表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【悲報】僕のVRMMOアバター、レベル1のまま魔王城に無限突撃する狂戦士なんですが?【ログアウト不可】  作者: 空木 架
第3章 ささやかな反逆。そして京介の覚悟

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

26/49

第24話 尻尾の動きを解読してみた

 VRMMO「ミステイク・ダストボックス・オンライン」の公式フォーラム。その中でも、一際異様な熱気を放つギルド『破壊神の信徒』専用スレッドに、ある日、一本の衝撃的な書き込みが投下された。それは、この世界の歴史を、そして先師京介せんし きょうすけの運命を、再び大きく歪めることになる狼煙のろしであった。


【件名:【緊急速報】破壊神キョウの尻尾言語、一部解読に成功か!?】


1:天才軍師ロジック

 同志諸君、刮目せよ。

 私は、マスター・キョウが、あの尻尾の動きで我々にメッセージを送っているという重大な事実を突き止めた。私はこの新たなる神託――尻尾言語テイル・ラングエッジの解読に、昼夜を問わず取り組んできた。そして今、ついにその一部を、論理的に解読することに成功したことを、ここに報告する。


2:名無しの剣士

 ≫1 うおおおおおお! ロジックさん! マジか!


3:ワッキヤック

 なんと! あの超複雑な動きが言語になっていたというのか! さすがは我らが軍師殿!


4:心優しきヒーラー

 しかし、そもそもなぜマスターは、我々と直接言葉を交わさず、尻尾言語などという回りくどい方法でメッセージを……?


5:天才軍師ロジック

 ≫4 良い質問だ、同志よ。それこそが、マスターの教えの神髄なのだ。マスターは、我々信徒に、ただ答えを与えられるのを待つのではなく、自らの頭で『考え、行動すること』の重要性を示すために、あえてこの尻尾言語という名の試練を創造されたのだ。我々を、真の意味で成長させるために……!


6:始まりの村民A

 な、なるほど……! お考えが深い……! 俺たち、ただ待ってるだけじゃダメだったんだな!


7:名無しの魔法使い

 で、では、マスターは何と仰っていたのですか!?


8:天才軍師ロジック

 うむ。解読はまだ一部だが、特に頻出した『尻尾を右に二回振り、左に一回転させる』という一連の動き。これは、古代ルーン文字における『集合』を意味する記号の軌跡と完全に一致した。ここから導き出される結論は、論理的に考えて一つしかない。マスターは、こう仰っている。『我が元に集え。そして、共に戦おう』と。


9:名無しの斥候

 ……!


10:ワッキヤック

 共に……戦おう……だと……!?


11:名無しの剣士

 マスターが……! あの孤高を貫いてこられたマスターが、ついに我々を仲間と認め、共闘を呼びかけてくださっているというのか!


12:心優しきヒーラー

 ああ……! 我々の信仰が、ついに天に届き、マスターは沈黙を破られたのだ……! この日のために、私はけがれなき聖水ハイポーションを溜め込んできた!


13:猪突猛進の戦士

 マスター! 一生ついていきます! この命、あなたに捧げますぞおおおおおおお!!


 ロジックの投下した、あまりにも壮大で、そしてあまりにも的外れなデタラメの解読結果は、信徒たちの熱狂という名の火薬庫に、見事なまでに火をつけた。スレッドは、マスターへの忠誠を誓う絶叫と、感動の涙で、完全にサーバーダウン寸前の様相を呈していた。



 その頃、狂戦士キョウは、岩肌に生息する一体の奇妙なモンスターと激しい戦闘を繰り広げていた。


【ヒゲモドキトカゲヒゲ】

 特徴:トカゲに似たヒゲを持つヒゲ


(ヒゲモドキトカゲヒゲ……? 『トカゲに似た』は『ヒゲ』の修飾語で、それがさらに最後の『ヒゲ』を修飾する……? 待て、意味が分からない! というか、結局ただの『ヒゲ』じゃないか! トカゲの要素はどこに行ったんだよ!)


 京介のツッコミ通り、そのモンスターは、巨大な口髭に、申し訳程度のトカゲの手足が生えただけの、シュール極まりない姿をしていた。

 モンスターは、その自慢のヒゲを、まるで鞭のようにしならせて攻撃してくる。しかし、キョウはそれをいとも容易く掴むと、ブチブチと無慈悲に引き抜き始めた。


(ああ、もう……)


 戦闘の傍ら、京介は練習の成果を試すべく、尻尾の先端を器用に動かし、地面に文字を書き始めた。本日の習字練習のテーマは、もちろん――

 ――ヒゲ


「フフッ……」


 少し離れた場所でそのシュールな光景を眺めていたポヌルが、静かに口元を綻ばせた。彼は、掲示板の熱狂を察知しているのか、あるいは目の前の「戦闘そっちのけで習字の練習をする男」の姿に堪えられないのか。京介は、そんなポヌルの様子には全く気づいていない。

 やがて、ヒゲを全てむしり取られたモンスターが、涙目で後ずさる。キョウは、とどめを刺すべく、大きく拳を振り上げた。


「ウガァァァァァァァァッ!!」


 その雄叫びを合図に、ポヌルが、遠くにいるであろう誰かに聞かせるように、大声で「翻訳」した。


「『見よ、我が大地に記した神託の文字を! 我がメッセージに気づいた信徒たちよ、今こそ、この地に集え!』……と、言っているニャ!」


 ズドン! という轟音と共に、キョウの最後の一撃がモンスターに叩き込まれ、光の粒子となって消えていった。

 その直後、遠くの物陰から、割れんばかりの歓声が上がった。


(お、すごい応援だな。まあ、今の戦闘は一方的だったしな)


 京介は、その歓声がモンスターを倒したことに対するものだと、何の疑いもなく信じていた。


【キョウのレベルが 5 に上がった!】

【ステータスポイントを割り振ってください】


 京介の脳裏に、ほんの一瞬だけ、「今度こそSPDに……」という希望がよぎる。しかし、そのウィンドウは表示されたコンマ1秒後には消滅していた。


【STRに全ポイントを割り振りました】


(……うん。知ってた。もう何も言うまい)


 京介は、もはやツッコむことすら諦めた。

 彼は、この後すぐに、「マスター! 我らと共に戦いを!」と涙ながらに叫ぶ狂信者たちに囲まれ、有無を言わさず、このエリアの強力な中ボス討伐戦へと、まるで祭りの神輿みこしのように担ぎ出されることになる運命を、まだ、知る由もなかった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