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【悲報】僕のVRMMOアバター、レベル1のまま魔王城に無限突撃する狂戦士なんですが?【ログアウト不可】  作者: 空木 架
第4章 尻尾は友達

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第46話 神託受信者、爆誕す

『オカラウォール遺跡』での死闘(という名の自爆特攻と事故)を終えた狂戦士キョウは、信徒たちに担がれ、彼らの本拠地である始まりの村へと凱旋していた。

 先師京介せんし きょうすけの心境は複雑だった。レベルが大幅に上がったことは素直に嬉しい。尻尾の操作にも、わずかながら光明が見えてきた。しかし、それ以上に、周囲の勘違いと熱狂が、もはや制御不能なレベルに達していることへの不安が勝っていた。

 そして、その不安は、彼らが「ギルド本部」と称する建物の前に到着した瞬間、確信へと変わった。


(…………は?)


 京介は、目の前の光景に絶句した。

 そこにあったのは、始まりの村の素朴な景観とは全くそぐわない、悪趣味なまでに巨大で、けばけばしい装飾が施された建物だった。

 建物の正面には、巨大な看板が掲げられている。それは、キョウがあの「温泉岩」を砕いた瞬間を捉えた写真に、「伝説の始まり」という、極太明朝体のキャッチコピーが添えられたものだった。

 それだけではない。その隣には、CG加工されたと思しきキョウが、ミノタウロスの巨大な戦斧を軽々と持ち上げている看板。そのまた隣には、フェンリル(実際はフェルンリ)を素手で絞め殺している看板。さらにその隣には、ティラノブーストの突進をデコピンでいなしている看板……。

 キョウの武勇伝を描いた看板が、建物の壁を埋め尽くすように、ズラリと並べられていたのだ。


(え、映画館……かな? 昭和の?)


 あまりの光景に、京介の思考回路がショートしかける。隣で、その一部始終を見ていたポヌルが、必死に笑いをこらえていた。


「こ、これは……プスーッ……なかなか、フヒー……壮観な眺めだニャ……クスクス」


(笑い事じゃないんだよ! 完全に肖像権の侵害だろ! ていうか、僕のアバター、許可なく看板にされてるんだけど!?)


 京介が内心で憤慨していると、一行を出迎えたロジックが、さも当然といった顔で説明を始めた。


「マスターが、我らが『破壊神の信徒』ギルド本部へお越しになるのは、これが初めてでしたね。外観は、ご覧の通り、できる限り質素に、しかし、マスターの数々の偉業を後世に伝えるべく、最低限の装飾を施させていただきました。ささやかではございますが、本日は歓迎の宴と、『オカラウォール遺跡』攻略成功の祝賀会を兼ねた、振り返りミーティングの場をご用意しております」


(どこが質素なんだよおおおおお! 村の景観ぶち壊しの、悪趣味極まりない看板御殿じゃないか! やってることが、もはや狂信的なストーカーのレベルを超えてるんだよ!)


 京介の魂のツッコミは、もちろん誰にも届かない。彼は、もはや諦めの境地で、信徒たちによって丁重に(しかし有無を言わさず)ギルド本部の内部へと担ぎ込まれていった。



 そして、内部は、外観以上に京介の精神を蝕む空間だった。

 長い廊下の両側の壁には、ガラスケースがずらりと並び、その中には、キョウに関連する(と信徒たちが信じている)「聖遺物」が、長文の解説文付きで、厳重に展示されていたのだ。


――『マスターが初めて破壊されし、始まりの村の「最初の壺」(復元)』


――『マスターが「必中の神撃」を放たれた際に使用された「奇跡の小石」(※成分分析中)』


――『マスターが温泉を掘り当てた際に砕かれた「伝説の岩」の破片(※ご利益があるとの噂)』


――『マスターが破壊された民家の壁の一部(※おばあさんから特別に譲り受けたもの)』


(場所の無駄遣いにも程があるだろ! なんだこの個人崇拝博物館は! あー、もう頭が痛くなってきた……ツッコミどころが多すぎて、脳の処理が追いつかない……)


