強大な魔物との再戦、命を懸けたガーロの決断
「ふっふっふ…ついに来たな、あのデカブツ!」
俺は草むらに身を潜めながら、眼前に迫ってくる巨大な魔物を見つめていた。準備は万全だ。落とし穴も完璧に仕掛けたし、ナイフやら刃物やらを底にたっぷりと配置してある。後はあの魔物が引っかかってくれさえすれば――。
「おい、ゴキリーダー、本当にこれで大丈夫かよ?」
隣にいるガーロが小声で俺に問いかけてくる。ゴキリーダーってなんだよ。自分でリーダーにしておいてその呼び方はなんか嫌だ。
「大丈夫だ!あの罠にかかれば、一発で決まるさ!ただ…ちょっと問題があるとすれば…」
「おい、何だよ、その『ただ』ってのは。」
「いや、あいつ、前回の戦いでもしぶとかっただろ?落とし穴に落ちたとしても、簡単にお陀仏にはならないかもしれない。」
俺は冷静に言ったが、内心では少し不安だった。あの魔物のタフさは折り紙付きだからな。ナイフや刃物が刺さっても、しばらくは暴れ続ける可能性がある。
「それ、問題だろ!落とし穴作戦は、完璧じゃねえのか?」
ガーロが半分呆れたように突っ込んできた。まぁ、そう言われると確かにその通りなんだけど、俺だって完全にうまくいくかどうかは分からない。でも、今さら引き返すわけにもいかない。
「完璧だよ!でも、万が一っていうこともあるから、そこは臨機応変に対応するのがリーダーってもんだろ?」
「お前、本当にそれでリーダー務まるのか?」
ガーロが心配そうに俺を見る。いやいや、そこは信じてくれよ。俺だって命がけでやってるんだから。
「とにかく、今はあの魔物をここにおびき寄せるんだ。落とし穴が失敗する可能性はゼロじゃないけど、失敗したら…まぁ、なんとかなるさ!」
「なんとかなる、って…。」
ガーロが再び不安そうに溜息をついたが、その時だった。地面が大きく揺れ、巨大な魔物が罠の上に足を踏み入れた。
「よし、来たぞ!みんな、待機しろ!」
俺はゴキブリ族とネズミ族に向かって声をかけ、全員が一斉に緊張した顔つきになった。巨大な魔物は、まるでこちらを見下すかのようにゆっくりと進んできた。
「さぁ…あと一歩だ…!」
俺は心の中で祈るように魔物の動きを見つめた。そして――。
「落ちろぉぉぉぉぉっ!」
俺の叫びと同時に、魔物が踏み出した足が空を切り、その巨大な体が見事に落とし穴へと落ち込んだ。
「やった!成功だ!」
俺は喜びの声を上げ、ゴキブリ族もネズミ族も一斉に歓声を上げた。落とし穴作戦は見事に成功した。あの巨大な魔物は、ナイフや刃物が無数に突き刺さった穴の底で激しくもがいていた。
「これで…終わりだな…!」
俺は安心した気持ちで一息ついた。だが、次の瞬間――。
「グォォォォォォッ!」
魔物の怒りの咆哮が響き渡った。穴の底から突き上げるような声が聞こえ、地面が揺れ始めた。
「な、なんだ!?まだ動いてるのか!?」
俺は驚愕し、すぐに魔物の方を見た。あれだけのナイフや刃物を食らっているはずなのに、あのデカブツはまだしぶとく生きていた。
「だから言っただろ!あいつはタフなんだよ!」
ガーロが叫びながら、武器を手に取った。俺も焦って武器を構えるが、どうやら罠だけでは仕留めきれなかったらしい。
「こ、これ以上どうすれば…。」
俺が動揺していると、ガーロが決然と前に進み出た。
「俺がやるしかないな…。」
「ガーロ!?まさか…お前…!」
俺は彼の覚悟に気づき、慌てて止めようとしたが、ガーロは冷静な顔をしていた。
「俺はもう毒を飲んでるんだ。お前の作戦がうまくいかなくても、この最後の手段があるからな。」
「おいおい、それは本当に最後の手段だろ!?まだ他に方法があるはずだ!」
俺は必死にガーロを止めようとするが、彼は構わず前に進んでいく。
「安心しろ、ゴキリーダー。お前は未来があるんだ。だが、俺はもう十分生きた。」
ガーロはそう言い残し、俺の手を振り払って落とし穴の近くに立った。彼の顔には覚悟があり、その背中からは強い意志が感じられた。
「おい、ガーロ!やめろ!それは無茶だ!」
俺は叫んだが、ガーロは振り向かず、そのまま魔物のもがく穴へと飛び込んだ。
「グォォォォォッ!」
魔物がガーロを見つけ、その大きな顎を開けて噛みつこうとした瞬間、ガーロは笑いながら叫んだ。
「さぁ、俺を食え!そして、その毒でくたばれ!」
ガーロの体が魔物に噛み砕かれた瞬間、魔物が激しい痛みに襲われ、もがき始めた。ブラックマンドレイクの毒が、ついに魔物の体内で効果を発揮したのだ。
「ガーロ…。」
