表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【悲報】僕のVRMMOアバター、レベル1のまま魔王城に無限突撃する狂戦士なんですが?【ログアウト不可】  作者: 空木 架
第4章 尻尾は友達

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

46/103

第44話 計算通り(?)のダンジョン攻略

 先師京介せんし きょうすけの視界が安定した時、そこはボス部屋の床……ではなく、巨大な豆腐の上だった。

 落下してきたキョウとチョットツの二人は、ダンジョンボス【カゴモリキング】の、まさに本体である巨大な豆腐部分に、見事に突き刺さる形で着地(?)していたのだ。


「ぐふぅ……」


 チョットツは、着地の衝撃と、豆腐の柔らかすぎる感触に脳をやられたのか、短い呻き声と共に白目を剥いて気絶していた。重そうな盾が、豆腐の上にボトリと落ち、ズブズブと沈んで行く。


 しかし、我らが狂戦士キョウは、そんなことでは動じない。

 彼は、自分が何の上にいるのか、足元のボスが瀕死の状態であることなど、全く気にも留めていない。ただ、目の前に、殴り心地の良さそうな、白くてプルプルした塊がある。それだけで、彼の行動原理は満たされた。


「ウガッ! ウガガガッ!」


 短い雄叫びと共に、キョウはカゴモリキングの本体(豆腐部分)に、楽しそうに拳を叩き込み始めた。


 ビチャァ!! バチャァ!! ブチュ!


 ボス部屋に、大量の豆腐を素手でかき混ぜるような、およそ戦闘らしからぬ、水気の多い音だけが虚しく響き渡る。カゴモリキングは、最後の力を振り絞って「ト……フ……(やめ……て……)」と呟いているようにも聞こえるが、キョウの無慈悲な豆腐コネコネパンチの前には、もはや風前の灯火だった。


(な、何やってんだ、こいつ……! しかも、なんか楽しそうだぞ!? もう瀕死なんだから、普通に殴れば倒せるだろ! なんでわざわざ豆腐をこねくり回してるんだよ!)


 京介が、あまりのシュールな光景にツッコミを入れる気力すら失いかけていると、キョウの無意味な豆腐コネコネラッシュが十数発続いた後、カゴモリキングの巨体は、ふっと光の粒子となって、静かに消滅した。

 ボスという名の巨大な足場が消滅したことで、キョウと、気絶したままのチョットツは、わずかに残った豆腐(?)の欠片と共に、ボス部屋の硬い大理石の床へと落下した。


 そして、彼らの落下からワンテンポ遅れて、豆腐に沈みかけていたあの巨大な盾も、重力に従って落下し――


 ゴイーン!!


 気絶しているチョットツの頭部に見事なクリーンヒットを決めた。


「いいー!!! ん……むにゃ……。はっ! ここは!?」

 その衝撃で、気絶していたチョットツが目を覚ました。

 彼は、目の前で光の粒子が消えていく光景と、その中心で仁王立ちするキョウの姿を認めると、瞬時に状況を理解(大誤解)した。


「おおおおおっ! キョウ様! やりましたな! 落下という絶体絶命のピンチすら利用し、ボスの脳天に我々が直接『神罰』を下すとは! なんと素晴らしい作戦でしたかっ!」


(いや、作戦も何も、ただ床が抜けて落ちただけだからな? あと、お前はずっと気絶してたし、なんか今とんでもない寝言言ってたぞ……)


 京介が、もはや諦めの境地で遠い目をしていると、頭上から、ウィーン、という機械的な駆動音と、どこか祝福するような音楽が聞こえてきた。見上げると、信じられない光景が広がっていた。

 先ほど崩落した大穴から、なんと、まるで結婚式の入場シーンのように、ドライアイス(?)のスモークと共に、豪華な装飾が施されたゴンドラが、ゆっくりと降りてくるではないか。ゴンドラの中には、ロジックを始めとする『破壊神の信徒』のメンバーたちが、心配そうな顔でこちらを見下ろしている。


(バブル時代の結婚式かよ! ていうか、そのゴンドラは一体どこから持ってきてるんだ! ダンジョン攻略に必須アイテムなのか!?)


