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異世界恋愛+α(短編)

卑しか女のデバッファー 〜己の恋路を邪魔するクソたわけ〜

作者: いのりん

注意 この作品はr15推奨タグが付いています

主人公は「卑しか女」です。

あと、ちょっぴりえっちに感じる表現があるかもしれません。

私達は4人パーティーの冒険者だ。


「前に出る、援護を頼む」

戦士のアレックス


「先制するよ、『精霊の力をここに、炎帯』」

魔法使いのトム・ホールド


「補助します『主の加護を、風鎧』」

僧侶のジェリー・リトマウス





そして私、妨害とデバフ担当。


「狼男を狙う……『にぶちんになーれ、クソたわけ』」

呪術師のハンナだ。



⭐︎⭐︎⭐︎


クエスト達成後、私達は酒場にいた。


「今日の討伐依頼も楽勝だったな!」

上機嫌で言う、幼馴染のアレックス。


「というより、アレックスが強すぎるんだよね」

「確かに、最近ちょっと格差を感じます……」

ちょっと呆れた顔で言うのはトム&ジェリー

冒険者になってから知り合った仲間たちだ。

ちなみにこの2人は付き合っている、羨ましい。


「皆、突然で申し訳ないけど、私はパーティーを抜けようと思う」

「「「え?」」」


私の発言に、残り3人の声がハモった。


それから、皆が理由を聞きつつ引き留めようとしてくれる。うう、やっぱり良いパーティだなぁ。でも、だからこそ、甘えてはいけないと自分を叱咤する。


理由はさっきトムとジェリーが言ったように、パーティー間でレベル差が開きすぎてしまったからだ。


冒険者は魔物を倒す事で、溢れた魂を取り込んで「レベル」と言うものが上がり強くなっていく。そして、大まかな力量が冒険者カードに表示されるんだけど、その成長限界には個人差が大きい。


現在はこんな感じ。

アレックス 22/31

トム    18/22

ジェリー  16/20

ハンナ   9/9

やだ、私のレベル低すぎ……


私は成長限界だが、アレックス達はまだまだ強くなっていく。そしてアレックスに合うレベルのクエストのモンスターには、私のデバフはもう効かない。だから、パーティーランクもCでとまってしまっている。


そもそも私の職業「呪術師」というのは冒険者登録の際に戦士の身体の強さ、魔術士の魔力、僧侶の精霊力、全てに適性のなかった人しか基本的にはならない。


特技が敵の弱体化だけなので他の職業と違って引退後の生活には全く役立たないからね。そして呪術師になる適性とは「悪いことをイメージしやすい思考回路であること」、つまり、元々才能がない陰キャしかいない、不人気職なのだ。


「私が外れて新しい人を入れた方が絶対にいい。だから、止めないで。特にアレックスには、夢を叶えて欲しいから」


これは、半分本当で、半分嘘だ。


まず、アレックスに夢を叶えて欲しいのは本当。彼は英雄願望があって、昔から騎士になりたがっていた。私達は寒村の出身で苗字を持たない身分だけど、冒険者としてレベル30に達すれば特例として騎士爵が貰える。


魔物の跋扈するこの世界では、特別に強い人は尊敬されるし社会的地位も高くなるのだ。平民や貴族とも結婚できる様になる。最も、相応の義務も負うけれど。



それで今度は嘘のほう。


私がパーティーを抜ける本当の理由は、今後、失望されてから追い出されるのが怖いからだ。


今のメンバーに失礼な考えだというのは分かっている。でも、考えてみて欲しい。お荷物のせいで強い魔物を倒してより高いレベルに上がったり、高い俸給を得るチャンスを失い続けたら?


