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ミッドランドの物語のひとつ。
助けを求める声を聴き、7聖女の1人、セブンナはユニコーンに乗って、城塞都市カツカーレに現れた。
空間転移で出た先は、昼間の城庭だ。
「おお!」
祭壇の前に座った白いローブ姿の老人が、彼女に駆け寄る。
「成功した! これはまぎれもなく聖女様!」
「私はセブンナ」
破顔する老人に、緑色のカールヘアを揺らし、聖女は名乗った。
「悪の気配がする」
セブンナの指摘に、老人は大きく頷いた。
「さようです。今、この街はオークの軍勢に包囲されております。わしは魔法使い、バロゴ。今のところは守備隊と共に、どうにかしのいではいますが、それも時間の問題。どうか、聖女様の力をお貸しください」
「もちろん」
セブンナは頷いた。
それこそが、彼女の役目なのだ。
この都市に聖宝はないが、存在自体が善側に良い影響を与えていた。
敵は、その壊滅を目論んでいるのだろう。
と、その時。
2人の傍の空間が、ミョーンと歪んだ。
そして、1人の若い男が現れる。
「またかよー」
青年は、ブーたれた。
軽装鎧を着て、剣を腰に帯び、左手に盾を持っている。
「おお!」
バロゴが瞳を輝かせた。
「違う世界からも助けを召喚したのです」
「俺、助っ人ばっかなんだよなー」
若者が頭を掻く。
セブンナとバロゴが名乗ると、彼も「俺はガヤオ。カルナディアの勇者だ」と自己紹介した。
数多ある別の世界から、やって来たのだろう。
バロゴが、ガヤオにも事情を説明した。
「そか。呼ばれたからには、俺も仕事するよ」
ガヤオが頷く。
ユニコーンから降りたセブンナはガヤオと共に、バロゴの案内で城壁へと上がった。
武装した城兵たちが持ち場につき、包囲しているオーク軍に、油断なき視線を注いでいる。
セブンナは白い鎧をカチャリと鳴らし、腰のロングソードの柄に右手を添えた。
敵陣の様子を見つめる。
「居る」
「え? 誰が?」
ガヤオが訊いた。
「オークどもを束ねる悪。この地を汚そうとしている」
「へー」
ガヤオも、セブンナの眼差しの先を見た。
「俺には見えないぞ」
「私には、奴らが分かる」
「便利だな。しかし、あんなに奥じゃ、いきなりリーダーだけを倒すのは無理そうだ」
「そうでもない」
セブンナは真顔で答えた。
「今から、敵を倒す。ガヤオも力を貸せ」
「ああ、もちろんだ。任せとけ」
ガヤオが胸を張った、刹那。
セブンナは彼の襟首をむんずと掴み、まるで体重がないかの如く、軽々と持ち上げた。
「ええ!? お、おい!?」
パニクるガヤオを片手に持ち、疾風のように駆ける。
中庭に戻り、ユニコーンに飛び乗った。
一角獣は主人のこういう行動に慣れているのか、音もなく動きだし、城壁をジャンプで越えた。
そのまま、下方のオークの陣へと落下する。
「うわぁぁぁー!」
セブンナの後ろにタンデム乗りしたガヤオが叫んだ。
高所からの着地寸前、いかなる魔法か、ユニコーンの馬体はフワッと浮き、何のダメージもなく、武装したオークたちの中に下り立った。
怪物たちは最初、呆気にとられていたが、次第にこちらが敵だと気付き始める。
「ボヒッ、ボヒッ!」と鳴き、セブンナとガヤオに殺到した。
「おお!?」
眼を丸くしたガヤオが腰の剣に右手をかけた瞬間、セブンナは聖なるロングソードを鞘走らせ、高々と掲げた。
銀色の聖剣が発する強烈な善の光に、オークたちの眼が眩む。
その隙に走りだすユニコーンの上から、すさまじい素早さの斬撃が踊った。
すれ違う怪物たちの兜も鎧も意味はなく、次々と彼女に倒されていく。
まさに鬼神の強さだ。