蒔いた種は刈らねばならぬ
”サボり魔”の住処を探し当てるのは造作もなかった。しかし、現場に着いた時にふと、自分を客観視したのじゃが…
(神が直々に家を訪ねるとは、いささか威厳が無さ過ぎるのではないかのう…)
とはいえ、この状況を広く知られるのはとても不味い。仕方無く、身嗜みだけは確認し、我自ら戸を叩く事にしたのじゃ。
暫くすると、中からだらしない印象の使いが顔を見せた。
「あのー、神様が俺に何の用ですか?」
(我を目の前にしてこの態度…此奴、肝が据わっておるのう)
じゃが、我も此処で食い下がるわけにもいかぬ。
「説明は後でしてやろう。黙って2番隊本部に来るのじゃ」
此処に来る前に使いには本部から離れる様に伝えておいた。
「わかりました、直ぐに準備するんでちょっと待っててください」
彼奴は訝しげな顔をしてから家の中に戻り、着替えて出て来おった。
(此奴、妙に落ち着いておるな…常習かのう)
本部に向かう道中では、特に逃げる素振りも見せぬ様じゃったから、無言で先を急いだのじゃ。
着いて早々、彼奴が辛抱し難い様子で聞いてきおった。
「あーと…そろそろ何故お呼びになったのかお聞きしても…?」
(此処まで来ておいて白を切るつもりとは…)
「まったく。自分がやっておいて、何も見当が付かぬのか?」
我は彼奴を睨み、神としての最低限の威厳を見せる。
「まあよい。最近話題になっておることがあるのじゃ。何でも、神に許可も取らずに、地上に降りた者が居るらしくてのう」
「はあ…」
「更に、人間共に嘘を吹き込み、混乱させたのじゃとか」
「それは大変ですね…」
(此奴…何処までも他人事じゃのう…)
「その犯人がお主じゃと聞いておる」
「…はい?」
我は飽くまで優しげな笑みを浮かべ、こう告げたのじゃ。
「そこでじゃ。直ぐに罪を認めるのなら、罰を軽くしてやろうと思うてのう」