実際に物足りないのだろう。アレックスはよく休みの日は、他の高ランクパーティーに臨時で混ざりクエストを受けている。トムとジェリーよりもレベルが高いのはその為だ。


ちなみに、私はアレックスのことが好きだ。ライクじゃなくてラブの方で。でも、いずれ騎士になる彼と下級民の私では、いつか離れることになるだろう。


それは仕方ないんだけど、その時彼に「上を目指すのに邪魔だからパーティーから抜けてくれ」とか言われたら?絶望して首を吊ってしまうやもしれない。そうならないうちに、こちらから綺麗にお別れするのだ。


「ハンナの意思はわかったけど……パーティーを抜けた後はどうするつもり?」

「そうですよぉ、呪術師は他よりも連携が難しいのに」

「冒険者は引退する。それで今までに蓄えた知識で薬草の露天商をするよ。正直言ってカツカツになるだろうけど、死なない程度には食べていける……と思う、たぶん。」


それでダメなら花街コースだ。絶対嫌だし本当に最後の手段だけど。ああ、でもそもそも需要がないかもしれない……(ネガティブ)


ん?トムとジェリーが何かアイコンタクトしてる


「宿代は削りようがないのが痛いですよねぇ」

「僕にはジェリーがいるからなー、なんとかならないかなー」

「だれかハンナを泊めてくれる人、いませんかねぇ」

「宿代折半とかでねー」



いやーそんなやつおらんやろー


「なあ、ハンナ。良かったら一緒に住まないか?」


おったわ。アレックスさんや正気ですか?

でも私は卑しか女ばい、お言葉に甘えちゃうよ……


⭐︎⭐︎⭐︎


そんな経緯でアレックスと同棲をはじめてから半年が経過した。薬草の露天商は無事軌道にのり、なんとか食べていけるようになった。


ちなみに現在家賃は折半している。途中でアレックスは私が家事を多くしているから、家賃は自分が多めに出すと言ってくれたけど固辞した。


こちらの都合で同棲させてもらっている身だし、ランクの上がった彼は長期の冒険で外泊も増えたので家にいる時間は私の方が長い。私は卑しか女だが、それでも最低限のプライドはあるのだ。好きな男の前でいいカッコをしたいのもある。


そんな時、トムとジェリーが結婚することになった。そのお祝いで元パーティーメンバーの4人で私達の家に集まり飲み会をしていた。


「2人とも、本当に、おめでとう」

「めでたいな。だが飲み過ぎじゃないか?2人とも」


「ありがとうごらいますぅ」

「いざとなったら、解毒魔法つかうょ〜。それに、こんな時くらいハメはずさないとねぇ〜」


呂律が怪しい、こんな2人をはじめてみた。よほど嬉しく酔っているのだろう。トムとジェリーは肩がくっついてイチャイチャオーラを出している。くっ、羨ましい。


「さて、そろそろお暇しようかぁ。そうそう、お祝いに、秘密のとっておきのプレゼントおいていくよぉ〜。帰ったら2人でアレックスのベッドをみてみて〜」


そう言うと、一旦トムはふらふらリビングを出て行った。


「ところで、2人はもう半年も同棲したけど、一度もそう言う関係にはならなかったんですかぁ?」

「「なってない!」」

「でも〜、正直お互いドキドキしたことはあったでしょう?」

「「……」」


ジェリー、だいぶ酔ってるわね……こんな姿初めてみた。実は絡み上戸なのねこの娘……そりゃあね、私も若いからね、何より片思いしている相手ですからね、ドキドキどころかムラムラすることもありましたよ(半ギレ)!


でもね、アレックスはこの一年全然そんな素振り見せないのよ(泣)


きてくれるなら、正直こちらはウェルカムなんだけどね。


「もう、焦ったいなぁ……えい♡」

「きゃあ!」

「ブハッ!」


ジェリーにスカートをめくられた。

アレックスがむせてる。

ぱ、ぱんつ見られちゃった……?


「ああああ貴女ね……」


「今日のお酒、少し発奮効果もあるやつだったのに、ここまでされてドキドキしなかったら逆にハンナさんに失礼ですよ〜アレックスさん」

「はいはい」

「ドキドキしたでしょ?したっていえ〜」

「ああ、した!ドキドキした!」

「やったー!でも無理やり手出しはダメですよぉ〜」


あははと笑うジェリー。そういえば今日のお酒ってそう言う効果もあるやつか。2人は帰って合意の元で夫婦の営みですかそうですか羨ましいなぁこんちくしょう。


「プレゼントおいてきたよぉ、さあ帰ろうかあ」

「はーい」


そうして2人は帰って行った。

残された私達の間に残るのは微妙な空気。


「あ、あんな2人、初めてみたわね……」

「ああ……」


「ど、ドキドキ、したんだ?……ほ、ほら、お酒の効果もあるし……」

「……ああ」


そのままアレックスはじっとこちらを見てくる。ええっ、マジで?


