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村人たちの視線の先に


夜明け前、俺たちは次のごんぎつね作戦を実行するため、村の外れに集合していた。今回は害虫を追い払う薬草を村の畑に植える作戦だ。前回の井戸の水増量作戦が成功したおかげで、村人たちは少しは安堵しただろう。しかし、俺たちの存在がまだ完全に気付かれていない状態で、人間たちの役に立つ方法を見つけ続ける必要がある。


「さてと、今回は畑の害虫を追い払うための薬草をさりげなく植え付けるぞ!」俺は小声で仲間たちに指示を出す。


「リーダー、でもこれも結構危険なんじゃないか?村の畑の周りにはいつも誰かが見張ってることが多いって聞いたぞ。」ネズミ族の一匹が不安そうに耳をピンと立てた。


「確かに、それは問題だ。でもだからこそ、俺たちはゴキブリ族とネズミ族の得意技、すばやい行動と隠れる力を活かすべきだろう?」


俺は軽くウインクをしながら言った。ネズミたちは少しだけ笑顔を見せ、気持ちを持ち直したようだ。


◇◇◇


俺たちは村の畑の方に向かうと、月明かりに照らされた畑の影に潜んで状況を観察した。幸いなことに、この時間帯は見張りが少ないようで、今が絶好のチャンスだ。


「よし、いける。みんな、薬草を持って少しずつ畑に植え付けてくれ!」


俺たちは手分けして、畑の縁に薬草を植え始めた。害虫を追い払う香りを持つこの草は、村の作物を守るのに役立つはずだ。だが、それは一瞬の油断で起こった。


「おい!何だあれ!?ゴキブリとネズミが畑にいるぞ!」


突然、村の見張りの声が響き渡り、俺たちは全員ビクッとした。


「えええ!?見つかった!?」


「ちょっと待って、あいつら今ゴキブリって言ったか?俺のことか!?」


俺は素早く振り返り、仲間たちに逃げる指示を出した。


「みんな、撤退だ!今すぐ離れるぞ!」


俺たちは慌てて草むらに潜り込み、影を縫うようにして村から遠ざかった。さすがにゴキブリの機動力があれば、見張りの人間に追いつかれることはないが、ネズミたちは少し大変そうだった。


「おい、誰かネズミ族をカバーしてやれ!」


ゴキブリ族の一部がネズミたちを背負って走り出し、なんとか全員無事に逃げ切ることができた。


◇◇◇


その日の朝、村では妙な噂が飛び交っていた。


「おい、聞いたか?昨夜、畑に巨大なゴキブリとネズミが出たらしいぞ。」


「なんだそれ?そんなこと本当にあるのか?まさか妖精のいたずらじゃないのか?」


「いや、確かに見たんだ。ゴキブリが薬草を植えてたみたいなんだよ。」


「はあ?ゴキブリが薬草を植える?冗談だろ、それ。」


村人たちは笑いながらも、どこか不安そうに畑の方を見ていた。そしてその日、井戸の水が再び増え、畑に植えられた薬草が害虫を追い払っていることに気づいた村人たちは、さらに混乱していた。


「なんだこれは?まるで誰かが俺たちを助けてるみたいだ。」


「まさか本当にゴキブリたちがやったのか?でも、ゴキブリがそんなことをするなんて信じられない。」


俺たちは物陰から村人たちの様子を見守りながら、少しばかりの安心感を得ていた。


「まあ、見つかっちゃったけど、俺たちの行動が役に立ってることは間違いないな。」


「でもリーダー、これからどうするんだ?もしまた見つかったら、今度こそ村人たちに捕まっちゃうかもしれないぞ。」


「うーん、それも確かに問題だ。でも、このまま黙って見ているわけにはいかない。人間たちと本当に友好関係を築くためには、もっと信頼を得る必要がある。」


◇◇◇


その夜、俺たちは洞窟で次の作戦について話し合っていた。ごんぎつね作戦は確かに効果があるが、いつまでも隠れているわけにはいかない。


「リーダー、もしかしたら人間たちに直接話しかけてみるのもいいかもしれないぞ。」


「直接話す?でもそれって危険すぎるんじゃないか?人間たちが俺たちを敵だと思っている限り、話しかけた途端に叩かれる可能性が高い。」


「確かに…でも、もしかしたら、一人くらいは俺たちの話を聞いてくれるかもしれないぜ?」


俺は仲間たちの提案に少し考え込んだ。確かに、いつまでも隠れているだけでは限界がある。それに、村人たちが徐々に俺たちの存在に気付いていることを考えると、いずれは直接の接触が必要になるだろう。