俺はその光景を見ながら、彼の犠牲を目の当たりにして立ち尽くしていた。魔物は毒の痛みに耐えきれず、最後の咆哮を上げた後、ついに動きを止めた。
「終わった…。」
俺は膝をつき、深く息をついた。ガーロの犠牲によって、ついに俺たちはあの巨大な魔物を倒すことができた。
ガーロの遺した言葉――仲間と未来のために
「お前…本当にやりやがったな…。」
俺は泣きそうな気持ちを抑えつつ、落とし穴の底に倒れたガーロの姿を見つめた。彼はゴキブリ族を守るために、自らを犠牲にして戦い抜いたのだ。
「ガーロ…お前の犠牲は無駄にしない。俺たちはこれからも生き延びる。そして、お前が守ってくれたこのゴキブリ族を、俺が導いていくんだ。」
俺は彼に誓い、拳を握りしめた。仲間たちも皆、黙ってガーロの死を悼んでいる。
俺はそう宣言し、拳を天に掲げた。ガーロの犠牲は無駄にしない。彼が命をかけて守ろうとしたゴキブリ族の未来は、俺がリーダーとして導いていく。誰もがこの瞬間をかみしめながら、静かにうなずいた。
「ガーロのこと、忘れないよな…」
ネズミ族のリーダーも、静かに声を漏らした。彼もまた、ガーロの勇気と覚悟に敬意を抱いていたのだろう。ネズミ族とゴキブリ族は、今では立場を超えて共に生きる仲間だ。
「もちろんだ。俺たちはガーロのことを、ずっと胸に刻んで生きていく。」
俺は強く言い切り、仲間たちに視線を送った。全員が疲れていたが、それでも誇らしげな顔をしていた。魔物との壮絶な戦いが終わり、ついに俺たちは勝利を収めたのだ。
「しかしなぁ…こうもすぐ終わるとは思ってなかったぜ。ガーロがいなけりゃ、俺たち全員食われてたかもな。」
ガーロのことを思い出しながら、俺は少し自嘲気味に笑った。作戦は成功したものの、やはりあのデカブツは最後までしぶとかった。だからこそ、ガーロの覚悟がこの勝利をもたらしたんだ。
「でも、やっぱり俺たちの知恵も悪くなかったろ?」
俺はあえて明るく言い放ち、仲間たちを元気づける。すると、ネズミ族のリーダーがニヤリと笑って答えた。
「ま、確かに。あの落とし穴はなかなかだった。俺たちネズミ族も結構頑張ったぜ?」
「そりゃそうだ。あんたたちがいなければ、こんな大きな穴は掘れなかった。」
「ふん、だろ?それにしても、ガーロのあの最後は…すごかったな。あんなに堂々としたやつ、見たことない。」
俺たちはガーロの話をしながら、少しの安堵を感じていた。命をかけた彼の勇姿が、ゴキブリ族とネズミ族をさらに結びつけたのだ。
ふと、俺はガーロが最後に言い残した言葉を思い出した。
「お前は未来がある…。」
そう言って、ガーロは自ら命を投げ出した。彼が託した未来は、俺にとっての大きな責任でもある。だが、その責任を背負って生きていくのがリーダーというものだ。
「俺たちは、これからもっと知恵を使って生きていこう。力だけじゃなく、頭を使って…そして、みんなで力を合わせるんだ。」
俺はそう言って、ゴキブリ族とネズミ族に向かって手を広げた。彼らも一斉に頷き、俺の言葉を受け入れてくれた。
「それでどうする?今度はまた新しい罠を作るのか?それとも他の地下の魔物と戦う準備か?」
ネズミ族のリーダーがニヤリと笑って冗談を言う。俺は笑いながら首を振った。
「いやいや、さすがにもう罠作りはしばらくいいだろ。少し休もうぜ、俺たちだって休む暇が必要だ。」
「だな。あの罠を作るのに疲れ果てたぜ。」
俺たちは笑いながら、しばしの安息を楽しむことにした。戦いが終わった後の平和な瞬間が、これほどまでに心地よいものだとは思っていなかった。
俺たちは、ガーロの犠牲と共に勝利を収めた。彼が守った未来を、俺たちはこれから歩んでいくことになる。知恵と協力があれば、どんな困難も乗り越えられると信じている。
「よし、次の目標は決めたぞ!」
俺は仲間たちに向かって声を張り上げた。彼らが俺に注目する中で、俺は笑顔を浮かべて言った。
「新しい拠点を作ろう!今度はもっと広い場所や武器を確保してみんなでのんびり過ごせる場所を見つけるんだよ!」
「おいおい、また新しい冒険が始まるのか?」
「そうだ!今回も力だけじゃなく、ちゃんと知恵も使うぞ!」
俺は拳を上げ、みんなも一緒に拳を上げた。ガーロの犠牲を無駄にしないために、俺たちは前に進んでいく。これからも、どんな困難が待ち受けていようとも、俺たちは団結して乗り越えていく。
「さぁ、次の冒険に出発だ!」
俺の掛け声に、ゴキブリ族もネズミ族も一斉に声を上げた。そして、俺たちは新しい未来に向かって歩みを進めていく。




