表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【悲報】僕のVRMMOアバター、レベル1のまま魔王城に無限突撃する狂戦士なんですが?【ログアウト不可】  作者: 空木 架
第7章 セーブポイントの攻防戦

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

84/102

第82話 ゴリラと魔法1

 静まり返ったテラスには、互いに距離を取り、睨み合う二体の狂戦士の姿があった。

 一方は、最強の武器「狂戦士のナックル」により、攻撃力が文字化け(ゴリラ化)した我らがキョウ。

 もう一方は、素手になったものの、ステータスコピー能力によりキョウと互角の身体能力を持つ、セーブポイントマモルンジャーレッド


(武器がある分、こっちが有利か……? いや、油断は禁物だ。HPはまだ150程度。かすっただけで死ぬ!)


 京介が、ヒリつくような緊張感の中で次の手を模索していた、その時だった。

 遥か上空、天井のスピーカーから、あの甲高い声が響き渡った。


「フッフッフ……! 出来たぞ! ついに調整完了だ!」


 声の主は、四天王の知将(笑)、チョウ・メードだ。


「おい! マモルンジャーZ! 貴様に足りなかった最後のピース、INT(ちのう)のポイントを、システム権限で無理やり足してやったぞ!」


(……は?)


 京介の思考が停止する。


(INTを……足した?)


「これで貴様は、ただの脳筋コピーではない! 魔法を行使できる、インテリジェンスな脳筋へと進化したのだ! さあ、その新たな力で、その薄汚いゴリラを始末してしまえ! なる早でよろしく!」


(ふざけるなあああああああああああっ!!!!)


 京介の魂の絶叫が、魔王城のテラスに木霊した。


 恐怖ではない。

 殺意でもない。

 それは、純度100%の、ドス黒い「嫉妬」だった。


(INTを足すってなんだよ! なんだその羨ましすぎる技術は!? 僕が! 僕がどれだけそのステータスを渇望していたと思ってるんだ! レベル100目前になってもなお、INT(のうみそ)初期値【1】の僕の悲しみが、お前に分かるか! ずるい! 僕にもくれ! そのポイントをよこせ! むしろ今すぐ僕のSPDと交換してくれ!)


 京介が、敵のパワーアップに対して、危機感よりも先に「羨望」で身悶えしていると、レッドの様子が明らかに変化した。

 獣のような構えを解き、スッ、と背筋を伸ばしたのだ。その瞳には、先ほどまでの野性味に加え、どこか理知的な光――受験会場で難問に挑む優等生のような冷徹な輝き――が宿っているように見える。


(くそっ……! 本当に賢くなってやがる……!)


 レッドは、賢そうにバックステップで軽やかに距離を取った。そして、何やらブツブツと口の中で唱え始めた。

 詠唱だ。


(魔法……! 本当に使えるのかよ!)


 京介の嫉妬は、焦りへと変わる。

 このアバターには、魔法防御力なんて概念は存在しない。物理防御ですら紙同然なのだ。魔法なんて喰らったら、蒸発して原子レベルで分解される未来しか見えない。


(くそっ!! どうしたらいいんだ! 距離を取られたらこっちは攻撃する術がないじゃないか! 遠距離攻撃手段なんて、小石を尻尾で投げるくらいしかないぞ!)


 京介が、脳内で床を転げ回りながら対策を練っていると、彼の焦りなどどこ吹く風、我らが狂戦士キョウが、不敵に鼻を鳴らした。


「ウガガガァァァ!」


 その雄叫びを聞いたポヌルが、いつものように、すかさず前に出て翻訳を入れる。


「『魔法が何だというのだ! この俺をそんなチンケな子供騙しで倒せるわけがなかろう! 小細工など無用! 正面から叩き潰してくれる!』……と、マスターは申しておられるニャ!」


(言ってない! そして全ての魔法使いに謝れ! 魔法は子供騙しじゃない! 物理法則を書き換える立派な学問体系〈ファンタジー的な意味で〉だ!)


 京介のツッコミが脳内に響き渡る中、後方で見守る信徒たちは、ポヌルの言葉に沸き立った。


「おお! 頼もしい!」

「流石は我らがマスター!」

「魔法など、筋肉の前には無力!」


 ロジックも、眼鏡を光らせて頷く。


「……左様。魔法とは、所詮は物理法則の書き換えに過ぎない。対してマスターの筋肉は、物理法則そのもの。いや、物理法則すらねじ曲げる特異点。概念として、どちらが上かは明白です」


(何が明白なんだよ! 物理法則を書き換える方が強いに決まってるだろ!)


 京介が頭を抱えている間に、キョウは、有言実行とばかりに地面を蹴った。

 SPD(はやさ)カンスト(デバフあり)の突進。

 しかし、相手もさるもの。距離を取っていたレッドの詠唱が、キョウが間合いに入る直前で完了した。


「オモラシーン!!」


(……はい?)


 京介の耳が、そのあまりにも緊張感のない、ふざけた呪文名を捉えた。


 オモラシーン?

 お漏らし?


 しかし、その間抜けな名前とは裏腹に、現象は凶悪だった。

 レッドの手のひらから、極限まで圧縮された超高圧の水の刃が、水平に、扇状に解き放たれたのだ!


 ビシュウウウウウウッ!!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