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2050  作者: 落川翔太
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二月四日。東京・霞が関


「異動なんだってね」

 真平は同僚の草間貴一(くさまきいち)に言った。

「ああ」と、草間は頷く。彼は茶髪の短髪で、鼻が高く、背も高いイケメンである。しかも、肌まで綺麗なので、職場の女性たちからモテている。

「どこに異動するの?」

捜一(そういち)だよ!」

「へー、華の捜一(はなのそういち)か! すごいじゃないか!」

「華の捜一って言うけど、別に大したところじゃないよ……」

「いやいや、交通課に比べたらすごいよ!」

真平がそう言うと、「交通課だって、立派だろ?」と、彼は得意になって言う。

「捜一に比べたら、華がないよ」

「まあ、確かに地味だけど、それが交通課の魅力と言うか……」

「なんだよそれ。あ、そうだ! 部長が草間の異動を祝して、送別会をやろうって言ってるよ」

「あ、本当? それは嬉しいな。いつだい?」

「今晩とかどう?」

「今晩か……うん、平気だよ!」

「じゃあ、そうしよう! 部長にも伝えておくよ!」

「分かった」

 そうして、その夜、交通課のメンバー全員で、草間の送別会が行われた。駅の近くにある居酒屋である。

「草間くん、おめでとう! 四月から捜一だってね」

 田中亮二(たなかりょうじ)巡査部長がニコニコしながら草間に言う。田中巡査部長は、坊主頭のぽっちゃりとした男で、紺色のスーツを着ている。

「はい。僕としてはすごい嬉しいです。念願だったので!」

 草間は嬉しそうに言う。

「そうかいそうかい。私としても嬉しいよ」と、部長は微笑んだ。

「部長、ありがとうございます。田中部長には色々とお世話りなりました」

 草間はそう言って、田中巡査部長に頭を下げる。

「そっちにいっても、頑張れよ!」

「はい!」

「さあ、今日は飲んで飲んで!」それから、部長が言う。「草間くん、お代わりは平気かい? 私はビールを貰おう。皆も飲んでくれ」

 そうして、あっという間に、その送別会が終わる。

 四月になり、草間は捜一こと捜査第一課(そうさだいいっか)へと異動を果たした。

 そして、一か月が経った頃である。

「草間が捕まった!」と、田中巡査部長が言った。

「え? 本当ですか?」と、真平が驚く。

「ああ、本当だ!」と、田中巡査部長が頷いた。

 草間とは、草間貴一のことである。真平のいる交通課の元警察官であり、真平の同僚でもあった。

「なぜ草間が捕まったんです?」

 真平は田中巡査部長にそう訊く。

「捜査中に、ふと言ってしまったらしい……」

 話によると、事情聴取の際、被害者と話している時に、うっかりと日本語を喋ってしまったのだという。

「そんな……」

「ひどい話だよ。警察官が捕まるなんて……」

 実際、今までに警察官が事故に遭って亡くなったり、汚職などで捕まったりしたケースも多々あった。しかし、今回のケースはこれが初めてだろう。

 いや、最近になって、署内でもそのケースは増えていた。

 例えば、捜査第一課の警察官が事件の捜査中、ついぽろっと「日本語」を口にしてしまうことが多発していた。それで、検挙されてその人物が逮捕される。

 実際に、メディアなどでもそれらの事件がよく取り上げられていた。警察官である真平にとって非常に心苦しいことであった。

 それから、真平は不安も感じていた。同じ警察官としてである。自分が仕事中などで、「日本語」がついポロっと口から出てしまうことだってあるだろう。

 今までテレビなどで、政治家や女優などといった真平とはかけ離れた人物たちが逮捕されていたが、自分の身近な人物が逮捕されたとなれば、より恐怖を感じずにはいられなかった。自分がいつ死んでもおかしくはない。真平はそう思うと、不安や恐怖で一杯だった。

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