少女コミック 1
少女コミック、別冊少女コミックも一緒に扱う。
文中の敬称は省略しています。
市川みさこ
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『しあわせさん』(『オヨネコぶーにゃん』)は、たまごという少女が、人語を解する妙な猫を拾った(拾われた?)ところから話が始まる、ギャグコメディ。人語を解するといっても、当初は喋ることはできずに、セリフを書いた紙を吹き出しのように掲げてコミュニケーションを取るという方式。猫の名前は暫くついてなかったが、途中から、オヨヨ、オヨヨネコ、と呼ばれるようになる。
読み返してみたが、オヨヨ、というのが口癖だからオヨヨになったと思っていたが、さほど、オヨヨとは言っていなかった。
アニメにもなっていて、オヨヨは最初からテンポよく喋っている。アニメに合わせて、漫画も途中から『オヨネコぶーにゃん』になったようだが、その経緯は知らなかった。 アニメでは、名前がオヨヨからぶーにゃんに変わっていたらしい。
私が就職して、暫くたったころ、オヨヨが銀行のマスコットキャラクターになっていたことがあって、結構でかでかと壁にオヨヨの姿が描かれていた。たしか、ローマ字でOYOYOとか表記されていたような記憶がある。懐かしく見ていたが、一緒にいた同僚は全く知らなかった。逆に、なんでそんな漫画を知っているんだ、と不思議がられた。
たちいりハルコ
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『ピコラ・ピコラ』は人語を話す、大きなインコのピコラと飼い主のコミイのコメディ。正直、インコなのか、別の生物なのか、ちょっと気になっていた。突如現れて、コミイに厄介になるピコラだが、最初はほぼ喋ってはいないが、途中から普通に会話するようになっていた。
デジタル版で読めたが、オヨヨがゲストで出ている回があったのを見ていて思い出した。読み返してみて、作者のたちいりハルコは、スヌーピーっぽい省略した絵柄だが、構図や背景などからはかなり達者な絵を描く人だと改めて認識できた。
小学館には、小学〇年生という学年別の雑誌があるが、そちらでも、『パンク・ポンク』という、巨大なウサギがでてくる漫画を描いている。複数の学年で連載していたようなので、こちらを記憶している人も多いだろう。
上原きみこ
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1960年代から活躍するベテランだが、私の記憶にあるのは、『ロリィの青春』。
『ロリィの青春』は、ロリィと言う少女が、ハッピーという馬とともに、馬術で活躍していく物語。
ロリィも母子家庭なうえに、序盤で母親が亡くなる、という不幸な展開。キャンディといい、昔の少女漫画のヒロインは不幸から努力と根性(と幸運)で頑張っていくというストーリーが多かったのだろうか。
ハッピーという馬も、結構人語を喋ったりしていて、ファンタジーな要素もある。馬と言うと、当時は、ハイセイコーと言う競走馬が異様に人気があったが、女子中高生にも人気があったそうだ。
この漫画は姉が好きだったと思うが、小学生のころ、同級生の女子が描く漫画っぽいイラストは、いがらしゆみこか、上原きみこっぽい絵柄が多かった気がする。
他には、『マリーベル』というフランス革命期を舞台にした作品も記憶にある。
一時、竹宮恵子がアシスタントをしたことがあると、竹宮恵子の著作で知った。『ロリィの青春』の頃には、主婦として子育てをしながらの漫画執筆だったようで、苦労されたようだ。
竹宮惠子
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竹宮恵子、という表記に馴染んでいたので、いまでも間違える。
最初の記憶は『ファラオの墓』だろうか。古代エジプトを舞台にした漫画、という以上のことは知らないのだが、少女コミックで扉絵とか、断片的なシーンとかはなんとなく覚えていた。
その後、記憶にあるのは『風と木の詩』になるわけだが、同性愛というものは、神話やら歴史やらが好きだったこともあって、そういうものがあるということは、小学生の時点で知ってはいた。ただ、それを映像で見ていたわけではないので、インパクトは強かった。中学生のころに、女子がきゃあきゃあ言いながら読んでいて、男子は女子が変な漫画を読んでいる、という感じだった。内容を知っている私は、学校に持ってくるなよ、と思っていたものだった。
SF作品も多く手掛けているが、『地球へ…』が一番のヒット作だろうか。映画にもなったし、テレビアニメも後年作られた。単発のアニメにもなった、光瀬龍原作の『アンドロメダ・ストーリーズ』、色んなSF作品などを題材にした『私を月まで連れてって!』等がある。私は、手軽に読めた『私を月まで連れてって!』が一番好きな作品だ。
改めて振り返ると、少女コミックの掲載作品よりは、それ以外のSF作品を多く読んでいることに気が付く。漫画以外では、サンリオSF文庫で、表紙や挿絵を描いていて、それもよく覚えている。
