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【悲報】僕のVRMMOアバター、レベル1のまま魔王城に無限突撃する狂戦士なんですが?【ログアウト不可】  作者: 空木 架
第4章 尻尾は友達

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第43話 脳筋交響曲

(まるで、自分の尻尾を追いかけ回す犬じゃないか……!)


 先師京介せんし きょうすけが、そのあまりにも情けない光景に眩暈を覚えているその後方で、熱い眼差しでキョウを見つめている二人の男がいた。ロジックとチョットツだ。

 信徒たちの輪の中で、ロジックが「……! あれは! 敵の注意を自らに引きつけつつ、あの無秩序な動き(神の輪舞曲)でドラゴンたちの知覚を飽和させ、AIの思考ルーチンに過負荷オーバーロードをかけているのか……! なんという高等戦術だ!」と真剣に分析を始めた、その時。

 チョットツは、キョウの尻尾の流麗な動き(尻尾言語)と、力強い拳の地面殴り(啓示)を見て、本日何度目かの天啓を得ていた。


「……! なるほど! そうか! マスターは、あの尻尾の動きでオレを導き、その拳で大地を叩くことで、『真の戦い方』を示されている! そうだ! 敵を殴るだけが戦いじゃない! この盾で大地を叩き、リズムを生み出し、味方を鼓舞し、敵の戦意を挫け! これが、オレが追い求めた『音楽性の(一致した)戦い』! そういうことですね!」


(絶対に違う!)


 京介の否定も虚しく、チョットツは、再び戦意を取り戻すと、その巨大な盾を、床に向かって力任せに叩きつけ始めた。


 ドンドン! ドンドンドン!

「マスター! オレ、やってますぜ!」


 一方は、自分の尻尾を捕まえようと、地面を殴り続け、

 一方は、それを応援(勘違い)と信じ、盾で地面を叩き続ける。


 ドゴッ! ドゴッ!

 ドンドン! ドンドン!


 その、あまりにも知性を感じさせない、パーカッシブな二重奏。

 その光景を目の当たりにした、数十体の高レベルモンスター、モメントキヌドラゴンたちは。


「……グルル?」

「……グル……」


 まるで「コイツら、急に何のリズム遊びを始めたんだ?」とでも言いたげに、攻撃の手を止め、完全にドン引きした様子で、じり……じりと後ずさりを始めていた。


 京介が、このカオスな空間で、唯一の常識人(猫は除く)であることに、深い絶望を感じていた、まさにその時だった。

 キョウの渾身の地面殴りと、チョットツの魂の盾叩きが、ついに、このダンジョンの構造的欠陥の限界を超えた。


 ミシミシミシ…………


「「ウガッ?」「ん?」」


 二人の脳筋が、同時に動きを止める。

 そして、次の瞬間。

 彼らが立っていた足元の床が、オカラウォールの名の通り、おからのように脆く、派手な音を立てて、崩落した。


「「ぎゃあああああああああああああっ!!」」

「ニャアアアアアアアアアアアッ!?」


 京介キョウとチョットツの絶叫、そしてポヌルの悲鳴が、奈落へと吸い込まれていく。

 二人の脳筋は、なすすべもなく物理法則に従い、重力にその身を任せるしかなかった。ポヌルも、京介と並走するように一緒に落ちていく。


(落ちるううううううううううっ!)


 京介の視界が、暗闇に包まれる。

 そして、数秒後。

 眼下に、巨大な「何か」が横たわっているのが見えた。

 暗闇の中で、静かに寝息を立てている。

 ボス部屋だ。


(うわっ! ボスの真上じゃないか! しかも、なんか……柔らかそうだぞ、あいつの頭!)


 京介が、最悪の(あるいは、最高すぎる)着地点を悟った、その時。

 同じく落下しながら、なぜか一切慌てていないポヌルが、そのボスの姿を認め、ボソリと呟いた。


「……あ。あれは、このダンジョンのボス、【カゴモリキング】だニャ」


 京介は、その名前に、強烈なデジャヴと、それ以上の嫌な予感を覚えた。


(カゴモリキング……? 籠盛り……? まさか、お前も……)


 その予感は、的中する。

 ポヌルが、まるで攻略本を読み上げるかのように、冷静に解説を続けた。


「あいつは、かごのような強固な外骨格で、下半身を完璧に防御している。下からの攻撃には、鉄壁の守りを誇るニャ。だがしかし……」


 ポヌルは、そこで言葉を区切り、重力に引かれて落下していく二つの巨塊キョウとチョットツを見つめた。


「上からの攻撃に対する防御力は、『豆腐』だニャ」


「やっぱり籠盛り豆腐かよおおおおおおお!」


 京介の最後のツッコミと、二つの巨体がボスに激突する轟音は、ほぼ同時だった。

 そして、ポヌルは、その光景を見届けると、二人が激突する寸前に、ふわっと翼を広げて安全な場所に着地していた。


 ドッッッッッッッッッッッッッッッGUCHAAAAAAAAA!!!!!!!!


 狂戦士キョウと、ガーディアン・チョットツ。

 二つの、知性とは無縁の、純粋な「質量」が、眠れるボスの、最も無防備な頭上(豆腐装甲)に、ダイレクトアタックを敢行した。


「……Zzz……グフッ!?」


 カゴモリキングは、その生涯で、ただの一度も発したことのないであろう断末魔を上げ、HPゲージの9割9分を、戦闘開始(というより起床)と同時に失った。

 ボスは、戦闘開始のゴングを聞く(寝ていたので聞いてすらいないが)前に、瀕死になった。

 そして、京介の脳裏には、この理不尽な勝利を祝福するファンファーレと、それによってもたらされるであろう、さらなる「レベルアップ」、そして「STRへの全自動ポイント振り分け」という、もはやお約束となった未来が、鮮明に見えていた。

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