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【悲報】僕のVRMMOアバター、レベル1のまま魔王城に無限突撃する狂戦士なんですが?【ログアウト不可】  作者: 空木 架
第6章 神の実力

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第71話 狂戦士の死闘

「ウガァァァァァァァァッ!!!」

「グオオオオオオオオオッ!!!」


 二体の獣が、同時に、それぞれの雄叫びを上げた。

 先師京介せんし きょうすけが、アバターの内部で「会話という概念は無いのかよ、お前ら!」とツッコむ暇もなく、二つの巨体が、狭い通路で真正面から激突した。

 いや、正確には、激突したのは一体だけだった。


 シュバババババババババッ!


 キョウの姿が、消えた。

 SPD(はやさ)カンスト、レベル99。そのスペックは、もはやこのゲームの物理演算すら置き去りにする。

 敵の狂戦士が、その鈍重な巨体で「グオ?」とターゲットを見失った、まさにその刹那。

 キョウは、既に相手の懐に潜り込み、STR(きんにく)カンストの拳を、残像が見えるほどの速度で叩き込んでいた。


 ドガガガガガガガガガガガガガガッ!!!


 それは、もはや打撃音ではなかった。

 あまりの高速連打が、大気を震わせ、一つの轟音を生み出している。


(やったか!? これだけ殴れば、いくらなんでも!)


 京介が、自らのアバターの制御不能な圧倒的火力に、一瞬だけ希望を抱いた。

 しかし、その希望は、砂埃が晴れた先に表示された、無慈悲な数字の羅列によって、木っ端微塵に粉砕された。


【0】

【0】

【0】

【0】

【0】

【0】


(嘘だろおおおおおおおおっ!?)


 京介は絶叫した。

 レベル99! STR(きんにく)カンスト!  その、この世の全てを粉砕できそうなステータスをもってしても、ダメージが、ゼロ!?


「グオ……?」


 相手の狂戦士は、まるで「腹筋ローラーでも当てられたかな?」とでも言いたげに、小首を傾げただけだった。ダメージは一切ない。

 それもそのはず。

 ポヌルの分析通り、相手はVIT(たいりょく)DEF(かたさ)に全振りした、究極の「受け」特化型狂戦士。キョウのカンストした攻撃力すら、その圧倒的な防御力が、完璧に相殺してしまっているのだ。


「グオオオオオオッ!」


 狂戦士が、ようやく目の前の敵を認識し、そのトゲ付きのナックルを装備した右拳を、ゆっくりと、しかし確実に、キョウに向かって振り上げた。


(まずい!)


 京介の脳裏に、ポヌルの「一撃で即死もあり得るニャ」という、悪夢の宣告が蘇る。

 キョウの防御力はレベル1の初期値のまま。文字通りの《紙装甲》だ。

 京介は、全神経を、進化した尻尾に集中させた。


(ここで避ける!)


 敵の拳が振り下ろされる、そのコンマ1秒前。

 京介は、尻尾の先端に巻き付いたトゲを、まるで精密機械のように操作し、相手のナックルの、軌道の基点となる手首の関節部分を、ピンポイントでしたたかに打ち据えた!


 ビシィッ!


「グオッ!?」


 ナックルの軌道が、わずかに逸れる。

 キョウの頬を、数ミリの差で掠め、重い拳が空を切った。


(よしっ! 完璧だ!)


 京介は、自らの超絶技巧ファインプレーに内心でガッツポーズを決めた。


「ウガァ!」


 しかし、キョウは、そんな京介の苦労など知る由もない。

 彼は、ただ「殴り返す」という本能に従い、再び高速の拳を叩き込み始めた。


 ドガガガガガガガガガッ!


【0】

【0】

【0】


(だから、ダメージは通らないんだってば!)


 京介は、アバターの内部で頭を抱えた。

 キョウが殴る。敵が殴り返す。京介が尻尾で必死に軌道を逸らす。キョウがまた殴る。

 あまりにも不毛な、永久機関が完成してしまっていた。


(ダメージが通らない! ポヌル! 何か良いアイディアはないか!? このクソゲーの仕様に詳しいお前なら、何か知ってるだろ! このままじゃジリ貧だ! こっちの尻尾の集中力が切れた瞬間に、即死だぞ!)


 京介が、唯一まともな会話ができる相棒に助けを求めると、ポヌルは、通路の隅で安全を確保しながら、大きなあくびを一つして、こう言い放った。


「なんにも思いつかないニャ。戦闘を楽しむといいニャ。頑張るニャ」


(くそっ! この役立たず猫! こっちは命がけで戦ってるんだ、楽しめるか! 装備品の差が大きすぎるんだよ!)


 京介は、悪態をつきながらも、再び敵のナックルを尻尾で弾いた。

 すると、キョウの連打が、またしても轟音を立てて炸裂した。


 ドガガガポヨガガガッ!!!


(……ん?)


 京介の耳が、今、明らかに聞き流してはいけない、間の抜けた効果音を捉えた。


(……ポヨ?)


 ドガガガポヨガガガポヨガガガガッ!!!


(やっぱりだ! なんか、殴る音に混じって、「ポヨ」って音が鳴ってる! なんだよ、その緊迫感をぶち壊す効果音は! こっちは命がけで即死攻撃を捌いてるんだぞ!)


 京介が、このクソゲーのセンスに再び絶望していると、ポヌルが、まるで「ああ、またか」とでも言いたげに、冷静に解説を始めた。


「これは多分バグだニャ。多分、スライムか何かの音でも拾ってきちゃってるんだニャ。何度か連続で攻撃を当てたときの、連続技の効果音が間違ってるニャ」


(いちいちしまらないゲームだな! こっちのシリアスな覚悟を返せ!)


 京介のツッコミも虚しく、キョウは「ポヨポヨ」と間の抜けた音を鳴らしながら、ひたすらに【0】ダメージを刻み続ける。

 このままでは埒が明かない。


(こうなったら、僕も攻撃に参加するしかない!)


 京介は、決意を固めた。

 敵の攻撃を尻尾で捌き、体勢を崩したその一瞬。京介は、尻尾に巻き付いたローズアーミーの鋭いトゲを、敵の狂戦士の腹部に叩きつけた!


(これならどうだ!)


 キィンッ!


 甲高い金属音。

 尻尾の先端が、敵の腹部表面に届いた瞬間、甲高い金属音が鳴り響き、あのローズアーミーの硬いトゲが、あっさりと砕け散った。


(硬っ!? 僕の唯一の攻撃手段も無効化かよ!)


 尻尾に、痺れるような衝撃が走る。

 京介が、自らの攻撃が防がれたことに驚愕し、一瞬だけ、防御の意識が疎かになった。

 その、コンマ1秒にも満たない隙。

 それを見逃すほど、相手の狂戦士は甘くなかった。


「グオッ!」


(しまった!)


 京介が気づいた時には、既に遅かった。

 防御を潜り抜けた敵の左拳(即死の一撃)が、キョウのこめかみに向かって、確実な軌道で迫ってきていた。

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