表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【悲報】僕のVRMMOアバター、レベル1のまま魔王城に無限突撃する狂戦士なんですが?【ログアウト不可】  作者: 空木 架
第6章 神の実力

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

68/101

第66話 腐った疑惑の眼差し

 あたしはリアリー。この『破壊神の信徒』において、数少ない女性プレイヤーの一人。


 青白く照らされたキョウの背中を見つめながら、あたしは心の中で呟いた。


 あたしがここまでついてきたのは、破壊神サマへの信仰……なんていうのは建前で、ぶっちゃけロジック様目当て。何をやらせてもカンペキ、アタマが良くて、声も渋いし、ヴィジュアルもパーフェクトな紳士。超イケメン。超推せる。もう存在が尊い!


 あたしは、マスターの隣で思案顔をしているロジックに熱っぽい視線向けた。

 それに比べて、マスターは……まあ、強いのは認めるけど、ヴィジュアルはいまいちだし、いつも「ウガァァ」しか言わないし、正直ちょっとアレよね。……でも!


 あたしの脳内で、危険なスイッチが入る。


 あの完璧超人なロジック様が、言葉も通じない野獣のようなマスターに絶対の忠誠を誓っていて、しかもその行動を全て「深淵な思考の結果」だって肯定してあげる関係性……!

 これよ! この『忠実な執事×野生児主人』のカップリングを想像すると、もうゾクゾクしちゃうの! それが、この過酷なクエスト進行における、あたしの唯一の癒し!


 あたしは、腐った視点で二人の関係性を勝手に補完し、一人で悶えていた。だが、そんなあたしの信仰心(?)にも、最近、小さなヒビが入り始めていた。


 でも……最近、あたしはマスターに、ちょっとだけ疑いを持ち始めたのよね。

 ロジック様は「全て計算通り」って仰るけど、あの人、本当に天才なの?

 さっきのオーブだって、普通に触ればいいだけなのに殴り壊したし。結果的にレベル99になったから良かったものの、あれ完全にギャンブルだったじゃない?

 もっとこう、スマートに、合理的に魔王を倒すルートがあるんじゃないかしら……?



 リアリーの、極めて真っ当な(しかし動機は不純な)疑惑の眼差し。

 それを知る由もない「破壊神」は今、自身の体に溢れる制御不能なパワーに振り回されていた。


(速い! 速すぎる! ちょっと首を動かしただけで、視界がブレる!)


 先師京介せんし きょうすけは、レベル99になり、STR(きんにく)SPD(はやさ)が共にカンストしたアバターの、あまりのレスポンスの良さに酔いそうになっていた。

 キョウが、次へ進む道を探してキョロキョロと辺りを見回す。

 たったそれだけの動作が、残像が発生するレベルの高速首振り運動となって、周囲の空気を切り裂く。


 シュンッ! シュンッ!


「お、落ち着いてくださいマスター! そんなに高速で周囲を警戒なさらなくても、敵はいません!」


「さすがマスター、我々には見えない何者かと戦っておられるのか……!」


(違う! ただ道を探してるだけだ! SPDが上がりすぎて、首の筋肉の制御が効かないんだよ!)


 京介の悲鳴など露知らず、ロジックが冷静に辺りを見渡し、ある一点を指差した。


「マスター。あそこの扉しか、行ける場所はありませんね」


 この体育館のような広い空間には、入ってきた水路以外には、壁面に設置された金属製の扉が一つあるだけだった。

 一行は、水路に架かった、近代的な金属製の橋を渡り、その扉へと近づいた。


 ウィィィン……。


 扉の前に立つと、低い駆動音と共に、扉が自動で左右にスライドした。


「じ、自動ドアだと!?」


「魔王城に、このようなハイテクな設備が……!?」


 信徒たちが驚愕する中、ガンジョーがゴクリと唾を飲み込み、キョウに声をかけた。


「マスター……こ、この未知の扉、いかがなされますか? 罠の可能性も……」


(いや、行けって言われても、これしか道がないなら行くしかないだろ……)


 京介がそう思うよりも早く、キョウは躊躇うことなく、その開いた扉の中へと足を踏み入れた。


 シュパッ!


(速っ!?)


 一歩踏み出したと思ったら、次の瞬間にはもう部屋の中央にいた。SPDカンストの移動速度、恐るべし。

 皆も、慌ててキョウの後を追い、部屋の中に入る。

 そこは、一行全員がギリギリ入れる位の、狭い金属製の小部屋だった。

 出口は他にない。完全な袋小路だ。


「……行き止まり、ですか?」


「いや、待て。あれを見ろ」


 ロジックが、部屋の壁面に取り付けられた、ある装置に目を留めた。

 それは、いくつもの四角いボタンが縦に並んだ、コンソールパネルだった。

 各ボタンの横には、この世界の言語ではない、奇妙な記号――おそらくは数字――が刻まれている。


「これは……恐らく、エレベーターでは?」


 ロジックの推測に、京介は心の中で深く頷いた。


(どう見てもエレベーターだね。しかも、かなり近代的なやつ。……ていうか、ここ魔王城の地下だよね? 世界観どうなってんの?)


 ロジックが、興味深そうに一番上のボタンに触れようとした、その時。

 キョウが「ウガッ!」と短く吠え、適当なボタンを、その高速の拳で叩いた。


 バシィッ!


(ちょっ! お前、また適当に!)


 キョウが押したのは、上から三番目のボタンだった。

 その瞬間。


 プシュゥゥゥン……。


 部屋の入り口が、自動的に閉じた。

 完全に密室となった小部屋の中で、信徒たちが少し不安そうに身を寄せ合う。


「へ、閉まったぞ……!」


「大丈夫なのか……?」


 次の瞬間。


 ゴゥゥンン!!!


 凄まじい重低音と共に、床下から強烈な突き上げが襲ってきた。


「うおっ!?」


「きゃあっ!」


 全員の体が、G(重力加速度)で床に押し付けられる。

 エレベーターは、猛烈な勢いで「上」に向かって動き出したようだ。

 だが、その加速は、明らかに普通のエレベーターのそれではない。


(速い! 速すぎるって! これ、中の人間がミンチになる速度じゃないか!?)


 ロジックがバランスを崩して、キョウの上に(あたかも計算したかのように)のしかかった。



 あたしは、床に這いつくばりながらも、熱っぽい目で、ロジックとキョウを見つめていた。


(この密室……! 急加速による吊り橋効果……! これは、何かが起こる予感……!)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