「……そ、そういえばトムのプレゼントってなんだろうな。見にいってみようか。」


ズコー!でもまぁ、家には避妊具もありませんしね。……お互い酔っているけど幸か不幸か、それくらいの理性は残ってますのよ……ぐすん。





「これは……避妊具だな」

「……避妊具ね……」


ほう、これが特別なプレゼント。なるほどね、なるほどね、トムもだいぶ酔ってたんだね。


アレックスと視線が絡み合う。私の中の卑しい部分が叫ぶ、今がチャンスだと。2人に当てられたからね、酔っているからね、仕方ないよね。


「そ、その……いい、よ。ほ、ほら、お酒の効果もあるし、私も若い女だし興味がないわけでもないし、お互い軽い気持ちで、お試しで今日だけんん!」


唇を奪われた、その後のことは割愛しよう。

大きい剣だったとだけ言っておく。


⭐︎⭐︎⭐︎


同棲から一年が経過した。


半年前「お試しで今日だけ」と言ったな、あれは嘘だ。なし崩し的に私達は何度も身体を重ねている。お互い若いからね、仕方ないよね。


それと最近、アレックスと2人で出かけることになった。いわゆるデートってやつだ。順番逆じゃあないか?っていわれたら、それはその通りだ。うう、私は卑しい女です……


ちなみにアレックスから誘ってくれた。一瞬「まさか、身体を重ねる内に私に気が!?」ってときめいたが高望みはやめておこう。


他の冒険者は一夜だけの過ちでそれっきりとか結構あるらしいし(年増耳)。そして未だに「付き合おう」とか「好きだ」とか言われたことがないしね。


アレックスは今ではAランク冒険者。一般的には、このレベルになると異性からモテモテで色んな相手からデートに誘われるようになる。稼ぎもいいしちょっとした有名人だからね……アレックスも女慣れしてしまったのかな?


そんな中で、私とは身体の関係だけじゃあ流石にばつが悪くなってお情けでデートってことだろう。うう、それでも嬉しい自分にびっくりだよ。完全に都合の良い女になってる……



でも、せっかくなのでデートには気合いを入れていこう。しかし私は貧しい寒村の出身、今までそんな経験がないのでわからんことだらけ。


そこでシティガールのジェリーパイセンの出番だ。なんかこう、化粧やら服で凄いバフをかけてくれた。アレックスも驚いていたけれど、私も鏡みてびっくりしたよ、え、これが私……?


⭐︎⭐︎⭐︎


同棲から一年半が経過した。ジェリーが妊娠して2人は冒険者を引退し、アレックスは新しくSランクパーティーに入っていた。


この頃、私達は身体を重ねるだけでなく、定期的に2人で一緒に出かけるようにもなっていた。未だに好きだとは言ってもらっていないんだけど、正直、今の私達は超超超いい感じなんじゃないかって思っている。上手くいけばワンチャンどこかで恋人になれるんじゃなかろうか。


そんなふうに浮かれながら町を歩いていると、カフェテラスでアレックスと新しいパーティーメンバー達が軽食をとりながら話あっているのが見えた。冒険から帰ってきたんだ、わーい。何話してるんだろう。


そんなふうに浮かれて聞き耳をたてた私は、冷や水を浴びせられることになる。


「もう一年もせぬ内に、レベル30になりそうじゃな」

「アレックス、そろそろ彼女にプロポーズしないの?」

「前にも言ったろ、それは騎士になってから!」

「楽しみにしてるね」


彼女?……楽しみにしてるね??

え?アレックスの前にいる金髪美少女って、男爵令嬢様だよね。すっごいニコニコしてる。


確か貴族にプロポーズするには自分も貴族になる必要があって「それは騎士になってから」ってアレックスが言うってことは……え?…あれ?あれぇ?


