報いは影の形に随うが如し
(何じゃと…?此奴が犯人では無かったのか…!?)
確かに、我が家を訪ねた時も逃げず、此処まで着いて来ておった。
「な…そ、そうか、それは良かったのう」
我が冤罪を掛けたと理解するまで、そう時間は掛からなかった。
「よくないでしょ!あなたは何もわるいことしてない天使の力をとり上げちゃったんだよ!?」
(そうじゃな…我は何という事を…)
「それに、あなたがお昼寝してたって聞いたよ!」
(何故それを知っておる…!?)
我が寝ている姿はしかと見られておったようじゃ。
「なっ…!お主は此度の件が神の所為じゃというのか!?」
我はそう返すだけで精一杯じゃった。
(これでは我の面子も丸潰れじゃのう…)
「力を取られるときって体も心もすごく痛いんだよ!ちゃんとこの子にあやまって!」
(此処まで来たら自棄じゃ、もう何でも言ってやるわい)
我は自尊心を捨てられず、最後まで意地を張る事を選んでしまったのじゃ。
誰しも、上の立場に成れば、ある程度変わってしまうものじゃと思うがのう。
神は何よりも体裁を重視する存在じゃった。
「我に指図するでない!我の行いこそが正しいのじゃ!!」
「犯人じゃなかった子にかなしい思いをさせるのが正しいわけないでしょ!!」
真っ直ぐな言の葉が何度も我の胸を刺してきおった。
「神さまでもわるいことはしちゃだめ!わるい子にはおしおきだよ!」
「ほう、神である我にお仕置きとな?随分と大きく出たものじゃのう」
(出来るものなら頼みたいくらいじゃ…)
「先手は譲ってやるのじゃ、我は攻撃を1発受けてから動くぞ」
我は身を守る魔法を最大限に掛け、来たる攻撃に備えたのじゃ。
「ありがと~、じゃあ私から行かせてもらうね!」
使いが剣を抜き、力を解き放つ。
(此奴が我を倒せねば、何処か遠くへ逃げるとしよう。じゃが、もし倒されたのなら…)
大人しく罪を受け入れよう、と思っておったのじゃが、甘かったのじゃ。
「えいっ!」
彼奴は一瞬で間合いを詰め剣を振り下ろしたのじゃが、我の魔法をいくら破ろうと剣の勢いは衰えぬ。
(あ…我、終わったのう…)
あたかもこの瞬間だけ時の流れが遅くなったかの様に、1枚ずつ割れていく魔法をただ見ておる事しか出来んかった。
そしてその剣は本部の床を貫通させ、我を地に堕としたのじゃ。