彼氏
春、それはそれは心地よい温度でオレたちの身体を包み込む。
木々や、お花さんたちもそよそよと風にのってゆらゆら踊る。
洗濯物は、まるでフラダンスを踊っているかのように楽しそう…
…なわけない‼︎
なんだっていうのさ⁉︎
春の嵐ってやつは、マジで最悪だ。
オレは、ピカっピカの一年生だというのに…
新しい制服に身を包んだっていうのに…
なんですか?
雨でおニューの制服は、びっシャりんよ…
靴下だって…ジトーってしておりますね…
それよりも、髪の毛だよ‼︎
せっかくセットしたのに…強風でどうにかなってしまいましたね。
最悪な始まりです。
高校入学早々、ボロボロで帰宅。
しかし‼︎
イヤなことの後には、イイことがありますよね?たぶん…いや、きっと…おそらく…
…
うん、大丈夫‼︎
自信を持て‼︎オレ‼︎ってことで、自信を心のバッグに入れました。
それはそれは、おしゃれなブランドバッグにさ。
でも、それじゃ心がガサばるのでカワイイふわふわのポーチに入れ替えたんだ。
これからオレは、新しいスタートをするのです。
バイトを始めてお金を貯めて、幼馴染にデートを申し込むのです‼︎
学校は、別々ですが家がお向かいさん。
だから離れていても寂しくないってわけで、オレはカーテンをシャーっと勢いよくあけて、幼馴染である結奈ちゃんでも拝見いたしましょうかねぇ♡ってみたら早速結奈ちゃん発見♡
したけどさ…
結奈の隣にいるヤツだれ?
誰っ⁉︎
入学早々…結奈が…オレの知らない男と歩いて帰宅しておりますね。
お父さん…だったらよかったのに…違いますね。
だって、結奈と同じ制服着てるもんね…。
結奈の隣は、いつもオレだったのに…
てかさ、お互い一目惚れして一瞬で恋におちたの?
オレは…奈落の底におちたけど?
…
てかさ、これから玄関先でまさか…キスとかしねーだろーなぁ?
許さん‼︎そんなこと絶対に許さん‼︎
さっさと送って帰りやがれって念をおくると…
まさかの…
そのまま仲良く家に入って行きましたけどぉ?
はぁ⁇
なんだキサマーー⁉︎
ありえますか?付き合ってすぐ彼女の部屋って…
ヤバくないですか⁇
な…な…こういう時って、なにをどう例えればいいですかね…?
頑張ったドミノが、うっかりミスであっという間に倒れたとでもいいますか…いや、まだ頑張ってない…よ。
あーあ…
こんなことになるんなら、もっと早くに告白するべきでした。
とてつもない光景を見てしまったので、目を休める為にアルバムをひらきました。
…
アルバムには、オレと結奈のツーショットばかり。
…なぜにオレはアルバムなんかをひらいたのですかね。
心の傷が痛みすぎです。
急いでアルバムを閉じて、そっと目を閉じた。
…
閉じすぎて、いつのまにかショックのあまり、数時間気絶しておりました。
いや、たんなる昼寝とでも言いましょうかね…?
ってさ‼︎
ヤッベ、夕方からバイトの面接じゃん!
デート誘うためにバイトしようとしたんだけど、目的を失ったバイト…。
面接バックれようかな?って一瞬頭をよぎった。
いや、それは申し訳ないよねってオレの心の天使ちゃんがいうから、仕方なく履歴書を握りしめ…なかった。
履歴書不要でした。
今は、デジタル化が進んでおりますからね。
履歴書の代わりに携帯を握りしめて、玄関を出たんです。
そしたら…
「「あ」」
玄関先でバッタリ結奈と彼氏に遭遇してしまった。
「あ、和紀じゃん」
「おぅ、どうも」
と、オレは彼氏にもきちんと挨拶したよ?偉くね⁇
彼氏は、ぺこりとお辞儀を返してきた。
彼氏って…タラシ男かと思ったけど、めっちゃ優しそう‼︎
オーラがもう…優しいデス‼︎って全力でいってる感半端ない…。
「あの…結奈をよろしくお願いします」
オレはとんでもないことを口走っていた。
すると彼氏は、
「はい!」
と笑顔で返してきた。
な、なんということでしょう…
彼氏は、めっちゃ優しい笑顔で…超絶優しそうなんですけど⁉︎
こりゃ結奈もイチコロなのは、わかります。
えぇ、わたくし敗北いたしました。
「じゃ、オレバイトの面接だから行くわ」
心がキュッと締め付けられた。
心臓病…では、ないと思われますがとにかく心が痛かったのです。
続く。