人成りて塞翁が馬の洗礼
気づくと、見知らぬ部屋に居った。
「此処は何処じゃ…?確か人間の子とその親に絡まれて…」
状況を整理しておると、先刻の人間の親が現れた。
「お、目が覚めましたか。体調はいかがですか?」
「ふむ…何処も悪くは無いようじゃな…」
「それは良かったです。久々にやったものですから少し不安だったんですよね…」
「そうじゃったのか…ん?此奴、何故我の思考が読み取れるのじゃ…?」
我が不思議に思うと、人間は苦笑してきおった。
「それ、全部声に出てますよ」
「なんじゃと…!?」
知らぬ間に声が出せる様になり、無意識に喋っておったらしいのう。
「余程会話がしたかったのでしょう、これからは存分に喋ってくださいね!」
(余計なお世話じゃよ…)
醜態を晒して軽く落ち込んでおると、部屋の外から声が聞こえて来たのじゃ。
「親父ー!その子おきたー?」
(む、その子…?)
目線を下げると、人間の子の身体があり、視界の端では髪が揺れておった。
「あ、自分の外見が気になりますか?ここに丁度鏡がありますよ」
我が鏡を覗き込むと、そこには愛らしい金髪の少女が映っておったのじゃ。
「これが…我なのか…?」
天界に居った頃とは似ても似つかぬその容姿に、我は唖然としてしもうた。
「この部屋は基本僕しか入らないんです。リビングでうちの子が心配してるので、早く行ってあげてください」
人間に背中を押されるが儘、我はリビングに向かったのじゃ。