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2050  作者: 落川翔太
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五月三十一日。東京


その翌日、真平は両親が死亡してしまったこともあり、田中巡査部長と相談し、三日間、休みをもらうことにした。

 真平は、その日の午前中、両親がいるという東京拘置所へ向かった。

 そこへ着き、受付の男性に話を聞く。真平が両親の名を明かすと、二人は今朝、処刑された旨を伝えられた。もう殺されてしまったかと、真平は残念に思った。

 ちょうどその時、若い男性が警察官の男二人に連れてこられていた。大学生くらいのように見えた。彼は今から処刑されるという。

 真平は、改めて現状を知る。やはり、人間が処刑されるというのは無惨で、残酷である。

 もう自分の両親は処刑されてしまったのだ。そう思うと、真平は悲しくなった。

 そして、真平は一人になってしまったことに気付いた。

 ここにいても気味が悪いので、すぐにここを離れようと思った。

 その後、真平は実家へ行くことにした。

 実家へ着いて、真平は家の中へ入った。そこには誰もいなかった。つい、この間まで両親が住んでいた家。部屋はもぬけの殻である。

 真平は懐かしさと同時に、一人になったことを実感し、急に寂しさが募る。

 ダイニングへ行くと、そこに仏壇があった。それは、昔亡くなった祖父母のものである。

その後、真平はそこに両親の写真を置こうと思い、寝室の押し入れから二人の写真を探した。しばらく探していると、若い頃の二人の写真を発見した。

 真平はそれを仏壇に飾ろうと思った。写真立てがあればと真平は考え、近所の百円ショップで買おうと思った。すぐにそこへ行って写真立てを買い、実家へ戻る。

 その写真立てに二人の写真を入れ、真平は仏壇に置く。それから、線香に火を点けた。真平は手を叩き、目を瞑る。

 お父さん、お母さん、守ってやれなくてゴメン!

 そう思いながら、真平は瞑想する。天国に行っても、幸せにね――そう心で呟いて、目を開けた。

 それを終えた後、真平は家の中をぐるりと周る。昔のことを思い出し、思い出に浸っていた。通帳や印鑑、祖父母の写真と両親の写真立てなど必要そうなものは自宅へ持って帰ることにした。

 それから、この家をどうするかを考える。両親がいなくなった今、この家に用はないと真平は思った。結局、真平はこの家を売ることに決めた。

 お腹が空いてきたのでそこを後にして、近くのファミレスで軽食を取ることにした。

 サンドウィッチとコーヒーを注文する。しばらくして、それらがやって来たので、真平はそのサンドウィッチを頬張り、コーヒーを啜った。

 食べ終えて、真平は自宅へ戻った。

 そこへ着いて、リビングのソファに座る。眠くなってきて、真平はそのソファで横になった。しばらくすると睡魔に襲われ、気が付けば眠っていた。

 真平はちょうどパトロールをしていた。

 歌舞伎町(かぶきちょう)で若い男二人が喧嘩中、一人の男がうっかり日本語を喋ってしまったと通報があり、真平はそこへやって来ていた。

「日本語を喋ったのは、どなたです?」

 真平が二人にそう訊く。

「こいつだよ」と、黒髪の長髪の男がサングラスの男を指して言う。

「ちげーよ、こいつだよ」と、サングラスの男が黒髪の長髪の男を指して言った。

「いやいや、お前だよ!」と、黒髪長髪の男。

「いやいや、こいつだよ!」と、サングラスの男が言った。

「本当はどちらです?」

 真平は再び彼らに訊いた。

「こいつです!」と、黒髪の長髪男がサングラスの男を指して言う。

「あなたが言ったんですね?」と、真平が訊くと、「俺じゃねえって」と、サングラスの男が喚いた。

「俺だって証拠はあんのか?」

 サングラスの男が訊く。

「それは、俺が聞いてたから」と、黒髪長髪の男が言った。

「他にそれを証明できる人はいるのか?」

「いや、いないけどさ……」

「でも、通報が入っているので、二人のどちらかだと思いますけど?」と真平が言うと、「お前通報したのか?」と、サングラスの男が黒髪の男に訊いた。

「いいや、してないぞ? したのはお前か?」と、今度、黒髪の男がサングラスの男に訊いた。

「いや、してない」

「じゃあ、誰がしたんだよ!」

「多分、二人を目撃した誰かですね」と、真平は言った。

 すると、二人は目を丸くした。

 それから、真平は口を開く。

「その通報者の情報だと、日本語を喋ったのはサングラスの男性だと仰っています」

「え? 俺?」と、サングラスの男が驚く。

「だから、言っただろ? お前だって」と、黒髪の男がにやりと笑っている。

 真平はその男をすぐに逮捕しようとした。

「なあ、警察の兄ちゃん。ここはひとつ逃してくれないかな?」

 それから、サングラスの男が言った。

「それは、できません!」真平は大声で言う。

 すると、いきなりサングラスの男が真平を殴った。

「うっ!」

 真平はよろめき、地面に倒れてしまう。それと同時に、胸ポケットから拳銃が飛び出した。そして、黒髪の男がその拳銃を拾い、真平にそれを突き付けた。

「やめろーー!!」

 真平は大声で「日本語」で叫んだ。

「おい、今なんて言った?」

 サングラスの男が「日本語」で真平に訊いた。

「今、やめろって、言ったな?」と、黒髪ロングの男が日本語で言った。

「ああ、聞いた聞いた。これは、サツを呼ばないとな?」

 それから、サングラスの男が日本語でそう言い、彼はポケットからスマホを取り出し、英語で110番通報した。

 すぐに真平は捕まり、気が付けば処刑場へと連れてこられていた!

 真平は処刑台に立たされる。真平の顔の前には刃の付いた機械があった。これがギロチン台であることがすぐに真平には分かった。もうじき処刑される。真平は恐怖で一度、目を瞑った。しかし、まだ刃は落ちてこない。なぜだと思い、目を開けた瞬間に、その刃が勢いよく落下した!

 

 はっ! と目が覚める。

 真平はそれがすぐに夢だと気付いた。心臓がバクバクと鳴っているのが分かる。

 嫌な夢。最悪な気分だった。

 疲れているのかもしれないなと、真平は思った。

 台所へ行き、冷蔵庫から缶ビールを取り出す。プルタブを開け、真平はそれを流し込むように飲む。

「ぷはー」と、息を吐く。そのビールは冷えていて美味かった。

 ビールを飲んで、真平は少し落ち着いた。

 それから、夢で良かったと安堵する。しかし、その後すぐに両親が亡くなったことを思い出し、思わず涙が出た。

 これは夢でもあるが、現実でもあった。

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