら八つ裂きだ。嫁の貰い手なんてあるわけない。


 そこでお袋の両親は考えた。事情を知らない行商人に未亡人の触れ込みで娘を嫁に出してしまおうってね。行商人なら各地を転々とするから、事情を隠して生活できる。これで娘の安全も確保できるってな。


 かくて王家と農家の血を引く行商人の息子の誕生と相成った。お袋は十二年前に妹を産んでからしばらくして亡くなったが、この話は親父にも言い残さなかった。だからオレはそんな欝陶しい事情を知らずに済んで、行商人の息子として平々凡々と生きてこれた訳だ。


 ところがさっき話した五年前の王位交代劇を発端に、この欝陶しい事情をほじくり返す奴らが現れて来た……。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