念願の再開
途中視点変わります。
◆◇◆◇
転生してから16年がたった。
毎日彼を探しているが見た目が同じとは限らないので会って直接話をして見極めている。しかし一向に見つからない。しまいには俺が男色家だという噂が流れ始めた。噂なんてどうでもいいが父上や母上はそうもいかないようだった。
「ヘリオス、お前ももう16だ、そろそろ婚約者を見つけなければならない」
「好きでもない人とは結婚できかねます」
「そうは言ってもお前は王位継承権第一位、この国の王子として男色家などと噂されては困る!」
「弟のエリアスがいるので大丈夫ですよ」
近くにいた弟になすりつける。
「兄様!僕は王様になりたくありません!」
この弟は何かと理由をつけて王位を俺に押し付けてくる。王位なんて面倒臭いと思っているのだろう。よく頭の回る弟だ。
「エリアスもこういっている、それにまだ幼い、どれ、お前にちょうど良い娘がいる、歳も近く、美人だぞ」
「そうですか」
心底どうでもいい。
「そう言わず肖像画だけでも見るといい、執事に渡しておく」
肖像画を見ても気持ちが揺らぐことはない、俺が想う人はただ一人しかいない。
「気に入ったらなら見合いの場を作るから言いなさい」
「...分かりました、失礼致します」
執務室を出て長い廊下を歩く。
「どこにいるんだ...」
考えるのは彼のことばかりだ。
部屋に着いた。
執事から肖像画を渡される。
「どうか、陛下のお気持ちもご理解ください...」
「わかっているよ」
椅子に座って肖像画を開く。
「?!」
そこには探し続けていた彼の姿があった。
もう一度よく見ると女の子になっていた。
彼のことを想い続けるあまり、目の錯覚まで起こすようになったのか...?
ナディア・エバンス...。公爵家の令嬢か。
「一度会って確かめよう」
「...お会いになられるのですか?」
「あぁ、父上に伝えてくれ」
「かしこまりました」
必死に隠しているようだが嬉しそうなのが丸わかりだ...。
◆◇◆◇
見合いの日はすぐに決まった。
準備を終えて庭園へと向かう。時間通りのはずだが、もうすでに来ているではないか。父上が早く移動させてしまったのだろう。
話をしているようだ。
「遅れて申し訳ありません、父上」
「やっと来たかヘリオス!ナディア、そやつは我が息子ヘリオスだ、ヘリオス、こちらはエバンス公爵家の娘、ナディアだ」
軽く礼をされたので返す。
紺色の髪に金色の瞳がよく映える...。そう思った。そしてどこか懐かしい。
「ちょうど良い、ヘリオスに庭園を案内させよう、ナディア、返事はそれからでも良いだろうか」
返事...?
「分かりました、そうさせていただきます」
「ではヘリオス、案内を」
「はい」
...まぁ彼女に聞けばいいか。
「お手を」
手を差し出す。
「ありがとうございます」
椅子から立ち上がったのを確認して今度は腕を差し出す。
「では庭園をご案内致します」
◆◇◆◇
王城の庭園は広い。
まるで迷路のようですね。
第一王子殿下が説明をする。
「ここら一帯は薔薇が多いです、あちらは季節ごとに花が変わります、今はネモフィラの花畑になっていますね」
1輪だけ咲いている花がある...。
「こちらの青い花は何ですの?」
「そちらの花も薔薇ですね、ブルームーンと言います」
へぇ...!知らなかったです!
「詳しいのですね!」
殿下が驚いたような顔をした。
と思ったらすぐに貼り付けた笑顔に戻った。
「花がお好きでしたら温室もありますが、ご案内致しましょうか?」
「!!」
花は良い、見ていると癒される。王城の温室、どんな花があるのでしょう。気になります!
「お願いします!」
あれ?殿下が固まった。
「...殿下?」
「あぁ、いや、行きましょうか」
「はい」
見れば見るほど顔が良いですね。
「本当に男色家なんですか?」と聞いてみたい。
ボーッとそんなようなことを考えていたら転けた。
「ぅわっ...」
がしかし殿下が受け止めてくださったようだ。
「大丈夫ですか?」
「助かりました、ありがとうございます」
笑ってみせる。
また殿下が動かないです...。お腹に回された腕をそろそろ離して貰いたいのですが...。
殿下が口を開いた。
「...渚」
「えっ...」
今なんて...?渚?
それは私の前世の名前です。それに今殿下が伊織に見えた気がします。聞いてみるしかない。
「どうしてその名前を...?」
「...本当に渚なんですね、ずっと、ずっとあなたを探していた...!」
今にも泣き出しそうな顔で言われた。
もしかして...
「伊織...なんですか?」
「そうです、覚えていてくださったんですね」
抱きしめられて顔を覗き込まれる。
「前世のときからあなたが好きです」
そんなに面と向かって言われるとさすがに照れます!自身の顔の良さを自覚してもらいたいです...!
「ぇ...えと、ありがとうございます...でも、私はまだ好きとかはよく分からなくて...」
「では好きになって貰えるよう努力しますね」
手の甲にキスされた。
「前世と比べて積極的になっていませんか...!」
「そうですか?あなたへの想いが爆発したのかもしれませんね」
会いたかった伊織に会えて嬉しいけれど積極的すぎて慣れないです...!
「渚...いや、この世界ではナディアですね、これからはナディアと呼んでも?私のこともぜひヘリオスと呼んで貰いたい」
「それはだめです!ファーストネームで呼び合うのは家族と婚約者のみです!」
「では私の婚約者になって欲しい」
「ですが...」
殿下に恋した私が主人公と殿下の仲に嫉妬して、主人公をいびり出したら追放されてしまいます...!私は平穏な日々を送りたい!
「何か悩みがあるなら一緒に解決します、それでもだめですか...?」
顔が良い...!そんな風に言われては断りずらいでしょう!
「...分かりました、婚約者になります」
「ありがとう!ナディア、これからよろしくお願いしますね」
早速名前呼びですか...!
「よろしくお願い致します...ヘリオス様」
「!!」
すごく嬉しそうなお顔をしていらっしゃる。
「では父上と公爵の元に戻るとしましょう」
「はい」
するとヘリオス様が突然「あ、そうそう」と言い出した。
「私が庭園に着く前、なんの話をしていたのですか?ほら、返事をするとかいっていたでしょう」
「それは婚約のお話ですわ、ヘリオス様と私の」
「あぁ、そうなのですね」
今となってはもう関係のない話です。なぜなら婚約は承諾してしまったし...。この選択はあっていたのでしょうか。
これからどうなるのやら...ですが伊織に会えて嬉しくもあります。本当に会えて良かった。