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少女コミック 2

少女コミック、というか、萩尾望都作品を、主にSF作品に絞って感想というか思い出を語っていく。


文中の敬称は省略しています。

萩尾望都

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 ちょっと前に、『一度きりの大泉の話』という回想録がでて、あまり’70年代の頃のことを語らないのは何かあったのだろうかと言う、私の疑問が氷解したのだが、軽い気持ちで読めなくなった作品も出てきたのは、副作用というべきか。


 萩尾望都の作品を最初に目にしたのは、『ポーの一族』だとは思うのだが、内容も良く分かっていなかったし、ちゃんとしたストーリーを知るのはずっと後、高校生くらいに、萩尾望都ファンの女子から借りて読んでからだった。それ以来あまり読み返さなかったので結構内容はうろ覚えで、私はここでは語らない(語れない)。

 以下も、あらすじなどはあまり語らず、当時の思い出や感想中心で綴る。


『11人いる!』

 最初に印象にあるのは、『11人いる!』になるだろう。いろいろと思い出の多い作品でもある。

 宇宙大学の入学試験で、10のはずが、11人いる、という状況に陥った受験生たちを描くSF作品。

 未分化の性という、考えたことも無い設定。生物学的なものに小さい頃から興味はあったので(一時期学者になりたいと考えていたこともあった)、そういう生物がいるという知識はあった。それを人間にまで広げて考えたことはなく、面白い設定だと思ったものだ。フロルよりは、ヌーの設定に面白さを感じていた。

 『11人いる!』は、NHKの『少年ドラマシリーズ』の枠でドラマ化されているが、だいぶ不評だった。私はドラマでやると知って無茶だろうと思っていた。漫画のキャラを生身の人間が演じると、コスプレみたいになるものが多いが、これはまさにそうだった。セットに関しては、私の感想としてはだいぶ頑張っていたという印象。キャラの設定も若干、いや、だいぶかもしれないが変わっていて、フロルがその影響を受けていた。

 一緒に見ていた姉たちは、罵詈雑言の嵐だった。ちょっと出演者が可哀そうになるくらい。

 その後に作られた、アニメ映画は、だいぶ評判が良かった。ちょっと、映画の最後の後日談みたいなものが、原作と違うとかいう批評はあった気がする。

 このアニメを取り上げたアニメ雑誌を読んだことがあるが、小松左京と萩尾望都の対談があって、小松左京は、『スター・レッド』のアニメが見てみたいとか語っていた。この雑誌に寄稿していた美内すずえが、NHKのドラマ版をこきおろしていて、読んでて苦笑いしたものだった。

 続編に、『東の地平・西の永遠』、番外編に『タダとフロルの スペース ストリート』があるが、『タダとフロルの スペース ストリート』は、科学解説風のお話で、結構好きだった。


『ウは宇宙船のウ』

 次に記憶にあるのは、レイ・ブラッドベリの作品を漫画化した、後に『ウは宇宙船のウ』として纏められる一連の作品。

 なかでも、『みずうみ』『ウは宇宙船のウ』『ぼくの地下室へおいで』『集会』は、雑誌で読んでいた時から印象に残っていた。姉は、原作付きの作品といのはあまり好みでは無かったらしく、「そういうのがおもしろいの?」という反応だったように記憶している。


『百億の昼と千億の夜』

 この作品を少年チャンピオンで見たときは、びっくりした。なぜ、萩尾望都が少年誌に描いているんだろう、という謎。さっそく、友達から少年チャンピオンを借りて(私は買っていなかったので)、姉たちに見せたものだ。

「え、どういうこと?」とか、「ほんとに萩尾望都? 線が太くない?」とか、姉たちもびっくりしていたようだった。当時はネットのような情報媒体もなく、少年チャンピオンで萩尾望都が連載することはあまり知られていなかったのだろう。