家に帰ると、自室に入って鍵をかけて泣いた。帰ってきたアレックスが心配してくれたけど、風邪を引いたと嘘をついた。


浮かれていた反動もあって、悲しくて死にそう……

でも、どこかで踏ん切りつけなくちゃ。

でも、アレックスと離れたくないよぉ……



⭐︎⭐︎⭐︎



「この関係を、解消しましょう」


同棲から丁度2年の、事後のタイミングで切り出した。わざわざ最後、未練がましく一戦終わってから切り出す自分の卑しさにうんざりする。


「え? どうしたんだ、急に」

「この半年、準備はずっとしてきたの。」


元々、独り立ちできるように頑張っていた商売を、より頑張ってしっかりした基盤を築いたのだ。それで先日、一階が小さい店、ニ階が部屋になっている物件も借りた。これでもうアレックスに頼らなくても十分生きていける。


「一緒にいるのが嫌になったのか?」

「そう言うわけじゃない、でも潮時ってあるでしょう。ジェリーには子供も生まれた、私もそろそろ、結婚相手を探そうかなって思っただけ」

「……俺じゃあダメか?」

「口が上手くなったねアレックス。でもそう言う言葉は、聞きたくないな」


てゆーか、このタイミングでそう言うこと言っちゃう?いつの間にか幼馴染がチャラ男になってた。そして流されそうになる私はチョロい女。でも、今日のために私は断固たる決意を固めてきたのだ。


今まで一度もあなたから「好き」って言われたことないよ。だからこの関係は今日でおしまい。……正直、めっちゃ後ろ髪引かれるけれど。





同棲解消の後、とりあえず、踏ん切りをつける意味も込めてトムとジェリーに伝えに行った。二人は頬をキュッと窄めたなんとも言えない顔をしていた。


それから一ヶ月がたった。正直、まだ婚活とかする気にはなれない。仕事をしていた方が気が紛れるので今日も薬草屋を頑張っている。


「いらっしゃいま……」


言いかけて固まった。なんか、店のランクに相応しくないピカピカ着飾った人がきたと思ったら、アレックスだったのだ。


「ハンナ、今時間とれるか?」

「だめ、商売中」

「なら、全部買おう。足りるな?」

「え、ちょ」


アレックスは金貨の入った袋をポンと置いた。確かに店ごと買えるくらいの大金だ。逃げられないと悟った私は、本日閉店の札をかけてアレックスと2階に上がった。


「やっと騎士になれたんだ」

「そう、おめでとう」


律儀に伝えにきてくれたのか。今はアレックス・フォン・ラングハイムってカッコいい名前になったらしい。これは素直に祝福できる。夢が叶ってよかったね。


「今、恋人はいるのか?」

「いないけど」

「なら、いいよな?」


唇を奪われた。


「ちょ、何を」

「好きだ」

「嘘、でしょう?」


口付けも動揺したけれど、何度も身体を重ねた仲だ。それよりも今更好きだと言われたのにびっくりした。


「嘘なものか」

「ちょっと、信じられないな」

「なら、どうすれば信じてくれる?」


ああ、そうか。貴族になったから、もうすぐ男爵令嬢にプロポーズするんだね。それで、その前に昔の女と一回寝ておこうってことだろう。ふざけた話だ。


「じゃあ、行動で、示してくれる?」


そして、それを分かった上でこんなこと言っちゃう私は、もっとふざけた卑しか女。だって、めちゃめちゃ頑張って決して、やっと別れたのに、こんなのずるいじゃん。仕方ないじゃん、まだ好きなんだもの。


また度アレックスが口付けしてくる。

もうどうにでもなーれだ。

今、好きって言ってくれるなら、嘘でも、後で捨てられてもいいや。


……あ、やばい。そういえば、避妊具ないや。でも、もう止まれない。もしデキたらどうしよう、少しなら貯金もあるし何とか育てられるか?でも、私に何かあればどうする?最悪、アレックスなら後見人にはなってくれるかな。





その後のことはあまり覚えていない。


嘘だ。好きだって連呼されながら、疲労で気を失うまでめちゃめちゃにされた。今までいかに手加減されてきたか分かった。高レベルの戦士の体力って凄い。






「いたたた……ん?なんぞ、コレ……」


目が覚めると身体中が痛かった。そして、左の薬指に何か違和感があった。見てみると金色の指輪がハマっている。


「ああ、起きたか」

「ねえ、コレ、なに?」

「婚約指輪だよ、行動で示したろ。結婚してくれ。」


なんですと!?







