ダメージ
髪を切り、それに似合う結奈好みの洋服も買った。
オレの予想だと結奈は、留守だ。
まぁ、予想しなくても…さっき結奈の自宅の自転車置き場から自転車がなかったから、留守なのはわかっていた。
でも、オレは留守なのがわかっていたがピンポンを鳴らした。
すると、ピンポンを鳴らしたあと結奈のおかあさんが出てきた。
つっかけを履いて、エプロン姿のおかあさん。
安定のおかあさん登場。
「あの…これを結奈に。おかあさんも一緒に食べてください」
華やかなわたあめを差し出すと、おかあさんの顔も華やかになった。
「まぁ、和紀くんありがとう!結奈は、今そうまちゃんちに行っててね。ごめんなさいね、結奈に伝えておくわ、ありがとう。」
と、エプロン姿が安定のおかあさんは、わたあめを大事そうにもらってくれた。
オレはふわふわのわたあめと反対に、固まった。
そうま…ちゃん…?
おかあさんのアノ、そうまちゃん呼びが…なんとも驚きを隠せなかった。
オレはいつも…くん呼びなのに…?
そうまは、結奈の母親までもとりこにしていやがるのか…⁉︎
結奈お気に入りの髪型にしたおかげで、前髪がうっとおしい…。
仕方なく髪をかきあげると、結奈のおかあさんが、
「和紀くん、その髪型いいわね!素敵よ♡」
と、結奈母からハートを飛ばされた。
…
結奈父の敵にはなりたくない。
そりゃ、結奈母のは冗談まじりだろうけど…やっぱり結奈と母親は、同じ遺伝子を持っていると内心思う。
同じ髪型がタイプとか…
…
あ、そういえば結奈父も昔…こんな髪型だった。
数年前までは…
大人になると、色々髪の事情があるのだろう。
…
色々あって、おいとました。
ただ、わたあめ渡すだけなのに…なんか疲れた。
一番オレを疲れさせたのは、そうまだ。
あの場所にいないくせに、オレにダメージを与えてくる…
バケモンだ。
ここまでくると、奴はバケモンすぎる…
遠くからもオレを困惑させる。
なぜあいつは、おかあさんから…ちゃん呼びされているのだろうか⁇
許せん…‼︎
そして奴は、今結奈と一緒にいるっていうじゃないか‼︎
許しがたい‼︎
てか、許さん‼︎
早く結奈をそうまから、ベリベリ剥がしてやりたい‼︎
てか…剥がさなくても勝手に剥がれて、オレの方に来るようにしないとだ‼︎
…
夜も更けてきた頃…結奈から、わたあめありがとうと連絡がきた。
今ごろ⁇
あんた…何時に帰ってきたの⁉︎
まさか、今までずーっとそうまの家にいたんじゃないだろうね⁇
どんだけそうまと…いたん⁇
そんなに離れがたいやつなん⁉︎
…
夜が更けたころ…オレは寝不足で老けた。
老けたオレは結奈に電話しようとしたけど、遅い時間だから電話じゃなくて文字で、わたあめ食べた?って聞いてみた。
そしたら…
前にそうまにもらって美味しかったから、また食べられて嬉しい。わたあめ屋さんでバイトしてたんだね。
ってきた。
…
結奈…オレのバイト先知らんかったんだ?
あ、言ってないもん、知らないよね…
でも、オレのことをそうまから聞いたってのは、納得ならん‼︎
あと、そうまがあげたわたあめって…オレがこの前作ったやつとちゃう⁉︎
オレが作ったのに…そうまが一番に結奈にあげるとか…許さん‼︎
そうまは、なんでも結奈の一番を狙ってくる…‼︎
クソーー‼︎
オレはシャーっとカーテンをあけた。
結奈の部屋には、あかりがついている。
おい、そうま‼︎
オレは今、結奈の部屋の隣にいるんだぜ⁉︎
まだ、結奈の部屋あかりついてるぜ‼︎
オレの方が近くにいるんだかんな‼︎
結奈の隣だぜ‼︎
勝ち誇ると、結奈の部屋のあかりが消えた…。
そしてオレのくだらない勝ち誇りも消えた…。
真っ暗になった…
結奈の部屋もオレの心も…
オレもそっと部屋の電気を消した。
寝よっと
そして…トイレに行こうとしてコンセントのヒモにひっかかり、冷や汗かいた。
一等賞のゴールのヒモにはひっかかったことは、ないけど…よくコンセントのヒモにはひっかかる。
ある意味一等賞…
オレはひっかかり一等賞にしか、なれない…。
結奈の一等賞になりたかった…。
オレはその日、枕を濡らした。
涙で…と言いたかったけど、色々疲れて深い眠りに入り、口元が緩みヨダレで枕を汚したのでありました。
こんなんだから…ダメなんかなって、朝から大きなため息をついた。
続く。