 この作品で、萩尾望都という漫画家を知ったという男性は多いだろうが、元々の萩尾望都の女性ファンには、あまり『百億の昼と千億の夜』という作品は、当時の私の印象では反応は良くは無かったように思う。高校の時の萩尾望都ファンからは、多くの作品を借りたのだが、彼女も、『百億の昼と千億の夜』は、光瀬龍原作だしねぇ、みたいな反応だった。

 私自身、チャンピオン掲載時はこの作品のことは理解できていなかった。光瀬龍という作家は、ジュブナイルの『明日への追跡』とか『夕ばえ作戦』とかのイメージしかなかったし、『百億の昼と千億の夜』は、中学生になって原作を読んで、その後、萩尾望都の漫画版を読む、という経路をたどっている。今ではどちらが良いとは言えない傑作だとは思っている。

 この作品で関わった光瀬龍は、対談も何度かしているが、萩尾望都のことを、”稀有の才能”と絶賛している。

 萩尾望都と光瀬龍の作品としては、『宇宙叙事詩』というものもあり、光瀬龍の文庫の表紙を幾つか萩尾望都が手がけたりもしている。


『スター・レッド』

 私が一番好きな萩尾望都作品。コミックスも買い集めた(たぶん、初めて買った少女漫画のコミックスだと思う)。絵柄もこの頃が一番好きかもしれない。

 姉たちが、今で言うところの”キャラ萌え”な状態なのを良く理解できなかったが、この作品でちょっと分かった気がした。

 ヒロインのセイ(徳永星、セイ・ペンタ・トゥパール)は、当時は年上のお姉さんだったが、年を食ってから読みなおすと、結構わがままで短気なお嬢さんだった。色々と悲劇的な展開をみせるが、サンシャインというキャラクターがいたことが、慰めをもたらしていたように思っている。黒羽とゲンはもう地球に帰ってくることは無いのかとか、エルグはあのままどうなっていくのかとか、色々と気になった作品だった。

 最初に買ったフラワーコミックス版は失くしてしまったので、萩尾望都作品集で買って、またフラワーコミックス版も買い直したりしている。

 アニメ化の話もちらほら出たり消えたりしているらしいが、もう大分いい年になってしまったので、見ることなく終わってほしい気もしている。


『訪問者』

 短編で好きな作品。「トーマの心臓」のオスカーが主役の作品だが、父と子、母と子、夫婦の関係など、人間模様が交錯していて、何とも言えない読後感がある。

 訪問者という意味が、物語の根幹に関わっているのだが、それを理解すると、切ないというかやるせないというか、複雑な感情になってしまう。


『半神』

 昨今傑作として取り上げられることも多い作品。

 ユージーとユーシーという、結合双生児を扱った作品。私が読んだのは、発表されてからしばらくたった頃で、萩尾望都作品集で読んだ。『モザイク・ラセン』に出てきた双子の兄弟が元ネタらしい。それを知って『モザイク・ラセン』を読み直したら、確かにちらっと出てはいた。

 初めて読んだときに、ユージーの最後のセリフ、「こんな夜は涙が止まらない」じゃないが、読んだ後はどういうわけだか涙が止まらなかった。最後のモノローグの前まで普通に読んでいたんだけど。その後、何度読んでもそのモノローグで泣けてしまうので、暫く読まずにいた。

 さすがにこの年になると、涙が出ることは無いんじゃないか、いや、年を取って余計涙もろくなっているから、やばいかもしれない、と、再読するのはためらっている。



 色々と書いているが、端折って書いてこの調子なので、この辺で止めておく。SF作品を主に読んでいる私でも、語り足りないほど多くの傑作がある。

 高校生の頃に、多くの作品(『ポーの一族』や精霊シリーズ、『メッシュ』、一角獣種シリーズ、『銀の三角』等々)を貸してくれた、萩尾望都ファンの子には今更ながら感謝している。知らずに終わったかもしれない多くの作品を若い頃に読むことが出来たのは幸運だった。

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