―――――――――――――――――――――――――


<アレックス視点>


元々、俺はハンナのことが気になっていた。2人で寒村を出て冒険者になったあの日からずっとだ。でも、2年前のあの日、ハンナがパーティーを脱退すると言ったもんで「脈なし」と判断していた。


でも、お互いの恋心に気づいていたトムとジェリーの機転により同棲生活がはじまった。実は身体を重ねたりデートすることになったきっかけも、偶然ではなくて二人の作戦通りだったらしい。


デートの時のハンナは、間違えるほど美しくて驚いたが、後でジェリーに聞いた話では普通の格好をしただけだという。普段の野暮ったい髪型や服装が強力なデバフになっているんだと。


その後デートを重ねたこともあり俺としては完全に恋仲という認識だったのだが、恥ずかしくて「好きだ」とは言えなかった。「全く、好意があるならしっかり伝えなよ」とトムに言われた通りだった。ただ、ハンナも好きって言ってくれなかったし、お互い様ということにして欲しい。あの幼馴染は昔からそう言うところがある。


それと一つ言い訳させて貰えるなら、ハンナがパーティー脱退の時に「アレックスには、夢を叶えて欲しいから」といったから、「ハンナにプロポーズするのは騎士爵をもらってから」と考えていたんだよ。


本人はネガティブ思考と言っているけど、彼女は勤勉な努力家だ。先の不安に備え、薬草屋を成功させたのも尊敬に値する。


妻を養うことは嫌ではないが、ぶら下がる気満々の女を妻にしたいとも思わない。そういう事情もあり、伴侶にするならハンナ以外考に考えられなかった。


ちなみに冒険者ランクが上がって色んな女から言い寄られたが、「稼ぎのいい夫に養ってほしい」って奴ばかりだった。頑なに家賃の折半を譲らなかったハンナとは雲泥の差だ。



それで、もうすぐ騎士爵を貰う段になってパーティーメンバーとその話で盛り上がっていたのをハンナが目撃して盛大に勘違いしたみたいだ。余談だが件の男爵令嬢にはとっくに許嫁がいる。


で、もうすぐプロポーズしようって時にハンナから関係を解消されたときは呆然としたね。幸い、トムとジェリーから連絡をもらって誤解に気づけたが。


―――――――――――――――――――――――――


話を聞いて私は天を仰いだ。


その後アレックスは、すぐに誤解を解消しようと思ったんだけど、ジェリー達から「どうせまた変な勘違いされて拗れるから、さっさと騎士になって指輪でも渡せ」と言われてたんだって。


それで意気揚々と私の元を訪れて、案の定私が「信じられないから行動で示して」なんて言った結果、昨日の事態に繋がったというオチだった。


今までの話を聞く限り、再三のチャンスを自ら潰しまくってきた、クソたわけはだぁれ?


はい、わたしです……



⭐︎⭐︎⭐︎


結婚して10年がたった。


「2人ともぐっすり寝たぞ」

「ありがとね、絵本の読み聞かせしてくれて」


子供の寝室から戻ってきたアレックスがソファの隣りに座る。彼はいい夫だ。しっかり稼いでくるし、浮気なんてしないし、子育ても積極的にやってくれる。そして何より


「なあ、好きだぞハンナ。」

「ふふ、ありがとう。私も好きよ。」


こうやって、好意を伝えてくれてる。寒村出身だった私達は、騎士とその妻として振る舞う中で、今ではスマートに好意を伝え合うことができるようになった。お陰でネガティブ思考な私でも、「いまも愛されてるなー」と実感できる。


ふとした拍子にお互いの手が重なった。見つめあって微笑む。もちろん、大変なこともだってあるけれど、いま、とっても幸せだ。







しかし私はデバフ担当の卑しい女!

ここで旦那の理性に弱体化をかける。


重なった手をいやらしい感じで握り直しながら

くらえ必殺の上目遣いとキメ台詞


「でも、行動でも伝えてほしいなぁ」


私達の戦いはこれからだ!!


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― 新着の感想 ―
ふとした妄想ですが。 デバフ魔法で精子の運動性能を落として、限りなく受精不能状態にすることで、道具を使わずに避妊ができたりしないかなぁ、なんて。 ハンナさん、あなたは全然卑しい女じゃなかとですよ。 …
クソたわけ夫婦めw せいぜいお幸せに!!
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