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【悲報】僕のVRMMOアバター、レベル1のまま魔王城に無限突撃する狂戦士なんですが?【ログアウト不可】  作者: 空木 架
第7章 セーブポイントの攻防戦

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第81話 ゴッド・ドレインバインド

「ウガァァァァァァァァッ!!」

「キシャアアアアアア!!」


 神速の攻防が嘘のように、戦いは突如として、あまりにも原始的なレスリングへと移行していた。

 狂戦士キョウは、HPが残りわずか(131/2150)という瀕死の状況にもかかわらず、本能のままにレッドの首すじに噛みつき、さらにその巨体から繰り出される丸太のような腕で、相手の胴体をギチギチと締め上げ始めたのだ。


 ギチギチギチギチ……!


 それは、もはや戦闘ではなかった。

 ただの、獣による捕食行動。

 あるいは、小学生男子が休み時間にじゃれ合う、プロレスごっこの最終局面。

 その、あまりにも泥臭く、そしてあまりにも生々しい光景を、後方で見守っていた信徒の一人、リアリーは、両手で自らの口を覆い、恍惚とした表情で打ち震えていた。


(だ、ダメよ……! ダメ……!)


 彼女の脳内は、先ほどまでの「ロジック様♡」という思考から、全く別の回路へと切り替わっていた。


(マスターは、ロジック様だけのものなのに……! あんな、自分とそっくりなだけの、ぽっと出のコピー野郎なんかに、あんな密着を許して……! でも……!)


 リアリーの腐りきった脳内で、新たな可能性の扉が、パッカーンと開く。


(……いや、むしろ、これは……アリよ! この、野獣vs野獣の、力と力がぶつかり合う、この背徳的な絡み! これを、あえてロジック様に見せつけることで……! そう! ロジック様の嫉妬心に火をつけて、最終的にあの二人(キョウ×ロジック)は、さらに燃え上がる! なんてこと! マスターは、そこまで計算して、あえてあのコピー野郎を抱きしめているのね!? ああ……! なんて深遠なトライアングル! 尊すぎて辛い……!)


 京介は、リアリーがそんな壮大な昼ドラ(BL風味)を脳内で繰り広げていることなど知る由もなく、ただ、アバターの内部で、この地味すぎる攻防に、別の意味で手に汗を握っていた。


(いける! ダメージは入ってるぞ!)


 キョウの締め付けと噛みつきが、レッドにジワジワと、本当にジワジワとダメージを与えていた。


【HP:2149/2150】

【HP:2148/2150】

【HP:2147/2150】


(しょっぼ! ダメージしょっぼ! 1秒間に1ダメージって! 鉄壁狂戦士戦のゴリラナックル〈2000ダメージ超〉と比べたら、天と地どころの差じゃないぞ!)


 だが、同時に、キョウのHPもまた、ジワジワと回復していた。

 あの鉄壁狂戦士から吸収したと思われるオートヒールが、発動しているのだ。


【HP:132/2150】

【HP:133/2150】

【HP:134/2150】


(こっちの回復も、しょっぼ! スリップダメージと回復量が、完全に一緒じゃないか!)


 京介が、そのあまりにもスローな逆転劇(?)にツッコミを入れていると、天才軍師ロジックが、その光景を羊皮紙片手に、もはやお約束となった真剣な考察を始めていた。


「……! なんと! あの締め付けで、相手のHPを物理的に絞り出し、その首筋から、生命力そのものを直接吸い取っているというのか!? このゲームには、あのような物理ドレイン技術が隠されていたとは……! いや、この様な常識外れの技術に気付き、即座に実戦投入できるのは、マスターをおいて他にいない! 凄まじい……! これぞ神の拘束吸収ゴッド・ドレインバインド!」


(違う! ただの野生の噛みつきと、雀の涙のオートヒールが、奇跡的に同時に発動してるだけだ! アホのマリアージュだよ! かっこいい名前をつけるな!)


 京介がツッコミを入れる中、リアリーは、そんなロジックの真剣な横顔を見ながら、さらに妄想を加速させていた。


(ああ……♡ ロジック様ったら、嫉妬心を隠そうと、平静を装って、いつも通り考察なんてしちゃって……。本当は、マスターが他の男〈?〉とあんなに密着してるのを見て、気が気じゃないくせに……! お可愛いこと♡)


「もう誰もかれも、この戦いをまともに見てないニャ」


 ポヌルは、どこから取り出したのか分からない漫画を読みながら、自分の事は棚に上げて、この絶望的に混沌とした状況に呆れかえっていた。


 オートヒールによる回復は、雀の涙にも程があった。

 HPは140……141……と増えていくが、このペースでは、全回復するまでに何分かかるか分からない。

 そして、その膠着状態は、唐突に破られた。


「キシャアアアアアアアアアッ!!」


 締め付けられていたレッドが、ついに業を煮やしたのか、手にしていた戦斧せんぷを放り捨て、空いた両手を使って、渾身の力でキョウの腕を無理やり引き剥がしたのだ。

 二体の巨体が、再び距離を取り、睨み合う。


(まずい! 振りほどかれた!)


 京介は、再び紙装甲での即死の恐怖に直面し、ゴクリと唾を飲んだ。

 だが、一つだけ、状況が変わっていた。

 相手は素手。キョウにはナックルがある。

 そして、視界の端に表示されたステータスが、その残酷なまでの格差を物語っていた。


【レッド STR:999】

【キョウ STR:⚆•̫͡•⚆】


(単位が違うんだよ!)


 攻撃力なら、間違いなくキョウが上だ(たぶん)。

 だが、一撃でももらえば、こっちが終わる。HPは、いまだ200にも満たないのだから。


(誰か! 誰か回復してくれよ! ロジック! あんたが『騎士道に反する』とか、ワケの分からないことを言ったからだろ! 早くヒーラーに指示を出してくれ!)


 京介は、アバターの内部で、後方で見守る信徒たちに向かって、強く、強く、念を送るのであった。

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