ライブからの
土曜日、オレはふて寝しておりました。
バイトの時間は、まだだし…
どうせ結奈が来るわけないし。
…
いいんですよ。
結奈は、きっと昨晩…彼氏と寝落ち電話でもして、今ごろはデートでもしているんでしょうよ?
あーいいさ、いいさ。
布団でゴロゴロして、眠くもないのに目をつぶってやった。
ドライアイになったら、目がシパシパしちゃうもんね。
おめめのケアでも致しましょう。
てことで、おめめケアしてたら結奈の声がしたんですよ。
「おじゃましまーす」
ってさ。
幻聴ってやつよ。
本来なら、どんどんおじゃましなさいよってことなんですけどね。
だって、オレの心のドアはいつでもオープンですから。
自動ドアとかの次元ではない。
開いたり閉まったりしません。
ずーっと開きっぱなしなんよ。
結奈のためにずっと開放していたのに…
…
それが良くなかったんかね?
開放しすぎた⁇
開けておいて結奈が来たらバタンって閉めとけば……ってさ、それはいかんよね。
こわいこわい。
自分で考えといて、それは危険。
「それは、ダメだって‼︎」
「え?入っちゃダメ?」
⁉︎
えっ⁉︎
結奈の声がしてガバッと起き上がると、目の前に結奈がいた。
「えっ?結奈…どうした?」
「ん?なにが?」
…
いる‼︎
目の前に結奈がいる‼︎
「あの…だって…オレの部屋来ていいの?」
「なんで?」
…
なんでって…なんで⁇
彼氏怒らないんかね?
幼馴染は、特別ってやつ⁇
オレがザコいから、ヤキモチすらやきませーんってやつ?
彼氏余裕ぶってんのか?
…
なんか、それも腹立つけどな。
「あの、この前結奈と玄関にいたや…つ…いや、人…が」
思わず、やつなんて口走ってしまった。
いかんね…。
器が小さいと思われるね…。
「あー、そうま?」
…そうまっていうんか。
てか、もう呼び捨てで呼んでるんだ…。
それで、どこまであなたたちは愛をはぐくんで…
いや、そんなことはよい。
「ここにくるってことは…そうまって人と別れた?なんならケンカした?とか…?」
「えー?なにそれ?別れないしケンカなんかしないよ。運命の再会なんだから」
「え?ん?運命の再会⁇」
「そうなんだよ〜、わたし昔ピアノ習ってたじゃない。そこで習ってたのが、そうまなの。二人で、あー‼︎ってなってね。嬉しかったなぁ。懐かしくてつい話とまらなくてさ」
…
話だけ?
とまらなかったのって…話だけ⁇
…
いやいや、またそんなこと考えたら心臓がっ‼︎
「ねぇ和紀、ゲームしよ?」
⁉︎
ゲーム…
それは、いつものぴこぴこするやつよね?
それとも…なに⁇
恋のゲームでもしようっていうん⁇
でも、彼氏持ちの幼馴染と恋のゲームって…
「え、禁断の…恋…?」
「はぁ?何いってんの?ゲームだよー。ほら、はじまるけど?」
あー…ただのゲームですね。
そうですよね…。
オレと禁断の恋なんてしねーよな。
彼氏といい感じみたいですし…。
オレは、そもそも…おとことして見られていないんでしょうね。
あはは…
あははは…
でもね…!
そうまよ‼︎今は結奈はオレのものさ‼︎
今一緒にゲームしてるんだぞ‼︎
ギャハハ、ざまぁなやつめ‼︎
ってはしゃいでみたものの…
ただただ虚しくなったよね。
ただほど高いものはない…。
ただと、安いは違う。
おとこの幼馴染と彼氏も違う…くない?
ん?
なんなん⁇
幼馴染ってなんなん⁇
結奈にとってオレって…なにー⁇
ただのゲーム仲間?
それとも…ただの幼馴染⁇
やっぱりただやん。
オレ、ただやん…
でも、ただほど高いものはないってどういう意味⁇
「あのさ、結奈…オレただ⁇」
「ん?どういうこと?」
「オレって…ゴミ同様?」
「は?そんなわけない」
「なら、有料?」
「えっ…、何が有料?ゲームしてもらうのに手数料とるってこと?」
「とらないよ。」
「じゃあ…何?もしかして…遠回しにオレの部屋にもう来ないでって言ってる?」
「んなわけないよ。…ただって話は、忘れて。意味わかんないよね。オレも言ってて意味不明だったし…はは…」
結奈は、こいつどうしたん?って顔でオレをみたけど、すぐさままたゲーム開始したから、また普通に戻った。
オレは…何やってんだかな…。
そんなオレたちは、意外と今まで通りだった。
結奈は、オレがバイトがないと部屋に遊びに来る。
でもさ、彼氏とどうなったんですかね⁇
ちょいと探りを入れてみることにしたんです。
「そうまとは、どう…なの?」
「仲良いよ。今度ライブ行くし」
「だれの?」
「けしごむパスタだよ?」
「どこでやるの?」
「遠いとこ」
「大丈夫?帰りとか…」
って、オレはなんてこと聞いてるんだろうね…。
彼氏が送るに決まってるか…!
「帰らないよ?泊まりだし」
⁉︎
と、泊まりーっ⁉︎
とまんなよ‼︎
オレの心臓がとまるわ‼︎
なんてこと言い出すんかね…結奈は…
続く。