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【悲報】僕のVRMMOアバター、レベル1のまま魔王城に無限突撃する狂戦士なんですが?【ログアウト不可】  作者: 空木 架
第7章 セーブポイントの攻防戦

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第80話 神の騎士道

「キシャアアアアアア!!」

 二体の仲間を奈落の底に突き落とされ、レッド(仮名)は、明らかにブチ切れていた。

 残るは、レッド一体。

 対するは我らが狂戦士キョウ。


(一対一。そしてステータスは互角。だが、こっちには、「精密操作用マニュピレーター」と化した、僕の尻尾がある! これなら勝てるぞ!)


 アバターの内部で、先師京介せんし きょうすけの脳は、この絶望的な状況下で、奇跡的に勝利への活路を見出した、まさにその時だった。


「ウガァァッ!」

「キシャアアアッ!」


 キョウとレッドは、まるで示し合わせたかのように、ほぼ同時にお互いに向かって突進を開始した。

 レッドが振り下ろす巨大な戦斧せんぷと、キョウが握りしめた狂戦士のゴリラナックルが交差する!


 ガキィィィン!!


 凄まじい火花が散り、甲高い金属音がテラスに響き渡る。

 力は、やはり互角。両者ともに一歩も引かない。


(これならどうだ!)


 京介は、この膠着状態を打破すべく、進化した尻尾を、まるで蛇のように滑らかに動かし、レッドの足元を薙ぎ払った。


 シュバ!


 レッドが、京介の尻尾による足払いを、高く跳躍して、軽々と回避した。


(くそ! 避けられた!)


 しかし、その隙を、キョウの本能が見逃すはずはなかった。

 ジャンプ中で、回避行動が取れないレッドの腹部目掛けて、キョウが、STR(きんにく)ゴリラの、強烈な拳を放った。


(よくやった! これでおしまいだ!)


 京介が、勝利を確信した、その時だった。


 ガキィン!


 レッドは、空中で、キョウの拳を器用に戦斧の柄で受け止め、その勢いを殺すどころか、逆に利用して、キョウ目掛けて戦斧を振り下ろした。


(しまった!)


 京介がそう思った時はもう、時すでに遅しだった。

 キョウのパンチの威力が乗った戦斧が、キョウの肩目掛けて落ちてくる。


 ジャリィィ!!


 戦斧は、キョウの肩をかすめて、地面に深い亀裂を作った。

 そして、京介の視界に、絶望的な数字が表示される。


【HP:130/2150】


(うお! 危なかった! ていうか、HP、ほぼ全部持ってかれたじゃないか!)


 レッドが、ニヤリと口の端をつり上げたのが見えた。

 何とか即死は免れたが、次に少しでも攻撃を受けたらおしまいだ。あの悪夢のレベル1リセットだ。


「マスターに回復魔法を!」


 後方で戦況を見守っていた信徒の一人が、慌てて叫んだ。


(そうだ、早く回復してくれ!)


 京介が、その声に希望を抱いた瞬間、天才軍師ロジックが、そのヒーラーの前にスッと立ちふさがり、厳かに首を横に振った。


「……いや! マスターは正々堂々と、一対一の勝負をしておられるのだ。いま回復魔法をかけるのは、この神聖なる戦いに水を差す行為となる! マスターの騎士道に反するだろう! マスターがあの敵を倒すまで、回復は待つのだ!」


(なんでだよ! モンスターとの戦いで、騎士道なんて必要ないだろ! すぐに回復して下さい! 僕の人生がかかってるんだよ!)


 京介の魂の絶叫も虚しく、キョウが止まることはなかった。

 HPが残りわずかになったことなど気にすることもなく、猛々しく咆哮を上げると、再度レッドに向かって突進し始めた。


(ちょっと待て! 一旦仲間に回復してもらうまで距離を取れよ、この脳筋ゴリラァ!)


 ガシィ!!


 京介が、切実な叫びを上げていると、意外なことにキョウがレッドに掴みかかった。


(そうか! 接近してしまえば、あのデカい斧は使えないもんな! 珍しく頭を使ったぞ、このゴリラ!)


 京介が、キョウの意外な知性(?)に感心していると、キョウは、組み合ったまま、おもむろに、レッドの首すじに噛みついた。


(頭使ったんじゃないのかよ! ただの獣の本能だったのかよ!)


 京介がツッコミを入れた、まさにその時。

 キョウがレッドに噛みついている、そのキョウの体が、ふわり、と淡い緑色の光に包まれた。


(こ、これは! あの時の! 鉄壁狂戦士が使ってたオートヒール!? あのステータスと一緒に、スキルも吸収してたのか!?)


 京介の胸に、希望という強い光が灯った。そうだ、これさえあれば!

 ポンッ、と軽快な音を立てながら、メッセージが表示された。


【HP1回復】


(なんでだーーーー!!)


 京介は、アバターの内部で、天を仰いだ。

 INT(のうみそ)MP(知性の証)が最低値のままのキョウにとって、オートヒールは宝の持ち腐れなのであった。

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― 新着の感想 ―
面白いジャンルで、楽しみながら読ませていただいております。 涼介くんが受験前なのにログアウトできなくなるという苦痛に同情してしまいます。受験までに間に合えばいいですが・・・。
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