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【悲報】僕のVRMMOアバター、レベル1のまま魔王城に無限突撃する狂戦士なんですが?【ログアウト不可】  作者: 空木 架
第6章 神の実力

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第70話 狂戦士

 破壊神の信徒一行は、動かなくなった床を渡り終え、通路の先へと進み始めた。

 通路は、相変わらず黒曜石のような壁で覆われ、ジメジメとした空気が漂っている。

 やがて、L字型の曲がり角に突き当たった。道は右に続いている。


(よし、順路は右だな。さっさと進んで、早くセーブポイントに……)


 京介がそう思った、まさにその時だった。

 先頭を歩いていた狂戦士キョウが、ピタリ、と足を止めた。

 そして、右の順路には一切目もくれず、正面の「行き止まりの壁」に向かって、おもむろに拳を振り上げた。


 ゴッ!


(またかあああああああああ!!)


 京介の魂の絶叫が、脳内に木霊こだまする。


(なんでお前はいつもいつも、順路を無視して、関係ない壁を殴り始めたりするんだよ! 右だ! 右が順路なんだよ! 壁と会話するのはもう十分だ!)


 京介が、もはやお約束と化したキョウの奇行にツッコミを入れていると、隣を飛んでいたポヌルが、ふむ、と顎に前足を当てて、真剣な表情で壁を見つめた。


「……何か、壁の向こう側に、強い反応があるみたいニャ」


(反応? また隠し部屋か? もういいよ、そういうの! こっちは最短ルートでクリアしたいんだよ!)


 京介が、ポヌルの意味深なセリフに、さらなるイライラを募らせていると、右の通路を先行していた男が、間の抜けた声を上げた。

 マスター護衛隊長、チョットツだ。


「あれ? ロジック殿! なんか、天井から紐みたいなのがぶら下がってますぜ? なんだこれ?」


 チョットツは、天井から垂れ下がっていた、どう見ても「引っ張ってください」と言わんばかりの古びた紐を、何の躊躇もなく、その屈強な腕で、思い切り引っ張った。


(やめろ、馬鹿ーーーーーーっ!!!! その紐は! その紐は絶対に『お約束』のやつだ!)


 京介の絶叫は、轟音にかき消された。


 ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴッ!!


 突然、キョウが立っていた場所を中心に、床と壁が、地響きを立てながら、時計回りに180度、高速で回転を始めたのだ!


「「「うわあああああああっ!?」」」


 信徒たちの悲鳴が響き渡る。

 キョウが殴っていた正面の壁と、左側の壁が、回転しながら通路を分断し、代わりに、今までキョウたちの「後ろ」にあった空間が、新たな通路として目の前に現れた。

 そして、その回転に巻き込まれたチョットツが、壁と壁の隙間に、見事に挟まれていた。


「ぐおおおっ!? は、挟まった! ……おお! この、左右から締め付けられる圧迫感! これはこれで……いや、むしろこれがいい!!!」


(良くないわ! なに喜んでんだよ、このドM!)


 京介のツッコミも虚しく、回転した壁は完全に停止し、パーティーは無慈悲にも三つに分断されてしまった。

 通路の右側に先行していた、チョットツとガンジョー。

 回転した壁の向こう側、つまり、元の通路に取り残された、ロジックとリアリーを含む、その他の信徒たち。

 そして、回転した床と共に、新たな通路へと強制的に移動させられた、キョウ&京介とポヌル。


(最悪だ……! この制御が効かないアバターじゃ戻りようがない!)


 京介が、自らの不運を呪った、その時。

 キョウとポヌルが、同時に、新たな通路の奥に佇む「何か」の気配に気づき、足を止めた。

 暗闇の奥から、ゆっくりと姿を現したのは、一体の人影。


 筋骨隆々の巨体。獣のような鋭い目つき。そして、あらゆる理性を母親の胎内に置き忘れてきたかのような、野性的な風貌。


(……キョウと、似てる……)


 京介が、そのあまりにも見慣れたシルエットに、強烈なデジャヴを感じていると、隣でポヌルが、ゴクリと唾を飲む音が聞こえた。


「あ、あれは……。なんで、こんな近くにいるニャ……」


(ポヌル、何か知っているのか!? あれは一体……)


 京介が、ポヌルに問いかけようとした、その言葉が終わるよりも早く。

 狂戦士キョウが、動いた。

 自分と酷似した存在を「敵」と認識したのか、あるいは、ただの縄張り争いか。

 理由は分からない。

 だが、キョウは、SPD(はやさ)カンストの、もはや不可視の突進を敢行した。


「ウガァァァァァァァァッ!!!」


 シュバッ!


 キョウの姿が、一瞬で消える。

 次の瞬間、通路の奥で、凄まじい衝撃音が響き渡った。


 ドゴォォォォォン!!!


 STR(きんにく)カンストの拳が、相手の顔面にクリーンヒットした。

 一撃必殺。

 レベル99のキョウの一撃だ。どんな敵だろうと、これで終わる。

 京介がそう確信した、次の瞬間。

 相手もまた、キョウよりもスピードは遅いが、質量を乗せた、パンチを返してきたのだ!


(なっ!?)


 京介は、咄嗟に、進化した尻尾に全神経を集中させた。

 精密操作用マニュピレーターと化した尻尾が、鞭のようにしなり、相手の拳を、下から完璧なタイミングで打ち上げた!


 バシィッ!


 相手の拳が、わずかに軌道を逸れ、キョウの頬を掠めて空を切る。

 それと同時に、京介の視界に、相手の名前が、くっきりと見えた。


【狂戦士】


(狂戦士!? キョウと同じ種族!? どういうことだ!?)


 京介が驚愕していると、相手の狂戦士が、再び重い拳を繰り出してきた。

 キョウは、今度はそれを、SPD(はやさ)カンストの超高速ステップで、紙一重で後ろに飛んで躱し、距離を取った。


(何なんだ、あいつは! 狂戦士は、キョウ以外にもいたのか!?)


 京介の混乱に、ポヌルが、苦々しい表情で答えた。


「そ、そうみたいだニャ。……動きを見たところ、キョウとは違うステータスビルドをしているニャ。多分、VIT(たいりょく)と、DEF(かたさ)に全振りの、鈍重戦車タイプだニャ」


(VITとDEF全振り? じゃあ、さっきのパンチは重そうだったけど、攻撃力自体は、大した事無いか)


 京介が、少しだけ安堵しかけた、その時。ポヌルが、その甘い観測を、即座に否定した。


「いや、よく見るニャ。あの拳に装備している、トゲトゲのついたナックル。あれは、攻撃力がかなり上がる、狂戦士専用装備だニャ。防御力を捨てたキョウが、まともに喰らえば、一撃で即死もあり得るニャ。油断は出来ないニャ」


 ポヌルの言葉通り、相手の狂戦士は、キョウの先制パンチを顔面に受けながら、一歩も引いていなかった。VIT(たいりょく)DEF(かたさ)に全振りした、圧倒的な耐久力。

 そして、キョウと同じ、野生の闘争本能。

 二体の狂戦士が、互いに距離を取り、睨み合う。


 レベル99、STR(きんにく)SPD(はやさ)カンストの、超高速アタッカー、キョウ。


 レベル??、VIT(たいりょく)DEF(かたさ)カンストの、超耐久ヘビータンク、狂戦士。


 相反するステータスビルドの、二体の「狂戦士」が、今激突しようとしていた。


「ウガァァァァァァァァッ!!!」

「グオオオオオオオオオッ!!!」


 二体の獣が、同時に、それぞれの雄叫びを上げた。

 そして、互いに向かって、猛然と突進を開始した。


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