 京介がツッコミ疲れで眩暈を起こしていると、一行は廊下の突き当たりにある、巨大な両開きの扉の前で止まった。信徒たちが、恭しくその扉を開ける。

 部屋の中は、まるでどこかの国の議会場か、あるいは秘密結社の集会場のような、荘厳(だが、やはりどこか悪趣味)な空間だった。中央には巨大な円卓が置かれ、その奥には、一段高くなった場所に、やけに豪華な装飾が施された玉座が一つ。

 キョウは、当然のようにその玉座に座らされ、円卓にはロジックを筆頭とするギルド幹部たちがずらりと着席した。

 ロジックが、パンパン、と手を叩き、会議の開始を告げた。


「これより、『オカラウォール遺跡』攻略成功に関する振り返りミーティングを開始する!」


 彼の言葉と共に、室内に設置された巨大なモニターに、ダンジョン内部の映像(おそらく、信徒の誰かが録画していたもの)が映し出された。そこには、キョウとチョットツが、阿吽の呼吸(という名の、ただの脳筋の共鳴)で壁を破壊し、床をぶち抜き、ボス部屋へと落下していく、あの衝撃的なシーンが再生されていた。

 ロジックは、その映像を満足げに見つめると、隣に座るチョットツに向き直った。


「チョットツ君。君の功績は、計り知れない」


「は、ははっ! そんな、オレはただ、マスターの啓示に従ったまでで……!」


 謙遜するチョットツに、ロジックは重々しく頷いた。


「そうだ。それこそが、君の最大の功績なのだ。我々凡人が、マスターの『神の指揮(ゴッド・タクト)』や『壁殴りによる啓示』の真意を測りかね、躊躇していた時、君だけが、その純粋な信仰心によって、マスターの真意を寸分の狂いなく読み取り、そして実行に移した。まさに、神託をその身に降ろす巫女……いや、『神託の受信者オラクル』と呼ぶにふさわしい!」


 ロジックは立ち上がると、高らかに宣言した。


「よって、私はここに、チョットツ君を、ギルド『破壊神の信徒』の最高幹部の一人であり、マスターの身辺を護衛する『マスター護衛隊長』に任命する!」


「「「おおおおおおおおおおっ!!」」」


 会議室は、割れんばかりの拍手と歓声に包まれた。チョットツは、「キョウ様! このチョットツ、生涯をかけてあなた様をお守りしますぞ!」と、感涙にむせび泣いている。

 その光景を、玉座(という名の拘束具)の上から見せつけられていた京介は、ただ一人、血の気が引くのを感じていた。


(や……やめてくれ……! そいつはダメだ! そいつだけは! あの男は、僕の尻尾の動き(ただのパニック)を、100%どころか、1000%の純度で誤解する、このギルドで最も危険な男なんだ! そんな奴を、僕の護衛隊長に!? 悪夢だ……!)


 京介の魂の絶叫は、もちろん、熱狂する信徒たちには届かなかった。



 勘違いに満ちた厳粛な振り返りミーティングの後、ギルドハウスの大広間では、盛大な宴が催された。

 テーブルには、信徒たちがダンジョンで採取してきた食材を使った豆腐料理が並び、酒が振る舞われた。

 そして、その宴の中心では、早速、新たなギルド幹部となったチョットツによる、「昨日のマスターの神託徹底解説会」が、熱狂的に開催されていた。


「……そう! あの時のマスターの尻尾の、あの微妙な角度! あれこそが、『壁の構造的な脆弱点』を示唆しておられたのだ! そして、あの壁を殴る拳のリズム! あれは、ただの破壊ではない! 壁の内部構造に共振を起こし、最小限の力で最大限の破壊効果を生み出すための、神の打法!」


「おおおお……!」


「なんと深遠な……!」


 チョットツの、100%妄想で構成された解説に、信徒たちは目を輝かせ、キョウへの信仰をさらに、さらに深めていく。

 その狂信の輪から少し離れた玉座で、京介は、もはやツッコむ気力もなく、ただただ、天井のシミを数えることしかできなかった。彼の胃には、もう穴が開き始めているかもしれない。


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