表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【悲報】僕のVRMMOアバター、レベル1のまま魔王城に無限突撃する狂戦士なんですが?【ログアウト不可】  作者: 空木 架
第7章 セーブポイントの攻防戦

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

87/103

第85話 溢れる知性

 底なしの闇へと続くかのような螺旋階段を、我らが『破壊神の信徒』一行は、黙々と下り続けていた。

 『魔王城の併願城』攻略から始まり、魔王城への突入、そしてマモルンジャーレッドとの死闘。


 遠征を開始してから、一体どれほどの時間が経過したのだろうか。

 本来であれば、併願城をクリアした時点でギルド本部へ凱旋し、勝利の美酒に酔いしれるはずだった。それがどうだ。気がつけば魔王城の中間地点までノンストップで突き進むという、ブラック企業も真っ青の強行軍となっていた。

 信徒たちの足取りは重い。鎧は傷つき、ローブはすすけ、疲労の色は隠せない。

 だが、彼らの瞳は、暗闇の中で異様な輝きを放っていた。


「……マスターについて行けば、何かが起こる」

「我々は今、伝説のただ中にいるのだ……!」


 極限状態がもたらすランナーズハイにも似た高揚感。あるいは、集団催眠に近い熱狂が、彼らの足を動かしていた。


 その先頭を行く神輿みこし(という名の狂戦士キョウ)の中で、先師京介せんし きょうすけだけは、別の種類の興奮に打ち震えていた。


(レベル100……! そして、ついに手に入れたINT(のうみそ)!!)


 ステータス画面に輝く【INT:21】の文字。初期値の「1」から、実に20倍の知能を手に入れたことになる。


(20倍だぞ、20倍。テストで1点だったやつが20点になるようなものだ。……いや、例えが低レベルすぎるか)


 とにかく、何かが変わるはずだ。

 あのマモルンジャー(レッド)が、INTを得て流暢に喋り出したように、あるいは魔法を行使したように、この筋肉ダルマにも、知性の光が宿る瞬間が必ず来るはずだ。


(頼むぞ……! 僕の受験勉強のためにも、まずは「因数分解」ができる程度の知能を見せてくれ!)


 京介が、アバターに過度な期待と無茶振りを寄せていた、その時だった。


「……おい、あれを見るニャ」


 隣を飛んでいたポヌルが、前方を指差した。

 長い螺旋階段の終わり。

 その先に広がる広大な空間の床に、毒々しいほどに鮮やかな、紅蓮の光が明滅しているのが見えた。


「おお……! あれこそが!」

「中間地点! セーブポイントだ!」


 信徒たちが歓声を上げる。

 しかし、その希望の光のそばに、招かれざる客の姿があった。


「……キシャァァ……」

「……グルル……」


 紅い光に照らし出された二つの影。

 ボロボロの甲冑、折れた戦斧せんぷ。満身創痍ではあるものの、その殺意だけはいささかも衰えていない。

 先ほどのテラスでの戦いで、キョウ(人間大砲)によってボーリングのピンのように弾き飛ばされ、奈落の底へと消えていったはずの、マモルンジャーZの残り二人――ブルーとイエローだった。


(い、生きていたのか!?)


 京介が驚愕する。

 奈落の底だと思っていた場所が、まさかセーブポイントのある中間地点フロアだったとは。

 運が良いのか悪いのか。

 敵は手負いとはいえ、こちらは疲労困憊の信徒たちと、制御不能の狂戦士だ。


(まずいな……。ここで乱戦になったら、後ろの信徒たちに被害が出るかもしれない)


 京介が警戒レベルを引き上げた、その時。

 先頭を歩いていたキョウが、突如としてピタリと足を止めた。

 そして、敵に向かって突進するでもなく、雄叫びを上げるでもなく、静かに、本当に静かに、何かを呟き始めたのだ。


「……ムグ……ル……ヌ……」


(えっ?)


 京介の思考が停止する。

 いつもの「ウガァァッ!」という獣の咆哮ではない。

 明らかに、発音と抑揚を伴った、言語らしき音声。


「……ラ……グナ……ウェ……ガ……」


(しゃ、喋ってる!? いや、日本語じゃないけど……なんだこれ? まさか、これがINT20の力なのか!?)


 京介が、その未知の言語に戸惑っていると、背後から、ガタガタと震える音が聞こえてきた。

 振り返れば、天才軍師ロジックが、眼鏡をずり落としそうになりながら、全身を痙攣させていた。


「あ、あれは……! あの発音体系……あの独特の母音の響き……! 間違いありません!」


 ロジックは、興奮のあまり裏返った声で叫んだ。


「あれは、古代シュメール語……いや、それよりも遥か以前、神代かみよの時代に使われていたとされる、失われた始原の言語ロスト・ランゲージ! まさか! マスターが詠唱しておられるッ!?」


「詠唱だとおおおお!?」


 信徒たちがどよめく。


「ついに見られるのか!? 神の究極魔法ゴッズ・アルティメット・マジックを!?」

「物理法則を書き換える、真の奇跡を!」


(そんなわけあるか! と言いたいところだけど……)


 京介は、今回ばかりはツッコミを飲み込んだ。

 なぜなら、あのマモルンジャー(レッド)も、INTを得たことで魔法「オモラシーン」を使ったからだ。

 ならば、レベル100のキョウが、INT21を得て、魔法の一つや二つ覚えていても不思議ではない!


(詠唱……! そうだ、詠唱だ! ついにこの脳筋ゴリラが、知的な魔法使いへとクラスチェンジする時が来たんだ!)


 京介の胸が、期待で張り裂けそうになる。

 その間にも、マモルンジャーの二体はこちらに気づき、復讐の炎を燃え上がらせていた。


「「キシャアアアアアアアアアッ!!」」


 ブルーとイエローが、ボロボロの体を引きずりながらも、殺意の塊となって突進してくる。

 距離、30メートル。

 キョウは動かない。ただ、ブツブツと、あの謎の言葉を紡ぎ続ける。


「……オ……モ……ヒ……ノ……タ……マ……」


 京介と信徒たちの視線が、一点に集中する。

 来る。伝説の魔法が。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