「よし、次のステップとして、村人たちと直接話すことを考えよう。ただし、全員が危険に晒されないように、まずは俺一人で様子を見に行く。そして話が通じる人間がいれば、そこから友好関係を築いていく。」


「リーダー、一人で行くのか!?それは危険すぎるんじゃないか?」


「大丈夫だ、俺はゴキブリだぞ?何があってもすばやく逃げられる。しかも、俺には人間の言葉が話せるんだ。だからこそ、この状況をチャンスに変えるんだ。」


仲間たちは不安そうだったが、俺の決意に頷いた。次の夜、俺は村の近くに向かい、村人たちの様子を観察することにした。俺が目指すのは、村で一番おっとりとした人物、つまり話が通じそうな相手だ。


◇◇◇


夜が更けてきたころ、俺は村の外れに住んでいる老夫婦の家の近くにたどり着いた。昼間から見ていた限り、この老夫婦は他の村人たちとは違って、何かを怖がる様子もなく、ゆったりとした暮らしをしているように見えた。


「よし、この人たちに話しかけてみるか…」


俺は慎重に老夫婦の家の近くまで進み、物陰から様子を伺った。そして、庭先で薪を割っている老人に向かって小さな声で呼びかけた。


「あの…すみません、ちょっと話を聞いていただけますか?」


老人は驚いたように顔を上げ、あたりを見回した。


「ん?誰かいるのか?」


「ここです、ここにいます。」


俺は少しだけ姿を見せ、老人に向かって手を振った。老人は俺の姿を見て、一瞬驚いたようだったが、すぐに落ち着きを取り戻し、不思議そうに近づいてきた。


「これは…ゴキブリか?いや、待て、お前は話せるのか?」


「はい、私はゴキブリですが、人間の言葉が話せます。実は、村の皆さんを助けるために行動しているんです。」


老人は信じられないような表情をしていたが、俺の言葉に少し興味を持ったようだった。


「ほう…そんな話があるとはな。しかし、何故お前が人間を助けるんだ?」


「それは…俺たちもこの地で共存したいからです。人間たちと仲良く暮らせるようになりたいんです。」


俺は真剣に老人に語りかけた。老人はしばらく考え込んでいたが、やがて静かに頷いた。


「分かった。お前の話、少し信じてみるか。しかし、お前が本当に助けてくれるというのなら、証拠を見せてくれ。」


「もちろんです。何が必要ですか?」


老人は微笑みながら、「まあ、まずは畑の作物がもっとよく育つようにしてくれんかね。最近、害虫のせいで収穫が少なくなってきているんだ。」と言った。


俺はにっこりと笑い、「分かりました。それならお任せください!」と答えた。そして、再びごんぎつね作戦を実行するために、仲間たちの元へと戻っていった。


◇◇◇


次の日、俺たちは再び村の畑に向かい、害虫を追い払う薬草を増やし、畑の土壌改良のための肥料も追加した。今回の作戦はさらに入念に準備し、村人たちに見つからないよう細心の注意を払った。


「リーダー、今度は見つからないようにしないとな。」


「ああ、今回は絶対に成功させるぞ。そして、あの老人に俺たちの存在を証明して、もっと信頼を得るんだ。」


仲間たちは頷き、俺たちは再び影の中から村人たちを助けるための活動を開始した。ごんぎつね作戦パート3は、さらに進化を遂げようとしていた。俺たちの挑戦はまだまだ続く。人間たちとの真の友好関係を築くために、俺たちは影から努力を続けていくのだ。



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