 京介のツッコミも虚しく、ゴンドラは静かに着地し、中から信徒たちがワラワラと降りてきた。


 ファンファーファンファーファーン!


 その瞬間、ダンジョン全体にファンファーレが鳴り響く。京介の目の前に、祝福のウィンドウが表示された。


【ダンジョンボス:カゴモリキングを討伐しました!】

【クエストクリア:オカラウォール遺跡を破壊しました!】

【フロア破壊ボーナス経験値を獲得しました!】

【莫大な経験値を獲得しました!】


【キョウのレベルが 28 に上がった!】


「おお! 一気にレベルが8も上がったぞ!」

「さすがマスター!」

「あの落下も、フロア破壊ボーナスも、全て計算通りだったというのか……!」


 信徒たちが、口々にキョウのレベルアップを祝福し、その偉業(?)を称える。

 その中で、ただ一人冷静な(しかし、方向性は完全に間違っている)男、ロジックが、眼鏡をくいと押し上げながら、事の真相を解説し始めた。


「……ふむ。やはり、私の読み通りだったか。全ては、あの『壁殴り』から計算されていたのだ」


 彼の声に、信徒たちが静まり返る。


「マスターは、最初の壁殴りの時点で、この『オカラウォール遺跡』の構造的脆弱性を完全に見抜いておられた。そして、チョットツ君という『一点突破』の力を持つ『触媒』が加わったことで、この常識外れの戦術を実行に移すことを決断されたのだろう」


 ロジックは、確信に満ちた口調で続ける。


「通常の攻略ルートでは、我々の戦力ではカゴモリキングを倒すのは困難だったはずだ。しかし、マスターはあえてチョットツ君の純粋な信仰心を利用し、彼と共にダンジョンの床そのものを破壊。通常ではありえない『天井からのダイレクトアタック』というルートを創造し、ボス部屋に侵入すると同時に、最小限の戦闘でボスを無力化する……! なんと恐ろしく、そして美しい戦術だ!」


「「「おおおおおおおおおおっ!!」」」


 ロジックの完璧すぎる(勘違い)解説に、信徒たちは熱狂し、キョウへの信仰をさらに深めていく。その熱狂の輪の中で、チョットツは、先ほどの戦闘でボロボロになった盾を抱きしめながら、男泣きに泣いていた。


「キョウ様……! このチョットツ、あなたの偉大なる『神撃』の一部となれたのですね……! この盾、まさに神の槌となることができた……! うっ、ううっ……!」


(いや、だから、お前はただの重し……いや、今回は加害……いや、もう何も言うまい……)


 京介は、感動に打ち震える巨大な脳筋ガーディアンを見ながら、新たな、そして非常に厄介な頭痛の種が増えたことを、はっきりと自覚していた。

 今までは、ロジックという「知的バカ」が、キョウの奇行を都合よく解釈し、信徒たちを扇動するという、ある意味、一方通行の勘違い構造だった。


 だが、そこに、チョットツという「真正バカ」が加わった。

 ロジックのトンデモ理論を、何の疑いもなく100%信じ込み、それを実行に移してしまう可能性のある、超弩級の行動力の持ち主。


(ロジックの狂った理論セオリー + チョットツの盲目的な実行力プラクティス = 制御不能の破滅方程式カタストロフ・イクエイション、完成だ……!)


 天才軍師(?)と最強の盾(?)。

 この二大バカが、今後どのような恐るべき化学反応を引き起こし、自分のログアウト計画を、そして自分の精神を、木っ端微塵に破壊し尽くしてくれるのか。

 京介は、レベルが一気に8つも上がったというのに、全く喜べず、ただただ、未来への戦慄に打ち震えるしかなかったのだった。


 そして、この直後、チョットツがその多大なる功績(という名の勘違い)を認められ、ギルド『破壊神の信徒』の『マスター護衛隊長』という、あまりにも危険な要職に任命されることになるのを、京介はまだ知る由もなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