自分の存在を認めさせる戦い
「これで少しは前に進めそうだな…。」
俺はゴキブリ族に一時的に合流し、ネズミ族との対立を避けるための第一歩を踏み出していた。リーダーとの衝突を経て、なんとか無駄な争いを止めることに成功したが、それはほんの始まりに過ぎなかった。
「さて、次は食料だ。」
ゴキブリ族が抱える最大の問題は、安定した食料の確保だった。彼らは狩場を失い、転々と移動しながら他の魔物の巣を襲撃して生き延びてきた。だが、その方法ではいつか限界が来る。俺はそんな彼らを助けるため、新しい食料調達の方法を模索することになった。
「この地下には、まだ手つかずのエリアがいくつもあるはずだ。そこを開拓すれば、ゴキブリ族が安定して暮らせる狩場が見つかるかもしれない。」
そう思って、俺はゴキブリ族の仲間たちと一緒に、地下のさらに奥深くへと探検を開始した。今までの生活では、彼らはほとんど狩場を転々と移動するだけだったが、今回俺が提案したのは、より長期的に食料を確保できる「拠点作り」だった。
「拠点を作る?そんなのうまくいくわけがないだろ。」
反対してきたのは、リーダー派のゴキブリたちだ。彼らはリーダーが長年指揮してきた襲撃スタイルに依存しており、新しいやり方に対して強い不信感を抱いている。
「いや、今まで通りのやり方では持続しないのは明白だ。俺がネズミ族と共存することで学んだのは、安定した資源を確保することの大切さだ。襲撃だけに頼っていては未来はない。」
俺は強くそう言ったが、彼らの表情は険しいままだった。ゴキブリ族内には、リーダーの考えを支持する者が多く、俺のような外部から来た存在が新しい提案をすることに対して、反発が強い。
「お前の言ってることは綺麗事だ。俺たちはこの地下で力を持つために戦ってきたんだ。食料がなくなったら、また他の巣を襲撃すればいい。それが俺たちのやり方だ。」
リーダー派の一人、ゴキブリ族の戦士ガーロが俺に向かって食ってかかってきた。彼は筋骨隆々の体を持ち、力で他を圧倒するタイプだ。リーダーに忠誠を誓い、そのやり方を頑なに信じている。
「おいおい、ガーロ。力だけで解決できる時代は終わったんだぜ。今はもっと頭を使うべき時だ。」
俺は軽く笑いながらそう言ったが、ガーロの目は完全に怒りに満ちていた。
「ふん、頭を使うだと?お前みたいな弱っちいゴキブリが何を偉そうに!」
ガーロは俺に向かって一歩近づき、威圧的な態度を取ってきた。その場にいた他のゴキブリ族も、ピリピリした空気に包まれ、緊張感が高まっていく。
「お前みたいなやつがリーダーに逆らうなんて許せない。ここでお前の戯言を終わらせてやる!」
ガーロが俺に向かって突進してきた。ゴキブリとしての本能が働き、すぐに体をかわしたが、ここで逃げるわけにはいかない。俺はこのゴキブリ族に自分の存在を認めさせるため、ここでしっかりと立ち向かう必要がある。
「おいおい、力で解決しようなんて単純だな。でも、そんなやり方じゃいつか限界が来るぜ!」
俺はガーロの次の攻撃を予測し、彼の動きに合わせて素早く隙間に飛び込んだ。ゴキブリの機動力を活かして、彼の力任せの突進を何度もかわしていく。
「くそっ、止まれゴキブリ!」
「お前もゴキブリじゃん!?」
ガーロは激昂していたが、俺の動きを完全に捉えることはできなかった。俺はこの戦いを力だけでなく、知恵で勝ち抜くことに決めていた。
「力だけじゃ勝てないんだよ、ガーロ。お前たちも早く気づいた方がいい。」
俺は彼の背後に回り込み、わざと挑発的に声をかけた。彼はさらに激昂し、無駄な力を振り回し始めた。
「ふん、見たか?力任せじゃ俺には勝てない。」
ガーロが焦って攻撃を繰り出すたびに、俺は冷静に彼の動きをかわしていった。やがて、ガーロの攻撃は明らかに雑になり、彼の体力が徐々に尽きていくのが見えた。
「もう終わりだ、ガーロ。」
俺はついにガーロの隙を見つけ、素早く彼の動きを封じる位置に移動した。ガーロは体力を使い果たし、膝をついて息を切らしている。
「くそっ…なんで俺がこんなやつに…!」
ガーロは悔しそうにうなだれていたが、俺は彼にとどめを刺すことはしなかった。
「ガーロ、お前が悪いんじゃない。ただ、今のやり方じゃ限界があるってことに気づけ。」
俺はそう言って手を差し出した。ガーロは一瞬戸惑ったが、やがてその手を取った。
自分の存在を認めさせる
戦いが終わった後、ゴキブリ族の仲間たちは静かに俺を見つめていた。彼らは、俺がリーダー派の強者ガーロを倒したことに驚いているようだった。
「どうだ?お前たちも分かってきただろう?力だけじゃなく、知恵も必要なんだ。」
俺はゴキブリ族の仲間たちに向かって、冷静にそう言った。彼らの顔には戸惑いの色が残っていたが、同時に俺の言葉に何かを感じ取っているようだった。
「お前の言うことが正しいのかどうかは分からないが…今日の戦いで、お前の力と知恵を見せてもらった。リーダーがどう判断するかは別として、俺はお前を認める。」
ガーロがそう言って俺に向かって一礼した。これで、俺はゴキブリ族に一歩近づいた。まだリーダーとの対立は完全に終わったわけではないが、少なくとも仲間たちの一部は俺の存在を認め始めたようだ。
「さて、これからが本番だな。」
俺は自分に言い聞かせるように呟いた。ゴキブリ族での対立はまだ続いているが、この地下で新しい生き方を見つけるため、俺は戦い続けるつもりだ。ゴキブリ族の未来を変えるために――。




