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2050  作者: 落川翔太
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一月七日。東京・霞が関(かすみがせき)


「小松原くん!」

 議長に名前を呼ばれた小松原充雄(こまつばらみつお)は席を立ち、壇上へ上がる。グレイヘアで眼鏡を掛け、グレーのスーツを着たいかつめの男だ。

「はい。自由人生党(じゆうじんせいとう)の小松原です」

 彼は英語でスピーチをする。「総理にお聞きしたいのですが、消費税十%から十五%まで引き上げようとお考えのようですが、現在の経済状況では景気が上がらず、賃金も上がっていない訳です。さらに、物価の高騰によって国民は悲鳴を上げている訳です。ここは、消費税の引き上げをするのではなく、八%、いや五パーセントまで減税するのはいかがでしょうか?」

「内閣総理大臣 江頭裕太(えがしらゆうた)くん」

 それから、議長が総理の名前を呼んだ。

 総理が登壇し、英語でスピーチを始める。総理は白髪の短髪で黒色のスーツを着ている。

「えー、現在の経済状況において、物価の高騰により国民の皆様が悲鳴を上げているのは重々承知しております。ですが、賃金が上がっていないと仰いましたが、年々少しずつ上昇しております。さらに、景気の面においても、徐々にではありますが、回復しております。

 消費税を十%から十五%まで引き上げ、企業における賃上げを目指していきたいと考えております。それによって、物価高騰の波を抑えていきたいと私は考えております。ですから、そのためには必要な措置だと私は考えているのです」

「今まで消費税を増税して、景気や賃金が上がったことがあるでしょうか?」

 小松原は反論する。

「だから、先程にも申しましたが、こちらのグラフにもある通り、年々少しずつですが、賃金が上がっているじゃあありませんか!?」

 配られた資料を指しながら小松原のその反論に総理がすぐにそう答える。

「確かにそうかもしれません。しかし、年々少しずつだったら、減税を取り入れていって、徐々にではなく、もっと分かりやすく一気に上昇させた方がいいに決まっています。これに関してはどうお考えです?」

「江頭くん」と、議長が呼んだ。江頭総理が口を開いた。

「例えば、減税をしたとしましょう。今、私たちが積み上げてきた収支はどうなるでしょう? 防衛費、公共事業費、社会保障費、経済協力費、国債費、そして、地方交付金など様々な費用が少なくなる他、社会に甚大な影響を与えるのです。要するに、メリットよりデメリットの方が大きい。となると、やはり、増税したほうが宜しいのです」

「増税したって、デメリットはあるじゃないですか!」

「もちろん、ありますよ」

「だったら、増税も減税もしなくていい!」

「それでは変わりません」

「……………」

 小松原は黙ってしまう。それから、少しして、彼は口を開く。

「増税、増税って、なぜそんなに増税にこだわるのか!」

 それから、彼は「日本語」でそう言った。

 すぐに会場が騒然とした。

 小松原と対等に話していた江頭総理も目を丸くしていた。

「あ……しまった」

 彼はそう日本語で呟いた。

「全員、静粛に!」

 その後、議長が大声で叫んだ。

「本日はここで閉廷します。小松原くんは即座に退席してください」

 議長がそう言うと、小松原は立ち上がり、秘書の男性と一緒にその会場を出て行った。

 それから、彼は秘書と車に乗り、警察署まで向かった。

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