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【悲報】僕のVRMMOアバター、レベル1のまま魔王城に無限突撃する狂戦士なんですが?【ログアウト不可】  作者: 空木 架
第5章 伝説への道

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第53話 最後の謎と巨大な扉

 謎解き(物理)によって庭園の壁が開かれ、一行は『知恵の森』のさらに奥へと足を踏み入れていた。信徒たちは、キョウによる奇跡的なテーブル破壊を目の当たりにし、その興奮冷めやらぬ様子で騒いでいる。


「見たか! マスターの『一撃解法』!」


「数列? 祭壇? そんな回りくどいものは不要! ただ破壊あるのみ! これぞ神髄!」


(違う……あれはただの癇癪かんしゃくだ……)


 先師京介せんし きょうすけは、アバターの内部で深いため息をついた。自分の緻密な計算も、ロジックの衒学的げんがくてきな知識も、チョットツの奇跡的な勘違いも、全てあの脳筋の一撃で吹き飛ばされたのだ。知性への冒涜も甚だしい。

 森の奥は、相変わらずモンスターの巣窟だった。しかし、レベル60越えの精鋭部隊にとっては敵ではない。ガンジョーが前線を支え、後衛の魔法が炸裂する。


【EXP:500を獲得しました!】


【EXP:700を獲得しました!】


 京介の視界には、着実に経験値獲得のログが流れていく。キョウ自身は戦闘にはほとんど参加せず、ただ先頭を「ウガウガ」言いながら歩いているだけだが、パーティーメンバーが倒した経験値の一部は、なぜかキョウにも分配されているらしい。この世界の経験値システムも、だいぶガバガバのようだ。


【キョウのレベルが48に上がった!】


【STRに全ポイントを割り振りました】


(よし……!)


 京介は内心でガッツポーズを決める。お約束のSTR全振りだが、今はそれでいい。着実にレベルは上がっている。

 さらに森を進むと、再びモンスターの群れが出現した。今度は少し手強い相手のようだ。信徒たちが苦戦を強いられる中、京介はここぞとばかりに尻尾を駆使する。敵の足元に小石を弾き飛ばして転倒させ、背後からトゲ付きの尻尾で殴打し注意を引きつける。実に地味だが、確実にパーティーに貢献していた。


【EXP:1200を獲得しました!】


【キョウのレベルが49に上がった!】


【STRに全ポイントを割り振りました】


(レベル49! 次だ! 次でついに……!)


 京介の胸が高鳴る。レベル50。多くのVRMMOで、一つの節目とされるレベル。

そして、STRがカンストするはずのレベル! そうなれば、この脳筋アバターも、他のステータス……INTにポイントを振らざるを得なくなる! 知性への扉が開かれる!

 京介が、ゲーム内での受験勉強という歪んだ希望に胸を膨らませていると、森の出口が見えてきた。木々の切れ間から見えるのは、黒曜石でできた巨大な建造物の一部。どうやら、魔王城の建物内部へと入る場所らしい。

 森を抜けると、そこには巨大な両開きの扉がそびえ立っていた。禍々《まがまが》しい装飾が施され、見るからに「この先はボスですよ」と主張している。


「ついにここまで来たか……!」


 ロジックが感慨深げに呟く。信徒たちにも緊張の色が浮かんでいた。

 しかし、その扉の手前、脇の壁には、またしても何やら見慣れたものが設置されていた。天秤だ。

 天秤の左側の皿には、あの忌まわしきミノタウロスの小さな石像が1つと、プルプルとしたスライムの石像が1つ。

 右側の皿には、これまた見覚えのあるティラノブーストの石像が1つと、スライムの石像が3つ乗っている。そして、天秤は見事に釣り合っていた。

 その横には、やはり古びた石板が設置され、文字が刻まれている。


『いにしえより、天秤は均衡と真実を示す。

 果実の重さに秘められしことわりを解き明かし、汝らが進むべき ”正しき道” を見出せ。


<問い>

 ティラノブースト1体=スライム2つ分の重さである時、ミノタウロス1体=スライムいくつ分の重さとなるか? その答えの数だけ進み、”正しき扉” を開けよ。』


(……また謎解きかよ!)


 京介はうんざりした。しかも、今回は計算問題。


(ティラノブーストがスライム2つ分なら、右の皿はスライム2+3で5つ分。天秤が釣り合ってるから左の皿もスライム5つ分。ミノタウロス1つとスライム1つで5つ分だから……ミノタウロスはスライム4つ分か。答えは『4』だな。……で、『その答えの数だけ進み、”正しき扉”を開けよ』……?)


 あまりにも簡単な、中学受験レベルの「つるかめ算」ならぬ「ミノティラ算」だ。

 京介は、目の前にある巨大な扉を見た。

 扉は、一つしかない。


(正しき扉って、扉一つしか無いじゃないか……! 4歩進んでこの扉を開けろってことか? なんの意味があるんだよ! 相変わらず雑なギミックだな!)


 京介が運営の雑さに呆れていると、ロジックがやれやれといった様子で口を開いた。


「また謎解きですか。少々ワンパターンですね、この城の仕掛けは」


 その隣で、チョットツが胸をドン!と叩いた。


「なぞなぞなら任せて下さい! さっきの庭園のも、オレが真っ先に解いたからな!」


(あんたのは解いたって言わないんだよ! あれは奇跡の計算間違いと脳筋理論の合わせ技だ!)


 京介が内心でツッコミを入れている間にも、我らが狂戦士は、そんな知的な議論には全く興味を示さなかった。天秤? 石板? 知ったことか。目の前に、巨大な扉がある。ならば、やることは一つ。

 キョウは、ゆっくりと扉に向かって歩いていく。


(ちょっと待て! 謎を解かなきゃ開かないタイプの扉なんだよ、きっと! その扉は頑丈そうだぞ! お前が殴ったって壊れない!)


京介の魂の絶叫を嘲笑あざわらうかのように、キョウはただ、その全STRを込めた拳を振り上げた。


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