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「おおおおー!?」
振り落とされぬよう、セブンナの腰に必死に掴まるガヤオがパニクる。
ユニコーンと聖女は、すさまじい勢いで敵陣を切り裂いた。
誰も止められない。
成す術なくオークたちは屠られ、ついには残った者が逃げ始めた。
カツカーレの城兵たちが歓声をあげる。
ここぞとばかりに城門を開き、出陣した城塞軍が、敗走する敵を追撃した。
戦況は完全に覆った。
セブンナの駆るユニコーンは、崩壊した敵陣を進み続ける。
逃げ惑うオークたちの中から現れた、黒馬に乗った黒鎧の騎士が、こちらに向かってきた。
「居た」
「敵のリーダーか?」
ガヤオの問いに、セブンナが頷く。
「悪の手下」
答えると同時に、黒騎士の突き入れてきた槍先を聖女の剣が斬り落とす。
ユニコーンと黒馬が、すれ違った。
セブンナと黒騎士は双方、馬を返し、再び突進し合う。
「よし、任せろ!」
今度こそと左手をかざし、呪文を唱えだしたガヤオより先に、新たに抜いた黒騎士の剣をセブンナの聖剣が砕いた。
続く斬撃が、悪の騎士の頭を兜ごと斬り割る。
黒騎士は地に落ち、動かなくなった。
「終わった」
セブンナは頷いた。
「よくやった、ガヤオ」
「え!? い、いや、俺は何もする暇なかったけど…」
戸惑う別世界の勇者を連れ、聖女の乗るユニコーンは城塞都市へと戻った。
勝利に湧く城兵たちと、バロゴが出迎える。
「聖女様! ありがとうございました! カツカーレは救われました」
皆が深々と頭を下げた。
「ガヤオに助けられた」
「は? 俺はセブンナの後ろに乗ってただけだろ!」
「ありがとうございます、ガヤオ様!」
「ちょっ、爺さん、聞いてる? 俺はワーワー驚いてただけで」
ガヤオの言葉は城兵たちの「聖女様、万歳! ガヤオ様、万歳!」の大合唱に掻き消される。
「悪と闇の勢力は、いつも暗躍してる。近々、もっと大きな攻撃を仕掛けてくる」
セブンナが告げた。
「おお! 何と恐ろしい!」
バロゴが怯えた。
「大丈夫。私たち聖女は、いつも正しい者の味方」
セブンナの言葉に、バロゴと城兵たちが安堵する。
「皆も各々の役割を果たして」
「はい、聖女様」
バロゴを筆頭に、城兵たちが頭を垂れた。
「ガヤオ」
ユニコーンから降りた勇者に、セブンナが視線を移す。
「大活躍」
「だから! 何もしてないって!」
「また、どこかで会う」
「なあ、俺の話、聞いてる? え!? そうなの!? まあ、会うかもな」
今ひとつ納得のいかないガヤオの周囲の空間がミョーンと歪み、彼の姿が半透明になる。
「お! カルナディアに帰れそうだ!」
異世界の勇者が喜んだ。
「さよなら、ガヤオ」
「ああ、さよなら! 元気でな!」
ガヤオは手を振り、完全に消えた。
自分の世界に帰ったのだろう。
「私も行く」
セブンナはユニコーンを駆り、再びの大歓声を後に、城塞の外に出た。
動く敵が居なくなった戦場を颯爽と走る。
7聖女のミリンダル、ラファンタ、ペプシアと合流し、悪の勢力の大きな企てを打ち破らねばならない。
戦いは激しさを増すだろう。
ただ今だけは何も考えず、心地よい風に頬を撫でられ、緑の髪をなびかせていたかった。
おわり
最後まで読んでいただき、ありがとうございます(*^^*)
大感謝でございます\(^o^)/