この人もわりとテレビなどのメディアで見かけることが多い印象。大学で漫画についても教えている。
インターネットが当たり前になった、1990年代後半くらいから、24年組とか、『大泉サロン』とか、少女漫画家を纏めて表現するような言葉を見る機会が多くなったが、少年漫画家の『トキワ荘』のように、当の本人たちから語られるのを見たことがないことに少々違和感を感じていた。漫画評論家とでもいうような人達が後付けで命名したもののようだ。『少年の名はジルベール』という、主に70年代の頃を語った竹宮惠子のエッセイを読んでもそれは伺えた。
高橋亮子
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『水平線をめざせ!』が一番印象に残っているだろうか。喘息の静養のため、東京から空気のきれいな日本海側の祖父の家に越してきた片岡七海。海で出会った兄妹の兄、高瀬一美と成り行きから音楽活動をしていくことに。
柔らかくて可愛い感じの絵柄で、少し軽いノリがありつつも、テーマというか、人間模様が時折重く苦しい感じの作品だった。何というか、時々転んでも起き上がって進んでいるのだが、少しづつ、私が思っている方向とはずれたところへ向かっているというか、そんな、もどかしい感じが読んでいてした漫画だった。
音楽を扱っているし、苦手な要素も多いのに、気にして読んでいたのは、主人公の無垢な感じが、ハッピーエンドへ向かってくれるんだろうという、期待のようなものもあったのかもしれない。四巻までコミックが出ているが、ちょっとすっきりしない、続きを期待させるような終わり方でもあった。このため、一時期、続きは無いのだろうかと探していたことがあった。
『坂道のぼれ!』というこの前の作品も覚えてはいるが、読んだ時期で漫画に対する印象と言うものは大分変化するものなので、この作品の頃はまだ人と人の関わりとか人間模様だとかには興味が無かったのだろう。
渡辺多恵子
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渡辺多恵子といえば、『ファミリー!』か。
ロサンゼルスに住んでいるアンダーソン一家と、アンダーソンのもとにやってきたジョナサンと犬のアダムの物語。
ジョナサンが家族に加わるまでが最初のストーリー。舞台がアメリカということもあるが、アメリカのホームドラマっぽい雰囲気もある。主役が長女のフィーだが、男の子っぽい雰囲気で、つい主人公と言ってしまいたくなる。印象的なだったのは、ママのシェレンで、天然ボケという言葉は当時は無かったと思うが、そんなキャラクターがちょっと珍しく感じていた。
女子の間ではとても人気があった漫画で、どちらかというと、マンガ好きよりは、時折漫画も読むくらいの一般の女子に人気があったように思う。大抵は、漫画雑誌なんて小遣いから一誌を買うくらいが普通で、私の家みたいに、幾つも漫画雑誌を買っている家庭というのが珍しいだろう。高校で回し読みをしていた頃は、「私、こんなに漫画読んだの初めて」と言っていた子が何人かいたくらいだ。
アニメ化もされていたようだが、まったく知らなかった。テレビ東京のアニメは殆ど放映されることのない田舎だったのでしょうがないか。
他の作品では、『風光る』という新選組を扱った作品が十年以上の長きに渡って連載されている。
惣領冬実
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『白い雨のリフレイン』という読み切り作品が印象に残っている。
大学生の魚住連は、友人の真鍋、五十川とコンテストにだす8ミリ映画を作ることになったが、絵コンテを頼んだ相手が、中学時代のクラスメートの神園品子だった。中学のころ、品子に惹かれていた漣だったが、再会したことで、その思いが蘇り…。
デビューから間もない頃の短編だったようだが、私はこの短編が一番記憶に残っていた。ただ、タイトルを失念していたので、探すのに苦労した。読んでいた時期から、たぶんこの作品だろうと目星をつけたが、ネットで検索しても出てこない。図書館へいって当時の別冊少女コミックを見て、ようやく記憶が補間できた。
惣領冬実がデビューしたのは、1982年の4月だそうだから、6月号のこの作品は二作目くらいだったのだろう。読んだ当時は新人だとは思っていなくてベテランの作品みたいに、妹の恋愛話から始まる書き出しから、綺麗に纏まったストーリー展開で終わりまでもっていく語り口が上手くて、周りにこの作品が面白い、と言った記憶があるが、周りの反応はそれほどでもなかった。
後に、ドラマ化された『MARS』、SFの『ES -Eternal Sabbath-』が代表作だろうか。ボルジア家の話は、星野之宣の『ボルジア家の毒薬』で知ったが、惣領冬実も『チェーザレ 破壊の創造者』という作品を描いていて、近年での代表作となっているようだ。