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小さなお得の積み重ねが大きな損失をもたらす。

作者: ムクダム

せっかちな消費の先に待ち構える落とし穴に気をつけよう。

 定額で〇〇し放題というサービスが隆盛を極めている昨今、果たしてより大きな得をしているのは誰なのだろうか。1枚のCDを買う値段より安い金額で無限とも思える音楽の選択肢を得ることができる消費者は、大変な得をしているようにも思えるけれども、商売である以上、供給する側が消費者より儲かるようになっているのが普通だ。それが出来なくなった(又はその見込みが強くなった)場合はサービスが終了するだけである。

 サービスに料金を払う側も、値段以上のものを得ようとできるだけたくさん消費をしようという気持ちが働き、結果として、供給されたサービスの量と料金を比較すれば損はしていないという考え方があると思われる。しかし、損をしないようにたくさん消費するという行動の先に、大きな落とし穴が待っているように感じる。

 対価を支払った何かを得ようとする時、人は支払う対価と得ようとしているものが釣り合っているかを考えることになる。市場での価値だとか、歴史的な価値だとかということだけではなく、自分にとってどれだけの価値があるかを考えるのだ。他人にとっては価値がないものであっても、自分がその価値を認めたものであれば、人は対価を差し出す。その繰り返しの中で、人間は自分の個性を磨いていくのだと思う。

 しかし、定額サービスの元を取ろうと限られた期間にたくさん消費をしようとすると、自分にとって何が大切かを考える時間が削られてしまうように思える。通常の買い物は、基本的に買ったらそれまでの一発勝負だ。それゆえ半ば強制的に、本当にそれは自分にとって大切かを考えさせられることになる。定額サービスの場合、気に入らなかったらすぐに別のものに切り替えることができるため、上記のことを考える時間が安易に省略されてしまう恐れがある。

 価値観、自分にとって大切なものは何かという考えは、人間の数だけ存在するものであり、大袈裟に言えばそれこそが個性の形なのだ。流されるままに消費を続けることは、個性をなくすことに等しいとも言える。

 世の中には、小さなお得(利益)を人々の鼻先にぶら下げて、より大きな利益を自分のところに引き寄せようとする動きがあちこちで見られる。肝心なのは、得をする人がいれば、その分だけ他の誰かが損をするということだ。小さなお得感のために、自分の手からこぼれ落ちたものがあるということを頭の隅に置いておいた方が良い。削り取られているのは、自分という人間を築き上げるための道具であり、金銭よりずっと大事なものだと私は考える。

 それにしても、広告にまみれたインターネットは、テレビや新聞などの旧来のメディアを超える悲惨な状況になっていると感じる。新しいプラットフォームやインフラが出来ても、結局は儲け主義がそれらを染め上げてしまうというのは悲しい。そういったことを是とする人間という生き物が抜群に悲しい存在ということだろうか。

終わり

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